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SOTOの新作バーナー「トレックマスター」にタフ缶装着!より高みを目指せそう

【アウトドア銘品図鑑】

SOTOでは昨シーズンよりパワフルなCB缶「CBタフ」(通称“タフ缶”)を発売。惜しみなくチタンを採用した軽量ストーブ「トライトレイル」と組み合わせれば、登山シーンだって安価なCB缶を使えると評判を呼びました。

たしかに「トライトレイル」はこれまでのCB缶使用モデル「レギュレーターストーブ」や「フュージョン」に比べて圧倒的に軽く、登山でも実用的なストーブに仕上がっていますが、SOTOの登山用ストーブで言えば、レギュレーター非搭載の「アミカス」と同等で、低山と高山との中間の山域が使用エリアの推奨となっています。

登山ガイドや熟練ハイカーは「ランニングコストが安くなったけど、あと一息、パワーがほしい」なんて本音もあったりなかったり。

そんな声をくみとったのが2025年の新作「トレックマスター」(1万2870円/5月16日一般販売予定)です。

「トレックマスター」は、見た感じは「フュージョン」なんだけどなんと液出し! それだけでめちゃパワフルになった印象を受けますが、その実力は?

発売間近となった今、一足先にサンプルを入手し、試してきました。

 

■重量はアンダー200gを死守

SOTOによると「トレックマスター」は、分離型OD缶使用モデル「フュージョントレック」と同等クラスの実力なんだそう。

分離型ストーブは一体型に比べてホースの分だけ重くなりますが、それをグッと抑えて軽量化を実現したのが「フュージョントレック」で重量182g。「トレックマスター」も重量195gと200gを切っています。

▲収納時サイズ9×7×H10.5cm。ちなみに「フュージョントレック」は11×6×H10cm

タフ缶のちっちゃいヤツと並べると、ほぼ同じ大きさだとわかります。

自動点火装置は付いていないので、メタルマッチやライターなどを用意する必要ありで、そうなるとセットで200gを少し超えちゃう。

ただ、自動点火装置は便利だけれど、気圧の影響を受けやすくてトラブルが多い部分だけに、あえて非搭載というのは軽量化という面もありますが、SOTOの「山でも使えるんだぜ」というメッセージを感じます。

「レギュレーターストーブ」や「フュージョン」「フュージョントレック」のゴトクは、バーナーの周りをスライドさせて広げますが、「トレックマスター」は内側から外側にクルッと回転させてゴトクを出します。いつものイメージで手にすると戸惑うかも。

▲使用サイズ50×14×H10.5cm

CB缶の装着はいつもと同じ。個体差かもしれませんがちょっと取り付け口が硬い印象です。

これで準備完了!

 

■点火の手順をチェック!

さっそく点火して液出しの実力をチェックしてみましょう。

「トレックマスター」はガスを液体の状態でバーナーへ送り込むため、使用の際は事前に液体を気体に変えるパーツ(ジェネレーター)を加熱しておく必要があります。

なのでまず、CB缶を立てた状態で器具栓ツマミを回し、ライターやマッチで点火。

点火はしますが若干炎が安定しないので、そのまま30秒くらい放置して安定したら缶を横に倒します。

ちなみに燃料缶接続ホルダーにはスタビライザーがあるので液出しにする際の上下を間違うことはありません。

▲木陰に移動して点火し直しても火が見えない…

これで調理できるようになりました。

消火のときは反対の手順で、缶を立てて30秒ほど待ってからツマミを閉じます。閉じた状態でもホースの中のガスが燃え尽きるまで数秒かかりますが慌てずに。

▲バーナーそばのパイプがジェネレーター

ここで、液出しの仕組みをおさらい。

そもそも火力が落ちる三大要素は

①「外気温の低下」
②「連続使用によるドロップダウン」
③「使いかけのガスはプロパンやイソブタンの比率が低くなっている」

通常、ストーブは缶の中に入っている液体状のガスが気化した部分から、気体のガスだけ取り出して燃焼させます。

気体のガスを燃焼させると炎が安定するのですが、低温下(①)では缶の中の圧力が下がってガスが気化しにくくなり火力が落ちちゃうんです。

また、連続使用(②)していると液体ガスが気体に変わる際に必要な気化熱の影響で缶が冷え、火力が落ちる。

そしてそして! ノルマルブタン、イソブタン、そして低温に強いプロパンをブレンドしたオールマイティなタフ缶であっても、先にプロパンが使われちゃうので(③)、コレがなくなると缶の中に残るのはブタンだけ。そうなると寒い環境では火力が低下…。

液出しの場合、ホースを伝ってギリギリまで液体のまま同じ比率の燃料が送られ、燃焼によってバーナー上にあるジェネレーターがあたたまり、そこで気化する。最初こそ不安定になることもありますが、すぐに安定します。それにブタンとプロパンの比率が一定を保つし、気化熱の影響を受けずに缶からガスを送り込むことができるのでドロップダウンを防ぐんですね。

「トレックマスター」の場合、最初に缶を立てて気体のガスを燃やし、ジェネレーターがあたたまったら横にするので、生ガスによる不安定な赤い炎が立つことはまずありません。

ここまででちょっと気になったのが2点。

最初にライターを右手に持ち、缶を左手に置いて点火したのはいいのですが、右利きだとつい右手で缶を倒そうとして戸惑ってしまします。結果的に写真のようにしたんですが、これだとツマミの操作をしづらい。

使い始める前にどちらに缶を倒すか、確認してから点火作業に入るといいでしょう。

もうひとつは、タフ缶のキャップ。

タフ缶はキャップを底に取り付けられることが特徴で、コレ、キャップ紛失防止に役立つめちゃ便利な機能なのに、点火時に缶を立てると少しだけ斜めになるのはちょっと落ち着かない。転がる・倒れるほどではなく、ちょっと気になるかなぁ、くらいなんだけど、装着したまま立てて安定できれば尚ヨシなんですが。

 

■冷え冷えの缶でもいきなりパワフル

この時期、氷点下の山には行けなかったので、冷凍庫で冷やした缶を使って点火してみました。

▲冷凍庫で1時間冷やした缶

▲発熱量は3.0kW(2600kcal/h。タフ缶使用)

気温は15℃くらいなので、缶を取り付けているうちにあたたまったのかもしれませんが、いきなりパワフル。

バーナーは風に強いと言われるすり鉢状ではなくほぼ平ら。それでも強く息を吹きかける程度では消えることはありませんでした。これは安心。

▲ゴトク径はφ16cm

ゴトクは3本。OD缶直結型とは違い、大きく張り出しているので安定感があります。

分離型はダッチオーブンもいけそうな印象がありますが、登山シーンをイメージした製品ですから、分離型とはいえダッチオーブンや鉄板、溶岩石プレートは非対応。

一方、小さな底の代表=シェラカップも載りますが、こちらはちょっとおっかない。「ナビゲータークックシステム」みたいなφ20cmくらいがベストで、φ15〜25cmの鍋向きといったところでしょう。

*  *  *

最近はキャンプから低山ハイクへと活動範囲を広げる人が増えています。

春〜夏の低山ならキャンプで使っていた「レギュレーターストーブ」でも対応しますが、「トレックマスター」はもうちょっとレベルアップしたいけれど燃料の種類を増やしたくない人にちょうどいいモデル。タフ缶は価格的にも有利です。

また、家族との山歩きの場合、小型バーナーだと3〜4人用クッカーを載せると少々不安。安定感ある分離型ストーブを狙っている人も「トレックマスター」を候補にする価値がありますよ。

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<取材・文/大森弘恵 撮影協力/新富士バーナー>

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。X

 

 

 

 

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