【“休む”を知る】#2
世界的に見ても日本人は睡眠時間が短いと言われています。OECD(経済協力開発機構)が2021年に発表した「Time use across the world」によると、調査した33カ国中、日本の睡眠時間は、ダントツで少ない7時間22分でした(トップは南アフリカの9時間13分、アメリカは5位で8時間51分)。
この数字を見ると「7時間も睡眠取れれば十分じゃない?」と思われる人もいるかもしれません。もちろん必要な睡眠時間は人それぞれかもしれませんが、問題は睡眠の質。質の良い睡眠を取れていれば、しっかり体を休められていることになります。
では、その“質の良い睡眠”とはなんなのか。そして、どうすれば睡眠の質を良くできるのか。
睡眠といえば、やはり寝具。室町時代の1566年創業の寝具メーカーnishikawaで、ふたりの“スリープマスター”に質の良い睡眠を取る方法を伺いました。
■質の良い睡眠のカギは朝にあり
まず、そもそもなのですが、“質の良い睡眠”とはどういうものなのでしょうか。
スリープマスターの森 優奈さんは「睡眠のリズムとかの話をしてしまうと細かくなってしまいますが、質の良い睡眠を取れているかを確認する方法としては、“朝すっきり目覚められているか”と“午前中に眠気を感じないこと”、このふたつが分かりやすいのではないかと思います」といいます。
そこにはレム睡眠、ノンレム睡眠が関わってきます。
「レム睡眠とノンレム睡眠は、約90分のサイクルを1セットとして、一晩に4~6回繰り返されます。その中で、眠りが浅い状態であるレム睡眠が続いていると、やはり質が良いとは言えません」
もちろん、レム睡眠とノンレム睡眠のサイクルは人によってまちまちだそう。なので、“何時間寝たらすっきり起きられるな”というものがあれば、そこから逆算して入眠時間を考えるといいようです。
ちなみに、入眠後は一気に睡眠が深くなるのですが、寝る前に酒を飲んだり、日中の活動量が少なかったりすると、浅い眠りが続き深い睡眠に入らないこともあるのだとか。
「お酒は入眠作用があるので眠くはなるんですが、せっかく眠っていても浅い状態が続いてしまいます。また覚醒作用もあるので、途中で起きてしまったり、その後はなかなか寝付けなくなってしまうことも。なので、寝る前のお酒はあまりオススメではなく、できれば入眠の2~3時間前には終えてください」
なかなか寝付けないから寝酒を、という人もいるかもしれませんが、質の良い睡眠、しっかり休める睡眠を考えると、あまりオススメではないようです。
また、午後に眠気を感じることは気にしなくてもいいとか。
「昼食後に、ご飯たくさん食べたから眠い、みたいなことがあると思いますが、それはご飯を食べたからとか寝不足だからというわけではなく、しっかり睡眠を取れている人でも人間の体のリズムで眠くなるものなので、気にしなくて大丈夫です。ただし、ここで頑張って仕事をしたり何か作業したりしてしまうと作業効率が低下したり集中力が低下したりするので、15~20分程度お昼寝するのが効果的ですね」
たしかに午後イチはなぜか眠くなることがあります。ここで無理せず少しだけ“休む”感覚で目を瞑ったり軽く眠ったりするといいんですね。
「ちなみに、カフェインはだいたい摂取して20~30分後に効いてくるので、お昼寝の前にコーヒーを飲むことはおすすめです」
では、朝起きられないとは逆に“朝早く目が覚めてしまう”という人はどうなんでしょうか。
「そういった相談はすごく多いですね。年を重ねてくると、睡眠時間が短くなることは体のリズムとしては自然なことなので、そうプレッシャーに感じず、睡眠時間が短くても質を高めてあげたり、お昼寝を効果的に取り入れてあげることで、足りていない夜の睡眠を補ってあげれば問題ありません。ストレスや精神的な要因、生活習慣の乱れ、不規則な生活リズムも、早く目覚めてしまう原因につながりますので、規則正しい生活を心がけ、リラックスできる時間を作ることが大切です」
具体的に睡眠を良くするための方法とは、どのようなものになるのでしょうか。
「夜の眠りための準備は、朝起きた時から始まっています。できるだけ同じ時間帯に起きて、そして最も重要なポイントが“太陽の光を浴びる”ことです。これによってセロトニンというホルモンが分泌され、約15時間後にメラトニンという睡眠ホルモンに変わってきます。なので、朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びる。これで、夜眠る準備を始められて、体内時計のリセットにもつながります」
夜勤などで暗い時間に起きなければいけない人は、部屋の照明でも構わないので、とにかく明るい光を浴びることが大事なんだそう。
また、日中に体を動かすことも大切だといいます。起きている間の活動量が多すぎても睡眠の質の低下にはつながるそうですが、少なすぎても影響は出るとか。
そして食事も重要。できるだけ3食とる。とくに朝は咀嚼できるものにすることで体を起こせる。朝は必ず食べたほうがいいといいます。
「夕飯は、できれば寝る2~3時間前までに済ませるようにしてください。飲みすぎたらアルコールを分解するために、食べすぎたら消化するために体が動いてしまい、そちらにパワーを使ってしまい、質の高い睡眠が取りにくくなってしまいます」
さらに夜、睡眠前に入浴することもいいそうです。
「私たちの体は、体温が下がる時に眠気を感じるようになっています。なので、一度お風呂に入って体温を深部から上げてあげることで、入浴後の体温低下でスムーズな睡眠につながりやすくなります。できれば15~20分程度、お湯に浸かって体を温めてあげるのがいいですね。もちろんシャワーでもいいのですが、やはり一番のオススメは湯船に浸かること。どうしてもシャワーしか浴びられないという人は、首筋とか手首、足首など太い血管が通っている部分を重点的に温めてあげるといいと思います」
また、寝る前の行動を一定化するのもひとつの手。ストレッチしたり、温かい飲み物をとったり、スキンケアをしたりといった入眠ルーティンを作っておくことで、気持ちの切り替えにもなり、効果的だとか。
「お気に入りの香りをかぐ、なんてこともアリだと思います。例えばアロマミストを枕カバーにかけておいたり、マグカップにお湯を入れてアロマオイルを少しだけ入れてみたり、ティッシュにたらしたり、といったことだけでもいいと思います」
ちなみに寝る前のスマホは、ブルーライトもあるし、情報が入ってくることで交感神経が優位になってしまうので、やっぱり良くないそう。でもなかなかやめられないという人は、スマホをナイトモードに設定したり、ブルーライトカットの工夫をしてみたり、リラックスできるものを見たりなどで、できるだけ刺激を抑えるようにしましょう。
■1年中使える羽毛布団
質の良い眠りを得るために起きている時に何をすべきかについては分かってきましたが、やはり気になるのは寝ている時。
当然ながら、誰もが布団やマットレス、枕など寝具はすべてそろっているとは思います。これら全てを一気に変えるのは難しい、なんて場合、どこから手を付ければいいのでしょうか。
「うーん、難しいですね。できれば全部と言いたいんですが…」
そう唸ったのは、同じくスリープマスターで、商品開発にも携わる中庭啓介さんです。
「やはりすべてのバランスがすごく大切で、例えば枕を変えてくださいと言ったとしても、枕もマットレスとの相性によって高さが変わってきたりしますので…」
たしかに。マットレスの硬さなどでも変わってくるだろうことはわかります。
「ちなみに、これからの季節にオススメしたいのは羽毛布団です。私たちは寝ている間にコップ1杯分ぐらいの汗をかきます。羽毛布団はその湿気を吸ってくれて、布団の中の温度とか湿度を調整してくれます。暖かく保ち調整してくれる。掛け布団によって睡眠の質はかなり変えられますよ」
でも羽毛布団ってお高いですよね。寒い季節にしか必要ないものに予算を捻出するのはなかなか…。
「1年間使える羽毛布団、ありますよ」
といって紹介してくれたのが現在Makuakeで先行販売中の「#003 torofuwa 通年使い羽毛ふとん」です。羽毛量が0.3kgの肌掛けと0.7kgの合掛けが2枚セットになっていて、夏は肌掛けだけ、ちょっと寒くなってきたら合掛けだけ、寒い季節は2枚合わせてといった使い方ができるようになっています。
サイズはシングルロングサイズのみで150×210cm。一般販売時の価格は3万3000円とのことです。
「2枚の布団は、何箇所かホックでパチンと留めるだけで簡単です。このホックは、使用しなない時期に丸めて留める時にも使います。かなりコンパクトになりますよ。ちなみにつめものはダウン70%、フェザー30%。2枚合わせる構造は、間に空気の層ができるので、より暖かくなるんです。最近の夏は夜も暑いじゃないですか。夜間熱中症も増えてきている。以前はタオルケットや接触冷感のものが売れていたんですが、最近はクーラーをつけたまま寝ることで、少し肌寒かったりもします。そんな時に、軽い羽毛の肌掛けは結構人気が出てきているんですよ」
ちなみにこの「#003 torofuwa 通年使い羽毛ふとん」、布団カバーなしで使えるのもポイントです。
「従来製品で使用されている繊維の約2倍も細い繊維を使用しているので、しなやかで肌あたりが良く、軽いので羽毛がふっくら膨らみます。天然ダウンをそのまま感じられる生地になっています。そうそう、自宅の洗濯機で丸洗いできますよ」
カバーなしだからこそ、洗濯機で洗えるのは助かりますね。
そしてマットレスでも気になる新製品が。それが、nishikawaの新ブランド“suyara”の「Dots(ドッツ)マットレス」と「Bounce(バウンス)マットレス」です。
中庭さんが「とにかく寝心地とコスパにこだわった」というふたつのマットレス。Dotsはふとんタイプ(厚さ8cm:2万2000円~)、ふとん三つ折りタイプ(厚さ9cm:3万3000円~)、ベッドマットレスタイプ(厚さ20cm:4万4000円~)の3種類あり(Bounceはふとん三つ折りタイプとベッドマットレスの2種類。価格はDotsと同じ)、サイズもシングル(幅97×長さ195cm)、セミダブル(幅120×長さ195cm)、ダブル(幅140×長さ194cm)の3種類がラインナップしています。
「Dotsは体圧分散、腰への負担軽減、寝返りのしやすさ、横向き寝がラクなどの特徴があります」
実際に寝てみましたが、沈むのではなく浮かぶような感覚で、とにかく寝返りしやすい。そして起き上がりやすい。硬めが好きな人には心地良い寝心地なのではないかと感じました。
「Bounceは、しっかりした寝心地のベーシックなマットレスになります。両モデルとも“スマートスリット”が入っていて、ポケットコイルのように体にフィットします」
体のカーブに沿って支えてくれている感覚があり、不快に感じる部分がありません。寝返りをよくする人や、横向きに寝ることが多い人にはぴったりな気がします。
また、マットレスというと家に入れるのも大変という印象がありますが、素材はウレタンなので、圧縮梱包されています。店舗で購入して自力で持ち帰ることもできるし、配送してもらっても部屋まで運びやすい。気軽に購入できるのもありがたいですよね。
* * *
積極的に”休む”と考えた時に、まず思い浮かぶのが寝ることだと思います。質の良い睡眠を取ることは、疲れを取ることに直結します。そのためにまずは生活習慣を整える。さらに自分に合った寝具をそろえる。睡眠時間を多く確保できない場合でも、睡眠の質を良くする工夫はたくさんあることがわかりました。
知っていることが多かった、という人もいるかもしれません。ですが、それを実践できているかはまた別問題。あらためて自分の睡眠状況を振り返り、できるだけ良い睡眠を取れるように意識してみてはいかがでしょうか。
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>> 特集:“休む”を知る
<取材・文/円道秀和(&GP) 写真/湯浅立志(Y2)>
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/704872/
- Source:&GP
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