【達人のプラモ術】
ゲッコーモデル
「1/35 米海軍 パトロール エアクッション ビークル(PACV)後期型」
01/08
おまたせしました! 2025年「達人のプラモ術」第2弾は、ベトナム戦争時に試験的に実戦投入された米海軍PACV(Patrol Air Cushion Vehicle)を製作します。パトロールエアクッションビークルって、あまり耳に馴染みのない言葉ですが、簡単に言えば軍用の水陸両用ホバークラフトのこと。昨年末に1/35スケールでは初となるプラモデルがゲッコーモデルから発売されました。(全8回の1回目)
ゲッコーモデル
「1/35 米海軍 パトロール エアクッション ビークル(PACV)後期型」
価格:22110円
販売元:ビーバーコーポレーション
発売日: 2024年11月
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■ベトナム戦争の異端児PACV
前回のゴジラを製作した後、インフルエンザでぶっ倒れてプラモ製作どころではなかったのですが、熱が下がってもベッドから動けないのでDVDで久々にコッポラの『地獄の黙示録』なんぞを観ていたわけです。キルゴア中佐率いる9機の武装UH-1ヘリ部隊がワーグナーの「ワルキューレの騎行」を流しながら飛行するシーンは圧巻だなぁとか、ウィラード大尉が乗り込んでいた河川哨戒艇(PBR)はタミヤがプラモ化していたなぁ、作りたいなぁ~、などと漫然と考えておりました。でもって、PBRもいいんだけれど、年末ゲッコーモデルからベトナムで使用された海軍PACVを1/35で初キットされていたことを思い出し、軍用ホバークラフトという魅力的なアイテムということもあり、今回は新進メーカー新製品として注目の「1/35 米海軍パトロールエアクッションビークル(PACV)」を製作することにしました。
■PACVとは
PACV(パトロールエアクッションビークル)は、ベトナム戦争において主な戦場となった広大なメコン川デルタ地域等で、試験的に少数が実戦投入されたの哨戒艇です。
スクリューを持たないエアクッションビーグル(ホバークラフト)はメコンデルタなどの浅い湿地帯や沼地、水田に特に有効であり、通常の船舶よりはるかに高速で移動できるため(艦艇では航行や走行が困難な浅瀬や湿地でも、エアスカートの高さ程度までの凹凸なら速度を落とさずに移動可能)、強力な火力により哨戒だけでなく他の船の護衛や偵察、重火器の輸送、歩兵の直接火力支援などに使用されました。また機雷、魚雷、地雷が反応しにくいというメリットもありました。
しかし、同様の地域で活躍した河川哨戒艇(PBR)とは違い、浮上と推進に大量の空気を圧縮・加速し続けるため、多くのエネルギーを消費して燃費が悪く、騒音と振動も大きいため敵に存在を察知されやすいという弱点がありました。
さらにエアクッションのゴム部分に被弾するとすぐに行動不能になるなど、艇体が脆弱であることが指摘され、さらには陸上運用も可能であることが米陸軍との確執を生んで評価は芳しくなく(陸軍が試験運用したタイプも存在)、最後まで本格的に運用されることはありませんでした。
■キットに関して
キットの箱を開けた際の第一印象は「デカい! パーツ多い!」でした。1/35スケールで完成時のサイズが約33.7cm。同時代の戦車等と比べてもかなりデカイ、というかボリュームがあるキットです。
特筆すべき点としては、PACVは現存する資料写真が少ないのですが、キャビン内の簡易なシート等、細部までディテールが精密再現されている点です。艇体のリベット等もシャープに再現されており、塗装映えしてくれそうです。
またシートベルトや手すりなどには専用エッチングパーツが付属。負傷兵を乗せる担架は3Dプリンター性のパーツが付属しています。
デカールはエアクッションに描かれた大きなシャークティース(シャークティースというよりはアンコウの口みたいに見えるんだけど)が3タイプ用意されています。
惜しむらくは、キャビンクルーをはじめガンナーなど搭乗員のフィギュアが付属していないこと。この手のモデルではやっぱりフィギュアが欲しくなりますね。
■ベトナム戦争で活躍したPBRボート「ピバー」
ベトナム戦争で活躍したのが、メコン川に沿って移動するPBRタイプの河川哨戒艇です。浅い河川で使用するためスクリューではなくウォータージェットを搭載しており「ブラウンウォーター・ネイビー(茶色い水の海軍)」と呼ばれ、哨戒任務の他にも偵察、軽攻撃などさまざまな任務に使用されました。また「メコンの騎兵」とも呼ばれ活躍しました。映画『地獄の黙示録』にも登場しています。
タミヤ製の「1/35 アメリカ海軍 PBR31 Mk.II ピバー」は、12.7mm機銃や7.62mm機銃、40mmグレネードランチャーなどシャープな兵装類に加えて、ジェリカンやラジカセなど豊富なアクセサリー、戦闘中の兵士の人形4体が付属しています。PACVと並べたいですね。
タミヤ
「1/35 アメリカ海軍 PBR31 Mk.II ピバー」
価格:4510円
■インテリアから製作開始
さて、さっそく製作を開始しましょう。インストの指示に沿ってキャビン内部のインテリアから組み上げていきます。細部の塗装に関しては細かく指示されているので助かります。
ただ使用指定されている塗料が、個人的に馴染みのないミッションモデルスカラー(※注)なのが辛いところ。なので塗装に関しては色名からMr.カラーの同色に置き換えることにしました。
パーツの精度は高く組み立てはサクサクと進められるのですが、それにしてもパーツが細かい。個人的な意見ではありますが、最近の海外製AFVキットは、ディテールの再現がすさまじく、結果としてパーツの分割が偏執的なまでに細かい気がします。再現度が高いのはありがたいけれど、老眼が日々進行しているオッサンモデラーにはなかなか厳しいものがあります。製作に際しては、精度の高いピンセットと通常接着剤、流し込みタイプの接着剤、さらに瞬間接着剤を用意しておくことをオススメします。
(※注)ミッションモデルズペイント(MMP)
アメリカ製の水性アクリル系の塗料。ミリタリー系のカラーが充実している。1色900円前後と高価だが、定着力が強く艶消しの質感などモデラーの評価は高い。エアブラシでも使用できる。国内ではMSモデルスやボークスなどで取り扱っている
■組んでから塗装をする
先にも書きましたが、キャビン内部のインテリアの再現度は高く、弾薬箱などは6パーツ構成となっているなど、かなり細かくなっています。塗装も細かく指示はされていますが、キャビン内部は基本“ネイビーグレー”となっているので、工程1~2まではパーツを組み上げてから同色で塗装。細部は筆を使い塗り分けていくことで、効率よく製作を進めていくことができます。
キャビン内部は資料写真などが存在しておらず、細部の塗装は同じ任務で使われていたPBR(河川哨戒艇)を参考にするとよいでしょう。
■次回はキャビン内部の製作と塗装
今回はここまで。パーツが細かく製作には時間もかかりますが、焦りは禁物。ここはキットのディテールを上手く引き出しつつマイペースで進めていきましょう。うーん組んでいくとわかるのですが、やっぱりフィギュアが欲しくなりますね。というワケで現在、PACVに合うフィギュアも物色中であります。
それではまた次回をお楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/660542/
- Source:&GP
- Author:&GP