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このひと手間が愛おしい。「PENTAX 17」と過ごす、フィルムカメラのある日常

【趣味カメラの世界 #18】

スマホで手軽に撮影し、すぐにシェアできる時代。便利さを追求する流れのなかで、あえて“手間を楽しむ”フィルムカメラが若い世代に再評価されています。

ということで、今回はPENTAX(ペンタックス)の「PENTAX 17」をフィーチャー。フォトグラファーの田中さんにレビューしていただきます。

監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。

 

*  *  *

今回ご紹介するのは、2024年7月に発売された「PENTAX 17」(8万8000円)。本連載では初となる、フィルムカメラの登場です。

いまやデジタルカメラどころか、スマホでパシャッと撮って、すぐにSNSにアップするのが当たり前の時代。でも、そんな便利さに慣れすぎたからこそ、あえてフィルムで撮る楽しさがじわじわと人気を集めています。

撮影しても、現像するまでどんな仕上がりになるかわからない…。そのドキドキやワクワクを味わうのも、フィルムカメラの醍醐味なのかもしれません。

■見た目からテンションUP!味わい深いレトロデザインにワクワクが止まらない

まさに「これぞフィルムカメラ!」といったレトロなデザインは、見ているだけでニヤニヤしてしまいそうです。

昔、フィルムカメラを使っていた世代には懐かしく、初めて触れる世代には新鮮に映ることでしょう。フィルムならではの質感と相まって、手に取るだけでなんとも言えないワクワク感が込み上げてきます。

ちなみに筆者がフィルムカメラを使うのは、じつに10年以上ぶり。久しぶりすぎて、ちょっと緊張しています。

カメラの上部には、懐かしの旭光学のロゴがしっかりと刻まれています。このロゴを見ただけで、かつてのフィルムカメラ時代を知る人なら思わず「おおっ」と声が出てしまうかもしれません。あまりの懐かしさに、筆者も思わず私物の「PENTAX 67」を引っ張り出してきて、並べてしまいました。

久しぶりに手にした67の重厚感と比べると、「PENTAX 17」のコンパクトさが際立ちますが、どちらも確かな存在感を放っています。

ダイヤル類がたくさん並んでいるのも、クラシックな雰囲気を引き立てています。

特に撮影モードダイヤルのフォントや色味が絶妙で、どこか可愛らしさを感じさせつつ、昔ながらのカメラらしい懐かしさもしっかり漂っています。ついつい指でカチカチと回してしまいたくなる、そんな手触りの良さもまた、フィルムカメラならではの魅力ですね。

裏蓋には、どんなフィルムを入れているのか一目で分かるように、フィルムの箱を切って差し込める仕様になっています。

「そうそう、昔はこうやってたなー」と、思わず懐かしい気持ちに。フィルムカメラを使っていた世代には当たり前の習慣でしたが、初めての人には新鮮に映るかもしれませんね。こういうアナログな工夫も、フィルムカメラの醍醐味のひとつです。

■気軽に持ち歩けて、日常がちょっと楽しくなるカメラ

フィルムと電池を入れても、約315g。ずいぶん軽いです。

コンパクトで見た目もかわいいので、ついつい持ち歩いて、ふとした瞬間をパシャッと撮りたくなります。

搭載されているレンズは、焦点距離25mm(35ミリ判換算で37mm相当)の単焦点レンズ。広すぎず狭すぎず、ちょうどいい画角なので、日常のワンシーンをスナップ感覚で切り取るのにぴったりです。

「PENTAX 17」はハーフサイズカメラなので、35ミリ判(36×24mm)フィルム1コマの約半分、17×24mmのサイズで2コマずつ記録します。

つまり、36枚撮りのフィルムなら72枚も撮れるので、1本で2倍楽しめるというわけです。フィルムの値段も昔に比べてずいぶん上がってきたので、たくさん撮れるハーフサイズカメラはお財布にやさしいですね。

さらに、このカメラは自然に構えると縦位置で撮影できるので、スマホ撮影に慣れている人でもとっつきやすいと思います。

■やっぱりフィルムカメラって良い。偶然も失敗も、全部ひっくるめて楽しいんです

基本的に、露出はカメラ任せでパンフォーカスの「AUTO モード」と、露出は自動でフォーカスをゾーンフォーカスから選べる「P(標準)モード」で撮影しました。

▲ フィルム:フジカラー100

久しぶりのフィルム撮影、1枚目は抜けのいい青空をパシャリ。

現像から上がってきた写真を見て、「フィルムって、こんな感じだったなあ」と懐かしくなると同時に、思っていたよりもシャープな写りにびっくりしました。

▲ フィルム:フジカラー100

▲ フィルム:フジカラー100

▲ フィルム:Kodak ColorPlus

▲ フィルム:Kodak ColorPlus

何を撮っても、なんだか絵になってしまう不思議な魅力があります。

露出はオートでカメラ任せですが、思ったよりもいい感じに撮れていました。筆者の腕前のせいで、ゾーンフォーカスは微妙にピントがずれていることも多かったのですが、それもまた味というか、フィルムならではの雰囲気として楽しめます。

▲ フィルム:フジカラー100

▲ フィルム:フジカラー100

▲ フィルム:フジカラー100

現像をお願いした家電量販店では、ハーフサイズのデータ化を「1枚ずつ」にするか、「2枚一緒のまま」にするかを選べました。

個人的には、ハーフカメラの楽しさって、連続する2枚にストーリーを持たせて撮れることだと思うので、今回は2枚一緒にデータ化してもらいました。

▲ フィルム:フジカラー100

▲ フィルム:フジカラー100

▲ フィルム:フジカラー100

似たような構図で違う場所を撮ってみたり、寄ったり引いたり、同じ場所を2枚続けて撮ったり。どう並ぶのかを想像しながらシャッターを切るのは、撮った写真がすぐに確認できないフィルムならではの難しさがあります。

でも、それこそがデジタルカメラにはない、ちょっとしたワクワク感でもあるんですよね。

▲ フィルム:Kodak ColorPlus

▲ フィルム:Kodak ColorPlus

デジタルでもフィルムライクな調整が流行っていますが、本物のフィルムには、やっぱりデジタルにはない独特の味があります。

デジタルで“フィルムっぽさ”を求めるのも分かるけれど、本物はひと味もふた味も違う。そんなことを考えながら、現像した写真をじっくり眺めてしまいました。

そして、何を撮ってもどこか儚げで、ストーリーが生まれそうな写りにじんわり惹かれ、「PENTAX 17」をつい持ち歩きたくなります。

▲ フィルム:フジカラー100

指が写り込んでしまいました。一眼レフではないので、レンズの前に指がかかっていても、ファインダー越しには気づけません。

それと、レンズキャップをしたままでも、ファインダーを覗いていると気がつかないことも(※)。撮影するときは、うっかりミスに気をつけましょう(笑)。

(※)ファインダー横の警告ランプが点滅して教えてくれます

▲ フィルム:フジカラー100

▲ フィルム:フジカラー100

途中から2枚の組み合わせがズレていて、意図した並びになっていないことに、現像してから気がつきました。

でも、こういう偶然のズレも、フィルムならではの味というか、醍醐味なのかもしれません。デジタルになって失敗は減ったけれど、写真の本質って“日常の記録”。それって、うまくいったものだけじゃなく、ちょっとした失敗も含めての思い出なんじゃないかなと思います。

■「PENTAX 17」と歩む日常。フィルムカメラだからこそ見える景色がある

フィルムが1本約1500円、現像とデータ化で1600円。ハーフカメラでも、1枚あたり約43円かかります。

デジカメなら、1日で1000枚以上撮ることもあるので、そう考えるとフィルムのコスパはお世辞にも良いとは言えません。さらに、現像するまでちゃんと撮れているかも分からないとなると、今の言葉でいう「タイパ」も悪いと感じるかもしれません。

でも、あえて今フィルムで写真を撮る意味って、そういうことを超えた何かがある気がします。世の中の流れがどんどん速くなっていくなかで、そこから少し距離を置いて、ゆっくり写真と向き合うことで見えてくるものがあるのかもしれません。

「PENTAX 17」を使って改めて感じたのは、フィルムだからこそ味わえる 「偶然性」 や 「ストーリー性」 。

撮影後すぐに確認できないからこそ、現像までのワクワク感。
フィルムならではのやさしい発色と、ときに思いがけない仕上がり。
2枚を並べたときに生まれる、ちょっとした物語のような面白さ。

フィルムには、時間をかけて楽しむからこそ感じられる「特別な瞬間」があります。「PENTAX 17」を持ち歩いて、日常の記録をもう少しゆっくり味わってみたくなりました。

>> PENTAX「PENTAX 17」

>> 趣味カメラの世界

<取材・文/田中利幸 モデル/飯窪千遥(@chiharuiikubo) 取材協力/リコーイメージング>

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