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手を動かせばもっと音楽が好きになる! クラフトスピーカーはインテリアの男前も上げてくれる美音のディーバなのだ。

アウトドアやキャンプ趣味の定着にともなって関心を集めるのが、手を動かすモノ作りだ。火を熾しての料理だってそうだし、テントを立てる、タープを張ることだって一種のDIY。むろんナイフを操ってのウッドカービングやルアー作り、レザークラフトなども根強い手作り趣味と言える。

オーディオもまた、手作り趣味のひとつだ。戦後娯楽の少ない時代に行われた手作りラジオに始まり、現在までスピーカー、真空管アンプなどを中心にキット製品が販売されている。

そんなクラフトオーディオ世界のスピーカーにおける盟主ともいえる存在が「フォステクス」だ。

▲フォステクスが40有余年の時を経て復活させた数量限定フルレンジユニット「FE203Σ-RE」(2万5300円/1本)。振動板直径20㎝、質量約4㎏、マグネット2枚重ねのタフなヤツ。そのサウンドの特長は、ペーパーコーンらしいスパーンと張りのあるキャラクターと明瞭な中高域、ファットな低域にある

フォステクス広報担当の仲前学さんは言う。

「フォステクスは世界のあらゆるスピーカーを手掛けるフォスター電機のコンシューマブランドで、設立以来51年にわたりスピーカーユニットを販売しています。FE203Σ-REは数量限定品として直近リリースした直径20㎝のフルレンジユニットで、今をさかのぼること46年前の1979年に発売された「FE-203Σ」を現代技術でリファインした、バックロードホーンスピーカー(以下BHと略)用としても相性に優れるユニットなのです」。

ちなみにフルレンジとは、1本のスピーカーで再生全帯域を受け持つユニットのこと。またBHスピーカーとは内部に音道を長く設けることで、豊かな低域再生を狙うスピーカーデザインの"流派”である。

▲ユニットの背面から放出される音波が長い音道を通ることで低音の増強をはかるのがバックロードホーンスピーカーの特長。開口部に向かって拡大するラッパ形状であるため音量も稼げる

■DIYで組み立てたスピーカーの音は果たして…

エンクロージャー(=箱、スピーカーボックス)は大阪の電子部品ショップ「共立電子産業」のクラフトオーディオブランド「ワンダーピュア」が手掛ける。発売のきっかけを、同社広報の四元徹さんに尋ねると、

「試聴イベントで耳にしたFE203Σ-REが大変いい音で鳴っており興味をそそられました。しかし『エンクロージャーの発売予定はない』とのことで私共で製品化したのが「WP-ENFE20」です」と教えてくれた。

▲ワンダーピュアのFE203Σ-RE専用エンクロージャーキット「WP-ENFE20」(3万3000円/1本)。パイン集成材の木目はテイスティで、完成後もインテリアによくなじむ

一般的な四角四面のエンクロージャーと違い、BHスピーカーの内部構造はフクザツカイキである。だからこそキットの出番! というわけで製作を開始した。

組み立ては説明書をよく読めば問題ないだろう。木はテーブルやインテリアにも多用されるパイン集成材で、木肌も木目も味わいがある。完成後は塗装せず木のエージングを楽しむもよし、最近DIYで人気のヴィンテージワックスで仕上げるもまたよし。いずれにしろ木目を活かす方向性がいい。

▲北欧家具などでもお馴染みのパイン集成材。木片を圧着した独特なルックスで人気だ。むろん、突板仕上げのように表面の木目がはがれる心配もない

無垢材に比べ集成材はソリが少ないメリットを持つが、とはいえやはり天然素材。多少のソリは出るので板材を締め付ける播金(はたがね/300㎜以上のものを4本以上)を用い、微調整しながら固定、接着して組み上げるようにしたい。

高さ900㎜、幅250㎜、奥行450㎜とけっこうな大きさであるため、組むにもそれなりのスペースが必要だ。製作期間は、接着剤の乾燥待ちなど含め1週間程度みておけばいいだろう。

▲使用する工具類。木工用ボンド。指金(さしがね)。播金(はたがね)。はんだこてが主なところ。播金は「クイックバークランプ」といった名称でネット通販で売っている

組み上がった箱にユニットをネジ留めする。いそいそとアンプに接続し、PCオーディオでPLAYボタンを押す…。

▲組みあがったスピーカーとアンプをつなぐ緊張の一瞬

「すごい音がしている!」

これはちょっと今までのオーディオ体験とは違うスケールの音楽が鳴っている。ジャズである。クラシックである。弾き語りである。大好きなYMOの高橋幸宏さんのアンプラグドアルバム『ハート・オブ・ハート』で筆者はノックアウト! むろん太い低音の吹き出しがあることから、ディスコやファンクなどブリブリに低音を楽しむジャンルもCOME ON!

そのサイズもあってか、先の共立電子産業の四元さんは、

「ホームオーディオはもちろん、カフェやラウンジでのプロ用途にも合うと思います」と教えてくれた。

昨今のリノベーションでは、インテリア性も兼ね備えたJBLの古い大型スピーカーを導入提案する例もあるという。サウンドも含めたスタイリッシュな空間作りが求められているのだ。

モノに対する眼力鋭い「&GP」読者なら、手を動かすことに感心を寄せる人は多いはず。ユニット2本、エンクロージャー2本で総額11万6600円と値は張るが、スピーカーは普通に使えばかるく10年はもつ。もつ、どころか鳴らし込めばユニットのしなやかさ、木の乾燥も進みより良くなるのが一般的。つまり家具や、一生モノの革鞄、アコースティック楽器を手に入れるのと同様のモノ選びなのだ。加えて、置いた空間の男前度を上げてくれるのも魅力といえるだろう。

マイベストヒットはなに? ご自慢のワイヤレスイヤフォンもいいけれど、家ではスピーカーの音楽を身体で感じてはどうだろう。そしてそれが自ら組んだスピーカーなら、愛着はいや増すばかりだ。

さあ機は熟した。君自身の手で、最高のディーバを組み上げてみないか!

>> フォステクス
>> 共立エレショップ

<取材・文/前田賢紀>

前田賢紀/モノ情報誌『モノ・マガジン』元編集長の経験を活かし、知られざる傑作品を紹介すべく、フリー編集者として活動。好きな乗り物はオートバイ。好きなバンドはYMO。好きな飲み物はビール

 

 

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