日産自動車が誇る「e-4ORCE」テクノロジーで開発された「セレナ4WD」は、ミニバンを超越したミニバンを目指したといいます。2024年12月に発売され、25年2月に最初のメディア向けお披露目が北海道で開かれました。
■モーターを積極的に使ったヨンク
実際に驚くような、いい走りを体験させてくれたセレナ4WDです。e-4ORCE(イーフォース)は、日産独自のハイブリッド4WD方式。シリーズハイブリッドといってエンジンを駆動用バッテリーの充電にだけ使い、モーターで車輪を駆動するのが同社の「e-POWER」。さらに後輪もモーターで駆動して、4つの車輪を制御するのがe-4ORCEです。
ちょっと難しい説明になりましたが、要するに、モーターを積極的に使ったヨンクです。これまでにも、同様にモーターで後輪を駆動するハイブリッド車は出ていますが、日産の開発陣の自慢は、後輪用のモーターをパワフルにして、雪道の走破性をうんと上げたところにあります。
後輪用のモーターのトルクは195Nm。「アシスト用にモーターを使うハイブリッド4WDでは、雪の積もった坂道や深雪に遭遇すると、駆動力をなめらかにかけられず前輪が空転してから、遅れて後輪がトルクを出すことになりがちですが、e-4ORCEははじめからなめらかに力強く発進することをめざしました」とは日産の説明です。
実際、雪の積もった苫小牧市の路上を走ってみたところ、よっぽどの深雪でなければ、走行が不安定になる場面は皆無でした。もちろんウインタータイヤ(BSのブリザック)を履いているのですが、クルマのトルクコントロール能力の高さは印象的です。
■"クルマ酔いしにくい"クルマ!?
e-4ORCEには、実はもうひとつ、雪のないオンロードでも、ドライバーと乗員にメリットがあります。乗員が酔いにくいことを目指したのも、開発の背景にあるんだそうです。
「クルマ酔いの原因のひとつに、頭部が前後に揺れる(そして視点が定まらない)ことがあると考え、アクセルペダルのオンオフがあっても、車体が上下にぴょこぴょこ動かないよう心がけました」
足まわりを担当した日産技術者の説明です。車体が不用意に上下動しないよう、タイヤの駆動力の調整と、各輪のブレーキを使います。例えばブレーキをちょっと強くかけすぎて、車体が前につんのめりぎみになりそうだったら、すかさず後輪にも適切な量のブレーキをかけて後ろから引っ張るようにして、車体のノーズだけが前に下がるのを抑えます。
試しに、走行中にアクセルペダルを乱暴に踏んだり離したりしてみました。モーターによる強い加速Gは感じても、日産の開発者の狙いどおり、ノーズが上を向いたり下を向いたり、なんてことはありません。
クルマ酔いをしにくいのは、ファミリー向けとしてかなり心強いです。一方、「ハンドリング性能も自慢です」と開発者。e-4ORCE搭載のセレナ4WDを発売する前に、日産自動車のテストコースに同社の重役陣を集めて内輪の試乗会をやったとき、役員たちに「ドリフト走行を楽しんでもらいました」とのことです。
「4輪の制御技術によって、ドリフト走行もけっこう簡単にできてしまうぐらいで、ハンドリング性能はミニバンを超越してます」
いろいろ、経営の先行きが取り沙汰されている日産自動車ですが、こんなすごいクルマを作る技術力は健在です。ミニバン的なクルマを探しているなら、セレナe-4ORCEは有力候補だと思います。
【Specifications】
日産 セレナ e-4ORCEハイウェイスターV
全長×全幅×全高:4765×1715×1885mm
ホイールベース:2870mm
エンジン:1433cc 3気筒エンジン ハイブリッド
駆動:全輪駆動
最高出力:120kW(フロント)+60kW (リア)
最大トルク:315Nm(フロント)+195Nm (リア)
乗車定員:7名
燃費:16.1km@l
価格:408万8700円
>> 日産自動車
<文/小川フミオ、写真/日産自動車>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
【関連記事】
■総排気量2498ccの水平対向エンジンを搭載! 燃費・走りが向上したスバル「クロストレック・プレミアムS:HEV EX」登場
■雪国に出かけるなら持っておきたい雪・凍結対策のカーグッズ5選
■凍結湖で実力を体験! 開発者が胸を張る日産「アリア B9 e-4ORCE」の走行安定性をチェック
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/660613/
- Source:&GP
- Author:&GP