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26万円超の価値はあるのか?「Google Pixel 10 Pro Fold」をじっくり使って考えてみた

Googleの折りたたみスマホ「Google Pixel 10 Pro Fold」が10月9日に発売されました。2023年にリリースされた初代「Google Pixel Fold」から数えて三世代目のモデルです。Pixel 10シリーズの最上位モデルとあって、256GBモデルが26万7500円、512GBモデルが28万7500円(Googleストア価格)と、かなり高額。果たして、価格相応の価値はあるのか? 1週間ほど使ってみました。

▲カラバリはJade(左)とMoonstone(右)の2色。筆者はGoogleからJadeを借りている

 

■前モデルと同じに見えるが、中身がパワーアップ!

Pixel 10 Pro Foldの大きさは、前モデルのPixel 9 Pro Foldとほぼ同じ。デザインも踏襲されているので、パッと見は色と質感が変わっただけと思うかもしれません。

しかし、見えない部分では大きな違いがあります。折りたたみの要であるヒンジ構造が改良されました。従来は複数のギアを組み合わせて開閉を実現していましたが、新モデルではギアの代わりにバネ仕掛けのCAM(カム)という機構を採用。これによって耐久性が高まり、内部設計の自由度も高まったとのこと。Pixel 10 Pro Foldは30時間以上のバッテリー駆動を実現し、IP68の防塵・防水に対応しましたが、それらもCAMの恩恵と言っていいでしょう。

▲ヒンジ構造の改良により、耐久性が向上

折りたたみスマホに対して「壊れやすそう」「慎重に扱わなければならない」と思っている人は少なくないでしょうが、Pixel 10 Pro Foldはフツーのスマホの感覚で使って問題なさそうです。

 

■フツーのスマホのように操作できるが、やや重い

折りたたみ時に使えるディスプレイは6.4インチ。解像度は1080×2364で、リフレッシュレートは最大120Hz、ピーク輝度は3000ニトと、ハイエンド機らしいスペックを備えています。折りたたみ時の横幅は76.3mmで、厚さは10.8mm。やや厚みはありますが、片手で持って操作できるサイズ感です。

▲折りたたみ時は、フツーのスマホのように操作できる

ただし、重さは258gあります。ちなみに、ライバル機といえるサムスンのGalaxy Z Fold7は、折りたたみ時の薄さが8.9mmで、重さは215g。軽さを重視する人は、Galaxy Z Fold7を選んだほうがいいかもしれません。

 

■開くとマルチウィンドウ作業を快適に行える

開くと8インチの大画面ディスプレイが現れます。解像度は2076×2152で、リフレッシュレートは最大120Hz、ピーク輝度は3000ニト。折り曲がる部分は、微かに凹んでいますが、境目に表示された文字が歪んだりすることはなく、ほぼ気にならないレベル。

▲閉じた状態でマップを表示

▲開くとマップが広範囲に

折りたたんだ状態でWebや地図などを見ていて、開くとスムーズに大画面表示に切り替わります。Galaxy Z Fold7よりも厚みがあるためか、開閉はしやすい印象。開いた状態での厚さは5.2mm。かなりの薄さですが、使っていて不安になるほどではありません。

▲薄すぎないから開閉操作がしやすい

内側のディスプレイは、画面が大きいというだけで十分にメリットがありますが、ふたつのアプリを同時に起動し、連携して使えることも魅力。例えば、「フォト」と「Gmail」を起動し、「フォト」から選んだ写真を「Gmail」にドラッグ&ドロップで添付することが可能。

▲2つのアプリを同時に表示し、連携して使えるのが便利

プリインされているGoogleのAIアプリ「NotebookLM」のソースとして、ウェブサイトのURLを指定するといった作業もスムーズに行えました。

▲複数のソースを取り込んで、要約したり、音声コンテンツを生成したりできる「NotebookLM」アプリも便利に使える

 

■カメラは “最上” ではないが、使い勝手に優位性アリ

カメラは広角(48メガピクセル/F値1.7)+超広角(10.5メガピクセル/F値2.2)+望遠(10.8メガピクセル/F値3.1)という構成。望遠カメラは光学5倍で撮影でき、10倍も光学相当で撮影可能。デジタルズームは最大20倍。AIによって解像感が補われるようで、20倍にしても、かなり鮮明な写真が撮れました。

▲48メガピクセルをメインとする3眼カメラを搭載。カメラ部は出っ張っている

▲超広角(0.5倍)で撮影。鮮やかな色で写った

▲広角(1倍)で撮影。色味は超広角とほとんど変わらない

▲広角(2倍)。光学相当の画質で撮影できる

▲望遠(5倍)。明るく写るが、ややのっぺりとした印象

▲最大の20倍で撮っても、粗さが補正される

ただし、「Pro」と名乗っているものの、カメラのスペックはPixel 10 Proには劣り、Pixel 10に近い仕様です。最大100倍の超解像ズームや、動画ブーストを使った8K動画撮影などを楽しみたい人は、Pixel 10 ProまたはPixel 10 Pro XLを選ぶべきです。

外側ディスプレイの中央上と内側ディスプレイの右上に、それぞれ10メガピクセルのカメラが搭載されています。ただし、自撮りにこれらのカメラを使う必要はありません。開いた状態で、高画素の3眼カメラを自分に向けて撮影できるからです。また、誰かを撮影する際に、外側ディスプレイに「こっちを見て」というアニメーションを表示させて、目線を向けさせたり、外側ディスプレイにもプレビューを表示して撮影される人自身が写り具合を確認したりもできます。人物を撮ることが多い人には、大いに役立つこと請け合いです。

▲背面カメラでのセルフィー、両面ディスプレイでのプレビュー表示などが可能

▲「こっちを見て」は6つのアニメーションから選択できる。撮られる側の人に見せて、笑顔にさせる趣向

半分まで開いて、安定する場所に置いて撮影することも可能。Pixel 10 Pro Foldには「長時間露光」モードもありますが、三脚なしで光の軌跡や水の流れの撮影にも挑戦できるわけです。

▲卓上に立ててカメラを起動すると、プレビューと操作パネルが上下に分かれて表示される

▲開いた状態で撮影すると、直近で撮った写真を確認しながら撮ることもできる

 

■十八番のAI機能はさらに進化!

Google PixelはAI機能が充実していることにも優位性があります。ほとんどのAndroidスマホで使える「かこって検索」「Gemini」、「消しゴムマジック」などの多彩な画像編集機能に加えて、Pixel 10シリーズでは新しいAI機能も利用できます。

通話中の会話が通訳される「マイボイス通訳」は、話者の声に近い声が生成されることが特徴。瞬時というわけではなく、オリジナルの音声が小さく聞こえた後、少し待ってから通訳された音声が聞こえる仕組み。なお、翻訳結果は画面にも表示されるので、スピーカーホンに切り替えて使うと、より便利でしょう。

▲「マイボイス通訳」は、通話を開始してからでも起動できる。自分と相手の言語設定が必要

「マジックサジェスト」という新しい機能も利用できます。電話やメッセージでやり取りをしているときに、AIが必要な情報を引き出してくれたり、使うと便利なアプリの起動に導いてくれたりする機能。Googleアカウントに紐づくデータが検索対象になるので、Googleのサービスを多用している人ほど役立つのではないかと思われます。

▲例えば、メッセージで場所が話題になったら、「マップ」アプリで確認するように導いてくれる

「レコーダー」アプリでは、文字起こしと要約が利用可能。開いた状態で録音すると、録音の波形とリアルタイムの文字起こしが同時に表示されるのが便利。Pixel 10シリーズから新たに追加された、AIでBGMを作曲し、追加される機能も楽しめます。

▲「レコーダー」はリアルタイムの文字起こしが見やすいのが利点

▲新機能「音楽を作成」で、録音した音声に合うBGMを生成できる

 

■にしても高いが、経済的に使う方法はあるの?

Google Pixel 10 Pro Foldのプロセッサーは、最新のGoogle Tensor G5。バッテリーは5015mAhで、結構ヘヴィーに使っても1日は持ちました。Pixel 10シリーズの他のモデルと同じように、マグネット式ワイヤレス充電「Pixelsnap」にも対応。他のモデルを上回る優位性として、5Gミリ波の周波数帯にも対応しています。

▲Pixelsnap対応の純正ケース(1万1220円)も用意

ハイエンド機能を漏れなく備え、多彩なAI機能も快適に使いこなせる、そんなスマホです。「折りたたみスマホに興味があるが、耐久性が不安」「スマホのほかにタブレットも使いたいが、持ち歩きがかさばる」そんな悩みを解決してくれる1台になりそうです。ですが、26万7500円〜なので、決して安くはありません。

Pixel 10 Pro Foldはドコモ、au、ソフトバンクも取り扱っています。一括払いでの価格は、Googleストアより若干高いのですが、各社が分割払いで購入し、使い終えた後に返却することで、実質的な端末代金を安くするプログラムを提供しています。それを利用すると、17万3900円(auオンラインショップで新規で購入し、2年間使う場合)〜と、かなり安くなります。また、Pixel 10 Pro Foldは7年間のOSとセキュリティのアップデートを保証しているので、大切に長期的に使うのもアリでしょう。

>> Googleストア

<取材・文/村元正剛(ゴーズ)

村元正剛|iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。

 

 

 

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