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気になる企業、モノづくりの裏側に迫ります~ヤンマーホールディングス株式会社【GPジャーナル】

【GPジャーナル】

毎月、独自のイノベーションや情熱、モノづくりへのこだわりも持った“気になる企業”にズームアップ。その現場の裏側を深堀りする新連載が始動!!

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【VOL.01】

<PICK UP>

ヤンマーホールディングス株式会社

設立年:1912年
従業員数:2万1550名以上

本拠地は大阪府。世界最高水準の小型ディーゼルエンジン技術を生かした農業機械、建設機械の開発からエネルギーシステム、マリン、コンポーネント、スポーツ・文化事業の後援など幅広い事業を展開するグループだ。

■多彩な農機を販売・製造! 日本の農業を支える100年企業

記念すべき第1回目を飾るのはヤンマーホールディングス株式会社(以降、ヤンマー)。会社の成り立ちは、前身である「山岡発動機工作所」を創業者・山岡孫吉が1912年に設立したことが発端。当初はガス発動機と吸入式ガス発動機の販売を行っていたが、1933年に世界で初めてディーゼルエンジンの小形・実用化に成功。以降、ヤンマーの根幹にある“ディーゼルエンジン技術”はさまざまな分野で生かされている。その中でももっとも知られるのが農業機械=農機である。

「現在はアジア・東南アジアのマーケットを中心に世界中の現場で当社の農機が活躍しています。ちなみに社名の由来は豊作の象徴であるトンボの王様オニヤンマと創業者の名前から。ロゴマークも同じくトンボの翅と頭文字Yを図象化したものなんです」(坂田さん)

このロゴマークが示すように農業を中心に100年以上にもわたり“小さなモノから大きなモノまで動かす力”で日本の第一次産業を支え続けてきたのがヤンマーなのである。

というわけで今回取材班が訪れたのは東京駅八重洲口の眼の前にそびえる「YANMARTOKYO」。同ビル内にはオフィスのほかレストランやショップ、体験型ギャラリーが併設されており、人が生きていくうえで不可欠な“食”と“エネルギー”について楽しみながら学べる。そんな学びに溢れた場所からヤンマーという世界的企業の今を知るべく、レッツ深掘りスタート!

ヤンマーホールディングス株式会社
コミュニケーション部
坂田直輝さん
ヤンマーによる各種取り組み情報を世界中に発信するPRグループの一員。前職は某家電メーカーにて広報を担当

 

 

■巨大トラクターがお出迎え!

 

▲桜の花が舞うアートワークが美しいビル1階。米作りの歴史と今を学ぶ体験型ギャラリーになっている。米にちなんだレストランや日本酒のアイス、甘酒を販売するショップも

▲東京駅八重洲口前に立つ「YANMARTOKYO」。1950年からこの地に会社を構えるという

▲1933年、世界初の小形横形水冷ディーゼルエンジン「HB形」(5~6PS)が完成。これが今へ続く同社の礎となった

▲ヤンマー初の機発売から2年後に登場した乗用トラクター「YM12A」。横型水冷ディーゼルを搭載していた

■これぞ機能美! ヤンマーの働く農機たち

創業以来のコア事業にして持続可能な社会の実現に向けた技術開発の舞台となっているのが個性的なフォルムもかっこいい農業機械=農機たち。

【これが稲作の三種の神器“トラ・コン・タ”だ!!】

日本人の主食である米作りに欠かせない“三種の神器=トラクター、コンバイン、田植機”をまとめて“トラ・コン・タ”と称する。

トラクター

コンバイン

田植機

【作物や用途に合わせた専用農機】

野菜ごとに植え付け方や収穫の仕方も変わる。ゆえにヤンマーでは一般的な野菜から花までさまざまな作物に合わせた専用農機を展開。

ねぎ収穫機

大根引抜機

キャベツ収穫機

にんにく植え付け機

枝豆移植機

同社の農機ラインアップの主軸が日本人の主食である“米作り”に欠かせないトラクター、コンバイン、田植え機の3種。用途やサイズ、仕様、機能で異なるが価格はピンキリ。

トラクターを例とすると、10馬力くらいのエントリーモデルで200万円弱。自動運転機能搭載のロボット仕様は1000万円超えでスーパーカー並みである。とはいえそれだけの価値があると語るのは広報の坂田さん。

「なにせ農機はお金を稼いでくれますからね」

農作物の種類に合わせてユニークな見た目の専用農機も数多く展開されている点も面白い。

「作物ごとに作付け方法や収穫方法も変わってくるため、それぞれの需要に合わせて専用農機の種類も増えてきました。僕自身『そんなのまであるの!?』と驚くようなものもあります(笑)」

■天気予報のCMでおなじみ! ヤン坊&マー坊は9代目

ヤンマーがお茶の間からの認知を得る契機となったのが1959年から2014年までテレビ放映された、ご存じ『ヤン坊マー坊天気予報』だ。テレビが全国的に普及し始めてきた当時、「天気予報番組を通じて農業・漁業の従事者をはじめとした日本全国の方々の役に立ちたい」というヤンマーの想いを届けるべくスタート。白黒からカラーに、そしてデザインだけでなく趣味などのキャラ設定にも65年間に及ぶ時代の変化が反映されているのが興味深い。

▲55年間も続いた『ヤン坊マー坊天気予報』。誰もが歌える『ヤン坊・マー坊の歌』の作詞を手掛けたのは当時のヤンマー宣伝部長だそう

 

▼1959年 初代

▼1968年 3代目

▼1995年 5代目

▼2024年 9代目

▲一般投票を経て選ばれた9代目はスラリとした体型と近未来的デザインが今どき。服の模様がそれぞれYとMになっている点に注目。左:ヤン坊、右:マー坊

■エアコンやBluetoothも完備。これが最新ロボットトラクターだ!

近年のトラクターの中には省人化・高効率の観点から自動運転機能やGPS機能を搭載したハイテク化したモデルも多数登場している。ヤンマーが展開するスタイリッシュな最新型に迫る!

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“トラクター”は農業において土を耕したり肥料や種をまいたり、収穫物を運んだりする際に使うモノ。ゆえに読者世代の中には“武骨な農作業機”というイメージを抱く人もいるだろうが、ヤンマーのフラッグシップモデル「YT5114R」はそれを完全に覆す洗練された機能とデザイン性が特徴だ。

まず、その見た目の格好良さに惹かれるだろう。シートの座りやすさや操作機器の配置、メンテナンスのしやすさまで追求された機能美溢れるデザインがモノ好き心をワシ掴みにする。

機能面では昨年ユーザーの声に応えてさらに進化。コンバインと農地のデータが共有可能となり、“直進モード”の操作も簡単に。また、必要に応じてインプルメント(別売)を交換することでさまざまな用途に対応する汎用性の高さも持ち合わせている。乗車作業時の快適性も考えられているのでシートは柔らかく、エアコンで温度調整しつつ音楽まで聴けるのが令和の“トラクター”なのだ。

なお、同モデルの真価は搭載された自動運転技術「SmartPilot」を使用時に発揮されるそう。

「そもそも農機は凹凸のある土地の上を作物の種類に合わせて数センチ単位で調整しながら作業していくのでまっすぐに進む運転自体が難しいんです。直進アシスト機能や自動操舵システムを使うことで熟練したオペレーターでなくても簡単かつ正確な作業ができるようになります」(坂田さん)

将来的には農林水産省が定義する自動・無人化基準の【LEVEL3】にあたる「遠隔監視のもと完全無人自律走行で全操作自動化」を目指すという。トラクターの進化は止まらない!

▼「ロボットトラクター YT5114R」

乗車せずに場内の作業を無人で運転可能。オペレーターは近距離で監視しながら別の作業もでき、大幅な省力化を実現させた。

▼安全センサー

レーザーや超音波を利用して物体との距離を計測する安全センサーがトラクターの前後左右に設置されている。

▼洗練されたキャビン

330度ワイドな視界&広々ハイルーフ設計で疲れにくくエアコン完備。Bluetooth対応ラジオで音楽も聴ける仕様。

▼ヘッドライト

上部がハイビーム、下部がロービームで明るく照らす。夜間や濃霧など悪天候下の作業も安全に行える。

区画ごとに収穫量や農薬の量などもパソコンやタブレットなどで管理できる。

事前に設定した経路に応じて進むトラクターをタブレットで管理。複雑な入力や操作は不要だ。

■ヤンマーが実践する「スマート農業」の今と未来

日本の農業における最大の課題点が“農業人口の減少”。それに対する解決策として広まりつつあるのがICT(情報通信技術)やロボット技術を活用して農業の効率化や生産性向上を図る「スマート農業」だ。ヤンマーが最先端技術を集結して目指す持続可能な農業とは?

ヤンマーアグリ株式会社
村山昌章さん
開発者だがフィールドワークも重視し、“現場の生の声”をフィードバックさせた製品の研究・開発に努めている。「完全無人自律運転“LEVEL3”に向けて研究・開発しています!」

 

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近年の異常気象による不作など世界規模でさまざまな課題に直面している農業。特に深刻なのが農業人口の減少で「少人数でいかに効率的に農作物を生産するか」というのが目下の重要なミッションだそう。また、そこには単純な労働力不足のほかコスト削減、生産技術の伝承といった課題も付随する。

「ヤンマーではその解決策としてICT(情報通信技術)によるシステムを構築しており、なかでも注目いただきたいのが『スマート農機』との連携です。例えば、GPS、通信端末を農機に搭載、衛星電波で位置情報を受け取ることでトラクターをズレることなくまっすぐ走らせられるんです。また、農機から送られてくる作業エリアや作業内容などのデータを収集し、『スマートアシストリモート』と呼んでいる通信システムに集約。そのデータが導き出した適切な生産計画のもと作業することで安定した品質と収量の確保も期待できます」(村山さん)

こうして長年の勘や経験則に頼っていた部分を数値化&最適化することが農業への参入ハードルを下げることにも繋がり、農業人口を増やすひとつの解決策になるのである。なお、今回開発に携わる村山さんと広報の坂田さんへの取材を通して印象的だったのが、これら農機を介したデータ収集だけでなく生産者の意見を収集し、開発の現場と農業の現場の二人三脚で製品開発が行われているという点。

また、ヤンマーでは荒廃農地の上に太陽光発電を行うことで食料生産とエネルギー変換技術で農地を守るプロジェクト『SAVETHEFARMS byYANMAR』も進めており、持続可能な農業の実現に向けて尽力しているという。

最先端技術を活用しながらも人と人により紡がれていく農業。これがヤンマーの目指す明るい未来の姿なのだ。

▲GPS機能により衛星から地上の農機の位置を管理。作業の重複や未耕地を減らし、±2~3cmの高精度かつ安定した作業を可能としている

■リモートサポートセンターが24時間稼働!

365日24時間体制で全国の機械の稼動状況の把握、エラー情報通知、盗難抑止といった見守りサービスを実現。

 

>> 連載【GPジャーナル】

※2025年9月5日発売「GoodsPress」10月号102-105ページの記事をもとに構成しています

<取材・文/TOMMY 撮影/田中利幸>

 

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