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名門オーディオテクニカからも遂に登場! いま“ながら聴き”イヤホンが「絶対買い!」な理由とは

「ああ、またやってしまった、申し訳ない!」

みなさんの中にも時々、そんな気持ちを抱く人がいるかも知れない。そう「在宅しているのに宅配のチャイムに気づかず不在票が……」問題である。

その原因は様々ながら、イヤホン、ヘッドホンで音楽を聴きながらリモートワークをしていたため、というのが多いケースかと思う。しかも密閉型ヘッドホンを使ってそれなりの音量で聴いているのであれば、もうドアチャイムに気づけるはずもない。荷物を受け取れず再配達を依頼することはサービスドライバーさんに申し訳がないし、もっともっと大きく言えば、SDGs的な観点からしても、無駄を生んでしまったことを我ながら情けなく思うのだ。

1962年の創業。日本が誇るカートリッジ&マイク、イヤホン&ヘッドホンの名門「オーディオテクニカ」の新製品が、そんな事態の一助になるかも知れない。

▲カラーはブラックとホワイトの2色を展開で使う人を選ばない。でも他の色も欲しいよね、みんなは何色が欲しい!?

■“ながら聴き”をかなえる空気伝導イヤホンとは?

「昨今の“ながら聴き”イヤホンマーケットは参入メーカーの増加、売り場でのコーナー新設なども後押しし、急激な広まりをみせているようです」と語るのは同社商品戦略部グローバルプロダクトマネジメント課の中子正也さん。そして中子さんと部署の先輩にあたる倉橋一成さんが担当して発売にこぎつけたのが、新製品のワイヤレスオープンイヤーイヤホン「ATH-AC5TW」だ。

▲ATH-AC5TW担当の倉橋一成さん(左)と中子正也さん。「ATH-AC5TWをよろしくお願いいたします!」と精一杯の笑顔のご両名

「ATH-AC5TW」のトピックは、これが“ながら聴き”の“空気伝導イヤホン”であること。“ながら聴き”はともかく、ハテ、空気伝導とはどういう仕組みを指すのだろう?

「オーディオテクニカの“ながら聴き”対応製品としては、先行して『ATH-CC500BT2』がリリース済みで、こちらは軟骨伝導方式を採用しております。ざっと言えば、軟骨への振動によって音を伝える方式ですね。対して今回の『ATH-AC5TW』は、耳からわずかに離れて位置する小型スピーカーによって音を伝えます。空気/音波が音を伝える媒体となりますので、空気伝導という単語を使っています」(中子さん)

▲まるで我が子のようにATH-AC5TWを愛でる、オーディオテクニカ 商品戦略部グローバルプロダクトマネジメント課の中子正也さん。 「スポーツ用としてはいませんが、防滴仕様でもあり、軽い装着感でありながらジョギングでも快適に使用できました」。繰り返しますがATH-AC5TWはスポーツ用イヤホンではないので、お間違いなきよう~

なるほど。そうすると音響機器の構造自体が特殊なわけでなく、ながら聴き製品としてリリース済みの軟骨伝導イヤホンと混同されることを防ぐ意図も込めて、敢えて空気伝導と謳っていることになる。

▲軟骨伝導イヤホン「ATH-CC500BT2」(2万1780円)。外部音が大きな環境下でも比較的聞こえやすいためスポーツ用ニーズも高い

では“ながら聴き”ニーズ増加の背景にある当世流事情とは、どのようなものがあるのだろう。

「きっかけは新型ウイルスによるリモートワークの普及、サブスクなどのイエナカコンテンツの充実にあるとみます。家で仕事をする時にイヤホンやヘッドホンを使うことは一般的ですし、オンライン会議用途で新たにヘッドセットを揃えた方も多くおられます。またイエナカ時間ができたことで音楽/映像サブスクユーザーが急増、同様にイヤホン/ヘッドホンニーズも急増しました。

つまり耳をふさいで使う時間が圧倒的に増えたということです。そんな状況がしばらく続いた中で、耳栓型に違和感を感じる方、密閉感・圧迫感を感じるという声も出始めました。まずイヤホンや密閉型ヘッドホンに比べ開放的なオープンエアーヘッドホンに注目が集まり、さらに、元々スポーツ用途に使われることが多かった骨伝導型を含め、様々な「環境音を取り入れるイヤホン=ながら聴きイヤホン」が盛り上がってきた、という流れかと思います」と、倉橋さんが解説してくれた。

Bluetooth技術は確立されている。イヤホン作りにおける知見はもう蓄えすぎるほどある。マイク開発で通話性能にも自信がある。ニーズやトレンドもキャッチ済み。そうして理詰めで企画/製品化された空気伝導ワイヤレスイヤホン「ATH-AC5TW」だが、やはりそこはオーディオ屋。こだわるべきはサウンドだった。

「オープンイヤー型は通常のインイヤー型(耳栓型)に比べ構造上低音の再生面で不利があります。そこでドライバー選びとアルゴリズムを工夫しました」(中子さん)。

▲黒いスリット部がバスレフダクト。本体の重さは約10.5gと軽く、イヤホンだけで最大13時間の連続再生が可能

まずドライバーについては「ATH-AC5TW」本体に無理なく収納できる中で最適なものとして、楕円形状(17㎜×12㎜)のオーバルドライバーを採用。振動板の大型化で低域再生を狙った。 また、DSP処理による低音域の補強アルゴリズムと、小さな音量でも低音の量感を保つダイナミックEQアルゴリズムで低域を補強しつつ、中高域のクリアさを損なわずに全体的にバランス良く聴けるよう調整を施しているという。

▲オーバルドライバー解説図

▲低音補強アルゴリズム「デュアル・ベースエンハンスメント・テクノロジー」解説図

「ただし」と倉橋さんは続ける。

「『ATH-AC5TW』は“ながら聴き”製品であり、音楽や動画、ラジオなど様々なコンテンツをバランスよく聞いていただきたいと考えました。低域をもっと! というならより大きなドライバーを使えばできるのですが、製品コンセプトと相容れない姿かたちになってしまいます。軽くて快適、自然なかけ心地と内外のバランスの良いサウンドこそが、本製品の真骨頂だからです」。

話を聞けば聞くほど“ながら聴き”ニーズのおもしろさ、特異性がわかってくる。要するに「コンテンツを楽しみたいし仕事もしたい、会話もしたいし宅配も受け取りたいぞ!」というよくばりを叶える「必“聴”仕事人」でなければならないのだ。

“ながら聴き”イヤホンは、左右一体型で外れにくい「ネックバンド型」、小さく軽く耳にはさんで使用する「イヤーカフ型」、そして「ATH-AC5TW」の属する「イヤーフック型」と、スポーツシーンに適性の高い「骨伝導型」に大別され、それぞれが賑わいを見せている。各メーカーがデザインとサウンドの個性で覇を競う、いまもっとも聴き比べが楽しいジャンルと言える。

そんな“ながら聴き”イヤフォンの戦国時代に投入されるオーディオテクニカの隠し玉が「ATH-AC5TW」だ。それがいかなる戦いぶりをするか大いに注目したいところだが、ひとつ確かなのは、これがオーディオテクニカにとっての試金石だということ。

▲おむすび形状のメッシュ部分がサウンドホール(音の放出口)。片耳聴きもできるのは“ながら聴き”イヤホンらしい仕様だ

ターゲットユーザーは、先行する骨伝導イヤホン「ATH-CC500BT2」よりやや若い20~30代男女というが、であるなら例えばカラー展開でアソビを見せてもよかったのではとも思う。

インタビュー終了間際「メカはそのままに、ランクルやジムニーのようなタフ系なデザインも欲しいです!」と言うと、「ギア感ですね、なるほど、ふむふむ」と倉橋さんがメモをとる…もしかしたら出るかも知れませんよ、男前ギアな“ながら聴き”イヤホンが!?

▲オーディオテクニカの耳をふさがない“ながら聴き”イヤホン「ATH-AC5TW」(1万4960円)。ブラック、リッチホワイトの2色展開

>> オーディオテクニカ

 

<取材・文/前田賢紀>

前田賢紀|モノ情報誌『モノ・マガジン』元編集長の経験を活かし、知られざる傑作品を紹介すべく、フリー編集者として活動。好きな乗り物はオートバイ。好きなバンドはYMO。好きな飲み物はビール

 

 

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