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富士フイルム渾身の最新防振双眼鏡「テクノスタビ TS-L」登場で注目される“機能するデザイン”の秘密

富士フイルムの光学製品と言えばデジタルカメラの「Xシリーズ」、インスタントカメラの「チェキ」が筆頭だが、同じ光学の伝統を継ぐ製品に双眼鏡がある。その歴史は1947年の第一号機発売に端を発し、天体用双眼鏡においては、1987年以降15個もの新彗星発見に寄与している。

昨今、本格双眼鏡の多くが防振機能を持つが、富士フイルムが初の防振双眼鏡「テクノスタビ」を発売したのは今から約25年前に遡る。防振メカを双眼鏡本体に収めることがまだ困難な時代ゆえ、大型にして高価となり、主用途は漁船、山岳・海難警護などにまつわる観測・監視業務だった。つまりはプロユース。

その「テクノスタビ」の現行ラインに加わった2025年の新顔が「 TS-L」である。

▲テクノスタビの現行ラインナップ。12時位置から時計回りに、「TS-X 1440」(オープン価格/税込実勢17万8200円前後)、「TS12×28WP」(同8万8000円前後)、そして倍率の異なる「TS-L」の2機種

「コンサートやスポーツ、アウトドアにも持ち出したくなる小型軽量にしてお値頃な『TS12×28WP』『TS16×28WP』と、最高の防振性能を持つタフモデル「TS-X」の間を埋める存在が「TS-L」になります。『TS-X』より手軽に扱える高性能モデルが欲しいというユーザーの要望を汲み、2023年末に開発がスタートしました」と語るのは「TS-L」商品企画担当の丸山流聖さんだ。

▲「TS-L」の商品企画担当、富士フイルムイメージングソリューション事業部 プロフェッショナルイメージング グループの丸山流聖さん

「TS-X」のブレ補正角6°という高性能は魅力だが、プロ仕様らしいクールな、裏返せば素っ気ないデザインは一般ユーザーに遠く映る。これに比べると「TS-L」は、大人の選択眼に適う「華」をまとっている。ちなみに「TS-L」末尾の「L」にはTS-Xに比べ軽量(Light)で、高倍率(Long Distance)の意味がある。

「デジタルカメラ『Xシリーズ』と共通するジオメトリックなフォルムは様々なユーザーの持ち方に対応できる形状なのです」とは、富士フイルムデザインセンターのチーフデザイナー、齊藤大さん。

従来機種「TS」「TS-X」とのデザイン上の差異に着目していただけに、なるほど、「Xシリーズ」に通じるデザイン作法だと言われ腑に落ちた。

▲富士フイルムデザインセンター プロダクトデザイングループ チーフデザイナーの齊藤大さん

「BtoB市場が多いTS-Xに対して、よりBtoC市場へ拡大するためデジタルカメラの『Xシリーズ』に見られる光学機器として高品位なディテールを採用することで、所有欲といった感性的な魅力づくりにつなげました」(齊藤さん)。

注目すべきは、デザインそれ自身が機能を果たしていることだ。

「カメラに比べると、双眼鏡はデザインでの差別化や個性化をはかるのが難しいと思います。というのも操作部品が少なく、機能面でも"見る”にこだわる単機能製品。さらに本体において光学系の占める割合が大きいため、デザインの自由度が限られるからです」と、齊藤さん。

確かに双眼鏡はシンプルだ。むろん最優先すべきは光学系。この光学系を収めながら人の手に使いやすく、ブランドとしての個性をも求められるのだから、デザイナーには分が悪い、いや、冥利に尽きると言うべきか(笑)

▲底部エラストマーグリップの形状(写真上)と、手をずらしてホールドした状態

双眼鏡は両手で包むように抱え持つ。この「持つ」機能を高めるべく注力したのが、底である。底部のエラストマー部材には親指の指掛かりとなるふたつの隆起と、全方向へグリップするパターンが刻まれる。これは双眼鏡を持つ際に力が入るのが親指であることと、人によって手を前後にずらして持つ実態に則した“機能するデザイン”。またピントダイヤルがやや対物レンズ側に位置するのは、接眼レンズ側に収まる防振メカとのバランスを図ってのことだ。

▲ピントダイヤルを細長い形状とすることで操作性を向上させている

高機能をまるごと封じ込めたようなボリューム満点の「TS-X」とも、小さく愛嬌ある「TS12×28WP」や「TS16×28WP」とも異なる「TS-L」の筒形フォルムすら、バッグやケースへの出し入れ時のひっかかりを抑える機能デザインなのだ。

日常的な記録の多くをスマホが代替するようになってきた。しかし10倍、20倍の倍率を誇り、遠くの風景事物を間近に、大きく、詳細に映し出す双眼鏡は他に代えがたい価値を持つ。高い光学性能と防振メカ、所有欲を満たす美フォルム。そしてそれが形作られた蘊蓄をも備える「テクノスタビTS-L」に惚れないモノこだわり派はいないだろう。

鳥を、旅を、マリンレジャーを何倍も楽しくしてくれる「テクノスタビTS-L」に、いまこそ君もフォーカスしてみないか。

〇商品情報

「テクノスタビTS-L 1640
オープン価格/税込実勢17万2700円前後
倍率16倍/EDレンズ搭載/長さ185.5×幅122×高さ72㎜/質量約856g

「テクノスタビTS-L 2040」
オープン価格/税込実勢18万5900円前後
倍率20倍/EDレンズ搭載/長さ185.5×幅122×高さ72㎜/質量約853g

>> 富士フイルム

<取材・文/前田賢紀>

前田賢紀|モノ情報誌『モノ・マガジン』元編集長の経験を活かし、知られざる傑作品を紹介すべく、フリー編集者として活動。好きな乗り物はオートバイ。好きなバンドはYMO。好きな飲み物はビール

 

 

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