サイトアイコン IT NEWS

静かで環境を選ばない! 創業100周年を迎えたトランギアの代表作はやっぱり「ストームクッカー」でしょ

【アウトドア銘品図鑑】

スウェーデン北部の小さな村、トロングスヴィーケンを拠点とするトランギアは今年で創業100周年。

これを記念し、100周年記念モデルが登場し、話題を呼んでいます。

▲「ストームクッカーL・ウルトラライト 100周年モデル パワーピンク」(2万3100円)

近年のメスティンブームで、トランギア=メスティンの会社…なんてイメージもありますが、トランギアの名が広まったのは創業者の発明から生まれたアウトドアストーブ「ストームクッカー」が開発されてから。

「ストームクッカー」の原型が誕生したのは1951年。

当時のスウェーデンにはパラフィンを気化させる「PRIMUS」という世界の探検家を支えるストーブがあったわけです。そして「PRIMUS」を有するプリムス社は世界初のLPガスコンロ開発に着手し、1952年に発表していますが、トランギアはあえて液体燃料で勝負。

LPガスに比べて目新しさのない液体燃料ですが、トランギアはストーブと鍋、風防を組み合わせることで、燃焼効率が高く、過酷な冬のスウェーデンの森でも簡単でトラブルなく使えるシステムだと発表。その機能性と他にはないデザインがウケ、スウェーデンほか世界中で愛されるブランドに急成長したのです。

創業100周年を記念した限定モデルのラインナップでは「ストームクッカー」に3つのカラーを用意するなど圧倒的な存在感。そんなトランギアを代表する「ストームクッカー」の魅力を改めてご紹介!

 

■燃料は入手しやすいアルコール

今回取り寄せたサンプルは、シリーズ中もっとも軽い「ストームクッカーS・ウルトラライト」(1万7050円)。ソロ〜デュオにちょうどいいサイズです。

▲収納サイズφ18×H10cm、重量740g

風防とフライパンの中にすべてのパーツが入っていて、スッキリしたシルエット。ベルトで留めるのが面倒と言えば面倒ですが、同社ビリーコッヘルやプレートなどをまとめて自分だけの調理セットを作れるスマートなシステムなんです。


フライパンを外すとこの通り。まだまだ余裕があって、中に0.6Lのケトルをセットできるんだとか。さすがフィーカ(仲間や家族と甘いモノを食べながらコーヒーを楽しむ休息時間)の国で生まれた道具。


φ18cmのフライパン、容量1Lのソースパン2個、ハンドル、そしてアルコールストーブと上下に2分割する風防。これだけそろって740gなんですから、あっぱれです。

▲アルミ合金は軽くて熱伝導率が高くアウトドア用調理器具にぴったりの素材

「ストームクッカーS・ウルトラライト」に採用しているアルミニウムは、純アルミにマグネシウムを添加したA5005で、軽さはそのまま、最大50%の強度アップ。使っているうちに表面に小さな傷はつきますが、破損しづらい絶妙なバランスです。

同じ素材に陽極処理加工を施し耐食性を高めた“ハードアノダイズド”や、こびりつきにくい“ノンスティック”、内側にステンレスを圧着した“デュオーサル”という素材違いの兄弟もラインナップしています。ちなみに、シリーズ中一番重いデュオーサル(外側アルミ、内側ステンレス)でもSは880g。いずれも苦にならない重さなので、好みで選んでOK。

▲燃料用アルコールだけでなく、消毒用アルコール(無水エタノール)も使える

アルコールストーブに注ぐのは燃料用アルコールですが、ドラッグストアでも入手できる純度の高い消毒用アルコールも使えるんです(ちなみに燃料用アルコールは劇薬なので消毒には使わないで)。

コロナ禍を経て、家庭でも企業や公共施設でも消毒用アルコールを常備するようになった今、これって防災アイテムとしてもかなり優秀だと思いませんか?

 

■アルコールストーブの熱を最大限に活かす下段風防の穴!

上下分割式風防の間に、燃料を入れたアルコールストーブをセットしたら準備完了。
あとはマッチなどで着火すればいいんですが、ちょっと待って。

着火前に風向きをチェック!

▲風上に空気孔を向ける

ガスストーブより火力が弱いアルコールストーブでも大容量の湯を沸かせるのは、下段風防の空気孔から入った空気があたためられ、上昇気流でクッカー全体に熱風が行き渡るようになっているから。

空気孔を風下に向けたままだと熱風が下段風防内に溜まって、最悪、本体が溶けたり天板が焼けたりするんです。調理時は目を離さず、風向きが変わったらくるっと回転。

▲燃料満タンで約25分燃焼。横にスライドするフタで火力調整や消火ができる

アルコールストーブは、気圧の低い高所でも雪が降り積もった寒い場所でも、マッチ1本で簡単に着火できるのが最大の特徴です。

液体燃料とはいっても、石油系を使うストーブのように凍えながらポンピングする必要はありません。それに燃焼音がしないので、早朝にコーヒーを淹れるときも気兼ねなく湯沸かしできます。

ただし、イマドキのガスやガソリンのバーナーに慣れていると、細かな火力調節が苦手で消火直後の燃料継ぎ足しできないことに扱いづらさを感じるかも。

「燃焼時間25分。沸騰まで12〜13分だとするとパスタ+コーヒーはいける。炊飯だったらギリギリOKで自動炊飯が可能かも。炒め物なら…」とワクワクしながら計算し、経験を積む。そんな余裕があるのかい?と問われる道具とも言えます。

 

■細部のデザインがたまらない

「ストームクッカー」は実用性とミニマリズムを重視したデザインで、北欧らしさがプンプン漂います。


シンプルなシルエットで安定感抜群。

機械的なスイッチや劣化が気になる樹脂は不採用。組み立ても力業なんて無粋なことはなく、切り欠きをあわせて回転させるだけ。よほどのことをしなければ壊れません。風向きにあわせて置き方を変えるなんて“アナログな味わい”とも言えるのでは。


ふたつのソースパンのうち、ひとつにはメモリがついています。

円の上端まで水を注げばそれぞれ0.3L、0.5Lになるという意味。あえて線ではないのがトランギアらしさ。


付属のハンドルは1971年から変わらないデザインです。ソースパンの側面にピッタリフィットして両側からがしっとつかむのでグラつきません。


肉抜き部分が見事にシンクロしています。こういう細かな仕事ぶりもアウトドア好きの大好物!


初登場から基本構造を変えることなく愛され続けている「ストームクッカー」。ブランドコンセプトである「Simple and Safe」そのもののストーブシステムです。

>> トランギア

>> [連載]アウトドア銘品図鑑

<取材・文/大森弘恵 撮影協力/イワタニプリムス>

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。X

 

 

 

 

【関連記事】

◆美味すぎて泣ける!トランギア「ストームクッカー」で作ったサッポロ一番で身も心もポカポカに
◆トランギア「メスティン」は日本のキャンパーによってクッカーになった
◆トランギア純正「メスティン」ケースが登場!調味料入れとしてもいいかも!

モバイルバージョンを終了