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革新と伝統が同居する ハミルトン「カーキ フィールド」の現在地【GoodsPress“時計大研究”2025-2026】

【GoodsPress“時計大研究”2025-2026】

今秋、新たに「カーキ フィールド」の新作として「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」が仲間入り。無二の物語性を持つ本シリーズの血統を宿しつつも、新たなステージを目指すこのニューフェイスの特徴と、ブランドのこれからについて、本国から来日したCEOへの単独取材とともに掘り下げる!

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この製品を皆さんに紹介できる日が来たことを、非常に感動的な心持ちで迎えています。このプロジェクトには3~4年を費やしていて、やっと日の目を見るというか、誕生日を迎えるような、ワクワクした気分です」

そう心情を語るのはハミルトンCEOのヴィヴィアン氏。新色やコラボ、クォーツモデルの登場など、近年トピックスに事欠かない「カーキ フィールド(以下KF)」に、今回新たな専用ムーブメントとパワーリザーブ表示機能を搭載した新作が登場した。その開発背景について、ヴィヴィアン氏は次のように続ける。

「長い歴史を持つコレクションだからこそ、実は新しいKFを作るというのは難題なんです。今まで私たちが積み上げてきた伝統とのバランスを考えなければいけませんから。また別の側面として、ハミルトンにとってやはり“手巻き”というのも非常に重要な要素のひとつでした。

そんな中で、KFにどんな新しい機能をつけるべきかと考えたときに、実用性の観点から『パワーリザーブ残量がひと目で分かるようにしたい』と思い至ったんです。本作はムーブメント制作会社とともに新しいムーブメントを開発するところからはじめました。これはハミルトンだけが使える特別なもの。革新的なムーブメントが誕生したと自信を持って言えます」

パワーリザーブの“残量”が分かるのは、まず巻き忘れ防止という点で利便性が直感できる。利点はそれだけでなく“満タン”が分かるというのも巻き過ぎによるムーブメントへの過負荷防止につながる。目視できるという一聞するとシンプルな機能だが、それが持つアドバンテージは非常に大きい。

今回の取材は、カフェを貸し切って行われた招待制の展示会場で行われた。

前述の新作と同様に会場に大きく展示されていたのが、話題作『Call of Duty:Black Ops 7』とのコラボモデルだ。ゲームコラボといえば、6月に発売された『DEATH STRANDING2:ON THE BEACH』とのコラボも本誌読者は記憶に新しいはず。多くのコラボや限定モデルを発表し続ける真意と、これからの展開について聞いた。

「コラボそしてハミルトンの時計の意義として、人と人を情熱的に結びつけるひとつの架け橋になりたいと思っています。また、今年はお店のドアを開けてもらうためのきっかけになってほしいという願いから、世界4カ所のストア限定モデルもスタートさせました。

これにはハミルトンの歴史と世界観をもっとも象徴的に表すことのできるものということで、KFのメカを起用しています。ハミルトンは決して満足というものをしないブランド。常にクリエイティブであり続けたいと考えています。これからの展開もぜひ楽しみにしていてください!」

ハミルトン インターナショナル CEO
ヴィヴィアン・シュタウファー氏
2002年にスウォッチグループ入社。2007年からハミルトンに携わり、2020年CEOに就任。取材日にはブロンズケースの「カーキ ネイビー スキューバ GMT」を着用していた。「ブロンズは次第に色が変わってゆくのが、自分がやったことや経験したことが表れるようで気に入っています」

 

■ユーザーとブランドを繋ぐ期待のエクスクルーシブモデルたちにも要注目!

▲会場で一際大きなスペースで展示されていたのが、人気FPSゲームの最新作『Call of Duty:Black Ops 7』とのコラボモデル。ケースバックの刻印や限定パッケージなど、特別な仕様が盛り沢山!

▲この特別な「カーキ フィールド オート」はゲーム内でも作中のキャラクター「アクセル・フェルマーク」が着用する。

▲世界4カ所の旗艦店では各ストア限定の「カーキ フィールド メカ」も発売。ハミルトンストア 東京 キャットストリート店のモデルは、その店名にちなんで猫をモチーフにデザインされている

▲日本の藍染めの技法を取り入れた「ベンチュラ」(12月発売予定)など、「KF」以外にもキャットストリート限定モデルは続々リリース予定。ハミルトンの新作にこれからも目が離せない!

▲新作の「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ」は文字盤やストラップ違いで計4種。会場にはオリジンと比較しながらその世界観を感じられる展示も

▲カーキには「フィールド」のほか、使用環境や世界観の違う「ネイビー」や「アビエーション」もある。その幅広さから、手に取るたびにきっと新たな発見があるはずだ

■80時間のロングパワーリザーブ搭載、巻く仕草も愛おしく感じられる新生「カーキ フィールド」

ハミルトン
「カーキ フィールド メカ パワーリザーブ H69509930」(13万4200円/SSブレスレット:14万9600円)

SUV車のフューエルメーターにデザインの着想を得たという、持続時間80時間のパワーリザーブ表示メモリをダイヤル上にレイアウト。実用面をさらに強化したほか、ETA社がハミルトンのためだけに開発した新開発の手巻きムーブメント「H-23」も搭載する意欲作だ。

SPEC:ケースサイズ40mm、SSケース、手巻き(キャリバー H-23)、パワーリザーブ80時間、100m防水、反射防止サファイアクリスタル

▲二種類の文字盤(白と黒)と二種類のストラップ(メタルとNATOベルト)の計4パターンから好みの一本を選ぶことができる

▲パワーリザーブメモリはF(=満タン)だけでなく、E(=エンプティ)も表記されているところに、クルマの燃料メモリの“らしさ”が表れている

▲40mmのケース径だけでなく、厚みも11.95mmとスタンダードなモデルと比較すると大きめなサイジングだが、装飾などは最低限でスマートな印象

【ブランドヒストリーとアーカイブ】
今一度知りたい 「カーキ フィールド」の歩み

「ミリタリーウォッチとしてのルーツを持つ」。そう一言でまとめるのが憚られるほど、「カーキ フィールド」には 誕生から今日に至るまでに多くの語るべき歴史を持っている。その魅力を再発見すべく、ハミルトンの創業からブランドが歩んだ道のりを振り返ってみよう。

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「カーキ フィールド」の歴史を語る際、まず触れなければならないのが、ハミルトンが誇る精度と技術の歴史だろう。ペンシルバニア州ランカスターで懐中時計を製造していたハミルトンの最初の分岐点となったのが、鉄道の出現だ。鉄道黎明期のアメリカには正確な時刻を測定する方法がなく、鉄道事故が相次いでいた。そのなかでハミルトンは懐中時計の高い精度を見出され、問題の解決に大きく貢献。「The Watch of Railroad Accuracy」(鉄道公式時計)という称号を獲得した。

その優れた品質はアメリカ軍の目にも留まることになる。1910年代には米軍への納入・採用が標準化。高い水準を維持しながらも、迅速に技術革新を行う製造開発力が培われ、1917年には第一次世界大戦に向かう兵士のためにハミルトン最初の腕時計である「カーキ」の生産がスタートする。まさしく、現代への流れる大河「カーキ フィールド」の最初の一滴だ。

その後、ハミルトンは懐中時計から腕時計の生産に注力し、第二次大戦中には軍需品を供給。そして1966年、「カーキ フィールド」の原点となる「GG-W-113」が誕生する。現代ではその実用性とデザイン性は「カーキ フィールド メカ」を筆頭に受け継がれ、ファッション、カルチャーシーンでも広く受け入れられている。その道程を深く理解した今、「カーキ フィールド」が持つ魅力や深みを再発見できたはず。次に「カーキ フィールド」を身につけたとき、きっといつもより愛おしく思えるだろう。

・1892年 アメリカ、ランカスターの地で創業

■アメリカの鉄道普及に貢献した歴史的時計

「ポケットウォッチ 936」(1895年)

ハミルトンの創業の地であるアメリカ・ランカスターで製造されていた懐中時計。気温に合わせて調整される特殊なムーブメントを搭載するなど、今に受け継がれているパイオニア精神を体現している。

・1912年 アメリカの鉄道公式時計に認定

・1914年 アメリカ軍に懐中時計の優れた品質と精度を認められる。高い水準を維持しながら、迅速に技術革新を行う能力が培われる

・1917年 懐中時計から塹壕で戦う兵士の実用的なニーズを満たす時計へと生産を移行。2種類のムーブメント(Grade 983とGrade 985)を使用したメンズウォッチを発表

・1926年 北極点到達をハミルトンウォッチがサポート

・1932年 映画『上海特急』でハミルトンウォッチが銀幕デビュー

・1942~45年 WW2で軍需用の生産に注力。「Army-Navy 'E'Award」を受賞

■オフィシャルサプライヤーとしての矜持を宿した名作

「ミリタリーウォッチアメリカ海軍」(1942年)


「ミリタリーウォッチ グレードII」(1944年)

軍への時計の供給に専念した時期に製造された数多くのミリタリーウォッチの一例で、兵士が標準装備として活用されていた。グレードIIとは、米軍規定の精度要件のことを指す。

・1957年 世界初の電池式時計ベンチュラ発売

・1961年 ミリタリーウォッチ(MIL-W-3818B)誕生

・1966年 エルヴィス・プレスリーがベンチュラを着用し大きな話題になる

■アイコニックなデザイン性が光る「原点」

「ミリタリーウォッチ GG-W-113」(1966年)

ベトナム戦争で米軍に供給されたモデルで、現行の「カーキ フィールド メカ」のオリジン。5分刻みに三角マーカーを配した外周のインデックスや、シリンジ型の時分針など個性的だ。

・1968年 スタンリー・キューブリックの映画『2001年宇宙の旅』で初のプロップウォッチを制作

・1969年 スイスに拠点を移す

・1970年 世界初のLED搭載時計 ハミルトン パルサーがリリース

■「カーキ」の活躍の場はイギリスでも!

「ミリタリーウォッチ イギリス軍」(1970年代)

1965年から1976年にかけて、イギリス軍向けに4万本近い腕時計を製造。軍事行動時に必要な同期をとるためのハック機能を備えるなど、英軍からもその実用性を高く評価されていた。

・1997年 ベンチュラが映画『メン・イン・ブラック』に起用される

・2001年 映画『パールハーバー』公開。劇中にカーキ フィールドを起用

・2011年 エアーツェルマットの正式時計に認定

・2014年 映画『インターステラー』公開。カーキ フィールドのプロップウォッチを制作し、「マーフウォッチ」として注目される

・2017年 世界初の直営旗艦店であるハミルトンストア 東京 キャットストリートがオープン

・2025年 カーキ フィールド メカ パワー リザーブが発売

<G.Sを由来とするクォーツモデルも登場!>

▼「カーキ フィールド クォーツ 33mm H69301940」(6万4900円)

▼「カーキ フィールド クォーツ 38mm H69401430」(6万4900円)

▼「カーキ フィールド クォーツ 38mm H69401131」(7万4800円)

機械式時計の入門編としての側面も持つ「カーキ フィールド」だが、近年ではさらにカジュアルにかつ多くの人が楽しめるよう、クォーツ駆動のモデルもラインナップされている。1960年代に英国政府の非軍人向けに製造された「ハミルトンG.S.」( "GeneralService")にインスパイアされており、視認性の高いダイヤルや鉄道線路を模した分目盛など、当時を踏襲したデザインが好印象。ケース径は33mmと38mmから選べるユニセックス仕様だ。

>> 特集【GoodsPress“時計大研究”2025-2026】

※2025年10月6日発売「GoodsPress」11月号142-145ページの記事をもとに構成しています

<文/五十嵐 真、GoodsPress編集部>

 

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