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クラシカルな顔立ちと現代性能が調和。Nikon「Zf」をいま改めて語りたい

【趣味カメラの世界 #28】

クラシカルなデザインに心惹かれる瞬間は、写真好きなら誰しも経験があるのではないでしょうか。「趣味カメラの世界」連載で取り上げるNikon「Zf」(29万9000円※ボディのみ)は、まさにその感覚をストレートに刺激してくれるカメラです。

ということで、フォトグラファーの田中さんに実際に手に取ってもらい、そのデザインと操作性を中心にレビューしてもらいました。

監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。

 

*  *  *

■「New FM2」の記憶を呼び起こすクラシカルな佇まい

最初に目を引くのは、やっぱりその見た目です。軍艦部のNikonロゴやダイヤルの造形、レザー調の外装の質感まで、昔のフィルムカメラを思い出させるような要素があちこちに散りばめられています。

筆者の私物である「New FM2」(写真右)と並べてみると、その意匠の近さに思わず見入ってしまいます。単なる“レトロ風デザイン”というより、往年の銘機への敬意が感じられる仕上がりです。

ファインダーをのぞくと、駆け出しの頃の感覚がふっとよみがえるようで、気づけば背筋が少し伸びていました。

■クラシカルな顔つきだけど、中身はしっかり最新型

見た目はフィルムカメラのようでも、操作まわりはしっかり現代仕様。背面のバリアングルモニターは明るくて見やすく、屋外でも快適に使えました。

クラシカルなデザインに惹かれて手に取っても、扱いやすさの面では不満を感じません。

モニターを閉じたときの佇まいもベリーグッド。背面にも人工皮革があしらわれていて、手にしたときの質感がしっとり心地いい。思わずそのまま持ち歩きたくなるデザインです。

インターフェイスまわりも抜かりありません。充電やデータ転送に使えるUSB-Cに加えて、マイク端子やイヤホン端子、ミニHDMI端子まで装備。

必要なものがきちんと揃っていて、趣味の撮影はもちろん、本格的な動画撮影にも対応できます。

■趣味にも仕事にも頼れるうれしいデュアルスロット

個人的にうれしかったのは、記録メディアがシングルではなくデュアルスロット構成になっていたこと。

SDカードとmicroSDという少し珍しい組み合わせですが、バックアップを確保できる安心感は大きいです。趣味性の高いカメラでありながら、仕事でも使えるポテンシャルをしっかり感じました。

■“カチカチ感”が心地いい。「Zf」を象徴するダイヤルまわり

本機のデザインを語るうえで外せないのが、軍艦部に並ぶダイヤルたちです。シャッタースピードやISO感度を指先でカチカチと動かして調整できるのは、やっぱり気持ちがいい。

設定をひと目で把握できる合理性もあって、見た目の良さと使いやすさがしっかり共存しています。ダイヤルの触り心地まで含めて、この部分こそ本機の象徴といえるかもしれません。

ちなみに、「FM2」でいうところの、フィルムカウンターのような小窓には、F値を表示する小さなサブ液晶が仕込まれています。こういう“わかる人にはわかる”ディテールに、ついニヤッとしてしまいます。

見た目の再現度だけじゃなく、実用性までちゃんと両立しているあたり、やっぱりニコンだなと思いました。

■キットレンズは使いやすい画角と程よい描写力がポイント

今回使ったキットレンズ「NIKKOR Z 40mm f/2(SE)」(4万700円)も、「Zf」の魅力をぐっと引き立ててくれるアイテムです。

レトロ調のデザインがボディと見事にマッチしていて、持っているだけでも絵になる組み合わせ。でも見た目だけじゃなく、写りのキレも現代のレンズらしくしっかり。“昔っぽいのに、ちゃんと今の画が撮れる”という、このギャップがちょっと面白いです。

▲Nikon ZfNIKKOR Z 40mm f/2SE)、シャッタースピード1/320秒、F2ISO400、ピクチャコントロール:スタンダード

絞り開放のf/2では、被写体をしっかりと解像しながら、背景がやわらかくとろけていくようです。

光の具合によっては被写体の輪郭がふわりと浮かび上がり、見ているだけで空気の温度まで伝わってくるようなポートレートになります。

▲Nikon ZfNIKKOR Z 40mm f/2SE)、シャッタースピード1/1600秒、F5ISO180、ピクチャコントロール:風景

一方で、少し絞ると描写はさらに引き締まり、フルサイズセンサーらしい緻密な解像感が得られます。建物の質感や細部のディテールまでしっかりと描き出し、記録性の高い写真を残すことができます。

40mmという画角は広すぎず狭すぎずで、扱いやすいバランス。キットレンズとしても非常に優秀で、本格的なポートレートからスナップ的な撮影まで幅広く対応してくれます。

クラシカルな見た目に惹かれて手に取っても、実際にシャッターを切ってみると「やっぱり中身は本格的なフルサイズ機だ」と実感。このギャップこそ、このカメラと「40mm f/2(SE)」の組み合わせの魅力だと感じました。

■“浅めグリップ”にも味がある

撮影していて唯一気になったのは、グリップがやや浅めな点です。クラシカルな外観を優先しているため仕方のない部分ですが、このカメラは見た目こそレトロでも中身はしっかりフルサイズ一眼。実測で約855g(レンズ・バッテリー・メモリーカード込み)あるため、長時間の撮影では少し手が疲れました。

普段はストラップを付けない派の筆者ですが、このカメラにはレザー製のストラップを合わせたくなります。クラシカルな外観に似合うアクセサリーを選ぶ時間もまた、「Zf」を使う楽しみのひとつだと感じました。

■クラシカルな見た目と最新性能が融合した“使いたくなるカメラ”

Nikon「Zf」は、往年のフィルムカメラを思わせるクラシカルな外観と、現代的な撮影を支える最新性能が高い次元で融合したカメラです。

フィルムカメラのように見えて、実際は本格的なフルサイズミラーレス。そのギャップこそが、このカメラのいちばんの魅力だと感じました。

次回の後編では、キットレンズ「NIKKOR Z 40mm f/2」とともに撮影したスナップやポートレートを通して、その描写力と撮る楽しさを紹介していきます。

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<取材・文・写真/田中利幸 モデル/田淵瑚都(@tako_ism)  取材協力/Nikon>

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