ロールス・ロイスが2025年に発表した「ブラック・バッジ・スペクター」に、3月に試乗しました。標準モデルをよりパワフルにしたうえに、ダーク仕上げで迫力のある外観。びっくりする走りです。
私が驚いたのは、ロールス・ロイス本社が設定したメディア向け試乗会。バルセロナ近郊のサーキットも使われたのです。ロールス・ロイスでサーキット、とは予想もしなかった組み合わせでした。
スペクターは、ロールス・ロイスが2022年に発表したバッテリー駆動の2ドアクーペ。スタイリッシュなデザインに加え、430kWという驚異のパワー。ブラック・バッジ・バージョンは、485kWにまで引き上げられています。
■バッテリー駆動の2ドアクーペ「スペクター」にブラック・バッジ登場
ブラック・バッジとはなんでしょう。2016年にロールス・ロイスが設定した”もうひとつ”のライン。後席だけでなく、運転席にも座りたくなるクルマづくりをすすめるのが最近の同社の方針で、その側面をさらに強調したようなモデルです。
スペクターに先立ち、24年に「カリナン・シリーズⅡ」と「ゴースト・シリーズⅡ」にブラック・バッジが設定されています。ロールス・ロイスに、より若々しいモデルを、というオーナーからの要望に耳をかたむけたため、とロールス・ロイス本社の開発担当者は説明してくれました。
■静止から時速100kmまで4.3秒! スポーツカーなみの加速
ブラック・バッジ・シリーズの大きな特徴は、基本的に「ダーク仕上げ」という外観と、より凝った内装の仕上げ。スペクターでは、さらに進んで、ドライブモードとして「インフィニティ・モード」と「スピリテッド・モード」が設定されています。
インフィニティ・モードはステアリングホイールに設けられたボタンで起動。サスペンションシステムのダンピングが強化され、ステアリングの重量が増加。車体のロールを抑えます。
スピリテッド・モードは、静止状態からの加速のとき、自動で起動。1075Nmの駆動トルクをめいっぱい使う設定で、ブレーキペダルを左足で思いきり踏んでおいて、右足でアクセルペダルを床まで踏み込みます。ブレーキペダルを離すと、スペクターは矢のように飛び出します。静止から時速100kmまで4.3秒と、スポーツカーなみの加速です。
サーキットで乗ってみて驚いたのは、全長5.5mで車重2900kgの車体の大きさ感を感じさせない操縦感覚を持っていることです。電子制御サスペンションは、前後モーターとステアリングと後輪操舵システムと連動し、実に軽快なドライブ感覚を生み出しています。
カーブでも、超をつけたい強力な制動力と、大きなトルクが瞬時に立ち上がるバッテリー駆動だけに、ブラック・バッジ・スペクターはサーキットでの走りが痛快。驚くべき性能ぶりでした。
12気筒エンジンにもこだわるロールス・ロイスですが、電気自動車でもここまでの高性能を実現していることに感心。超がつく高級車の世界も、大きく前進しているとあらためて感心です。
【Specifications】
Rolls-Royce Black Badge Spectre
全長×全幅×全高:5490×2015×1575mm
ホイールベース:3210mm
動力:電気モーター バッテリー駆動
駆動:全輪駆動
車重:2900kg
最高出力:485kW
最大トルク:1075Nm(スピリテッド・モード)
バッテリー容量:102kWh
乗車定員:4名
一充電航続可能距離:493ー530km(WLTP)
価格:5614万円~
<文/小川フミオ、写真/Rolls-Royce Motor Cars>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/670247/
- Source:&GP
- Author:&GP