50cc以下の原付一種は、今年11月に厳しくなる排出ガス規制によって、姿を消すことが濃厚だと言われています。代わって125ccクラスの原付二種の車両を最高出力4kW以下に落とすことによって、原付免許で乗れるようにする「新基準原付」の導入がアナウンスされていますが、実際にどんなモデルが登場するのかは見えてきていません。
そんな中で注目されているのが、原付一種の電動バイクです。ホンダはスクータータイプの「EM1 e:」をリリース。着脱可能な「モバイルパワーパック e:」というバッテリーを採用し、交換できるステーションが増えれば便利に使えそうですが、“もう少し遊べるモデルもほしい”と感じているバイクファンもいるのではないでしょうか。
そこで気になるのがダートフリークの「GE-N3」というマシン。今月発売予定のモデルですが、発売直前に試乗することができました。
■グッドデザイン賞を受賞したルックス
近年は原付二種の人気が高まっていますが、「GE-N3」は前述のように原付一種。これは、より多くの人に乗ってもらいたいというのがその理由です。原付一種だと、クルマの普通免許でも運転することができますから、小型二輪免許以上が必要な原付二種に比べて運転可能な免許の保持者が圧倒的に多くなります。
車体デザインも親しみやすいルックスになっています。直線を基調としたデザインですが、角が取れていて尖った部分がなく、柔和な印象。カセットテープを思わせるようなアナログ感が漂っています。
発売前ですが、このデザインは2024年のグッドデザイン賞も獲得しているとか。エンジン付きのバイクに似たものはないですが、見ただけでバイクっぽさも感じられる絶妙の仕上がりです。フレームにアルミの無垢パイプを使うなど“ツール”感があるのもいいですね。
搭載されるモーターの定格出力は原付一種の規定である600W。ただし、最高出力は3000Wあるので結構パワフルです。最高速度は55km/hとされています。原付一種の制限速度は30km/hですが、ある程度は余裕がないと交通の流れの中で怖い思いをすることがあるので安心です。
バッテリー容量は72V/24Ah(1728Wh)。原付一種でこの容量は結構ありますね。満充電での走行可能距離は約60kmとされています。バッテリーは取り外しての充電もできますが、工具が必要なので車体に付けたまま充電するほうがスムーズそうです。
ホイールサイズは前17インチ、後14インチで、ちょっとオフロード向けのタイヤが装着されています。開発したダートフリークは、その名の通りオフロードバイク向けのパーツを手掛けてきたブランドなので、オフロードの走行性能もきちんと確保されているようです。
サスペンションや前後のディスクブレーキは、自転車のマウンテンバイク(MTB)用のものが採用されています。車重が58kgしかないので、これで十分という判断なのでしょう。最近のMTB用は性能が高く、イニシャルや減衰力の調整も可能なので不安はなさそうです。
テスト車両では「ミニバイぱにっく」というミニバイクで走るハードエンデューロのレースにも参戦し、無事に走破するだけの性能は確認しているとか。ジャンプするモトクロスのような走り方には向きませんが、走破性という意味では期待ができます。
■オフロードでも遊べる走行性能
実際に公道で走らせてみましたが、電動の原付一種というクラスの中で見ると、かなり“走り”ます。モーターは走り出しのトルクが強いのが特徴ですが、「GE-N3」に搭載されているモーターは特に高トルク型で、出だしの加速感がかなりあります。後輪軸で最大230Nmを発生しているというからかなりのものですね。
走行モードは2種類から選べて、穏やかな「1」は出だしの押し出し感がマイルドになりますが、それでも交通の流れについていけます。パワフルな「2」になると、加速感が強くなりますが、最高速は2つのモードで変わらないとのこと。こういうモードって、どちらかが省電力に振ってあって、普段使いはできないものもありますが、どちらもきちんと使えるモードになっている印象でした。
せっかくなので、河川敷のオフロードコースも走ってみました。
このマシン、テールランプユニットを取り外すと、さらにパワフルな「3」というコース専用モードが使えるようになるというギミックもあります。ただ、オフロードを走ってみた感じだと、筆者の腕では「2」でも十分なくらいでした。
調子に乗って、アクセルターンやフロントを上げてのフローティングターンのようなことも試してみました。エンジン付きのバイクだと、そこそこ技術が必要な技ではありますが、軽量で手の内に収まっているようなコンパクトさなので、思い切って挑戦できます。軽さもあってフロントが上がりやすく、バランスを崩してもコントロールしやすいので、チャレンジするハードルが低いのもいいですね。
楽しくなって遊んでいたら、借り物の試乗車を転がしてしまいました…。ただ、転倒してもステップとハンドル以外が接地しにくい作りになっているようで、外装に傷は付きませんでした。セーフ…、ではなくて反省しています…。でも、オフロードは転倒しやすいので、そのあたりも視野に入れて作られていることが感じられました。
親しみやすいルックスで、街中もキビキビ走れて、オフロードでも遊べる。「GE-N3」はベテランライダーが乗っても楽しめますし、これから新しいライダーを広げてくれそうな可能性も感じます。ちなみに車名は「ゲンさん」と呼んでほしいとか。発売は3月の予定で、予価は39万6000円となっています。
<取材・文/増谷茂樹>
【関連記事】
◆2025年期待のバイク、キーワードは「オフロード車」「モタード」「新基準原付」!
◆カワサキ「シェルパ」や“あのマシン”も復活!オフロードバイクの復権が始まる!?
◆公道最速のモタードマシン!? GASGAS「SM700」に乗ってみた
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/663441/
- Source:&GP
- Author:&GP