レクサスの電動SUV「RZ」が大きな改良を受けて発表されたのが、2025年3月。7月にポルトガルで乗ることができました。出力が上がるとともに、「ステアバイワイヤシステム」や「インタラクティブマニュアルドライブ」などの新技術搭載が注目点です。
■新設定の全輪駆動「RZ 550e Fスポーツ」
新しくなったRZ(アールズィー)シリーズの第一の話題は、パワフルなAWD(全輪駆動)の「RZ 550e Fスポーツ」の新設定。速いです。ポルトガルの高速道路では、その気になれば、周囲の車両をごぼう抜きです。
モーター、インバーター、トランスアクスルを一体化した電動駆動モジュール「eAxle」を前後輪に使った「ダイレクト4」という車体の制御技術を搭載。RZ 550e Fスポーツでは、後輪用モーターの出力が増え、走りがより力強くなったとうたわれています。
実際のドライブでは、まさにそのとおりだと感じられる印象でした。加速性が高いばかりか、アクセルペダルの微妙なオンとオフに即座に反応してくれる繊細なチューニングなので、ドライバーとの一体感は抜群です。
もうひとつの話題は、このRZ 550e Fスポーツに搭載された新技術。冒頭で触れた「ステアバイワイヤシステム」は、ステアリングホイールと前輪を操舵(ステア)するギアを駆動するモーターが電気信号だけ(バイワイヤ)でつながっています。
「従来のコクピットに大変革をもたらす」とはレクサスの弁。ステアリングホイールは通常の円形でなく、航空機の操縦桿のような形状です。それだけでなく、左右約200度の範囲(だけ)で操作が可能となっています。
ステアリングホイールを握っている手を持ち替えることなく、すべての操作ができます。「ステアリングホイールを大きく回転させる必要がなく快適で楽な運転を体感」できることが、メリットとしてあげられています。
ポルトガルでは市街地の狭い街かどや、小さなカーブが連続するワインディングロードなどを走りました。たしかに、ステアリングホイールをぐるぐると回さず、どんな道でも走れてしまいました。
「慣れが必要なんじゃないか」って思われるかもしれません。面白いのは、実際に運転していると、従来の円形のステアリングホイールと同じ感覚でいられることです。特殊な形状のステアリングホイールを握っていることを忘れしまいます。ナチュラルな設定なのですね。
「この技術は、電気自動車と相性がいいし、将来、後輪操舵システムと組み合わせたら、従来にない操縦感覚のクルマが作れる可能性があります」
ポルトガルで話を聞いたレクサスの開発者は、ステアバイワイヤシステムは一過性の、客寄せパンダ的な技術でなく、大きな可能性を秘めたもの、と言います。
■音まで楽しめる疑似マニュアルシフト「インタラクティブマニュアルドライブ」
RZ 550e Fスポーツにはもうひとつ、「インタラクティブマニュアルドライブ」なる新機構が盛り込まれています。疑似マニュアルシフトです。ステアリングコラムから生えたレバーで、シフトアップとシフトダウン。
ところが、といいましょうか、RZ 550e Fスポーツはバッテリー駆動EVなので、通常の変速機はありません。それでもレバー操作で、同じような感覚が味わえるのです。
センターコンソールの「M」ボタンを押すとシステム起動。マイナスが書かれたレバー操作で「DM1」を選択して走りだします。エンジン音を思わせる快音も聞こえてきます。
加速につれて音も変化。それに耳を傾けていると、時速が約50kmになると、ぐぐーっとパワーの頭打ち感が。そこからはアクセルペダルを踏んでもほとんど加速しません。エンジンのレブリミットに達したという“表現”です。
そこでプラスのレバーでDM2へとシフトアップ。そんなふうに加速を楽しむことができるのです。音は合成音ですが「設定した“レブリミット”の手前でもっとも心地よいサウンドになるようチューニングしています」と、開発担当者は教えてくれました。
減速時にシフトダウンすると、こちらもエンジン車のマニュアルシフトと同様の減速感が得られます。とくにワインディングロードを走るときなど、アップとダウンを繰り返して楽しむことができるのです。
室内は広く、後席もレッグルーム、ヘッドルームともに余裕があります。加えて、なんと、RZ 550e Fスポーツでは荷室のトノーカバーに吸音機能を持たせているとのことで、実際に静かです。
ポルトガルでは、3つのモデルが用意されていました。トップはここで紹介してきたRZ550e Fスポーツ。前後にモーターを搭載した全輪駆動で、システム最高出力300kWを発生します。
コアモデルといえるのがRZ350e。モーター1基のみの前輪駆動で、システム最高出力は165kW。その上に全輪駆動のRZ500eがあり、基本的にはRZ 550e Fスポーツと同じダイレクト4搭載ですが、最高出力は280kWにとどまります。
感心したのは、3つのモデル、どれもよく走ること。操縦性といい安定性といい快適性といい、高いレベルの仕上がりでした。RZ350eも、車重が軽いこともあり、期待以上に軽快です。
日本での発売は2025年秋以降とのこと。斬新なメカニズムを与えられた新しいRZの登場、楽しみにしましょう。
【Specifications】
Lexus RZ550e F Sport
全長×全幅×全高:4805×1895×1635mm
ホイールベース:2850mm
車重:2135kg
動力:電気モーター 前後各1基
駆動:全輪駆動
システム最高出力:300kW
最大トルク:前後ともに268.6Nm@
一充電走行距離:500km
乗車定員:5名
0-100km/h加速:4.4秒
価格:未定
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/688105/
- Source:&GP
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