今、次世代パーソナルモビリティ(超小型モビリティ)への注目が高まっています。維持費が安くて環境負荷が少ない、軽自動車よりコンパクトなので狭い道も楽に走れるのでちょっとした移動に便利。このような理由からヨーロッパでは街中での移動手段として選ばれており、日本でも今後街中での近距離移動に適したモビリティとして、需要が高まるのではないかと考えられています。
一方で、モノ好きとしては不満な点も…。次世代モビリティは現在でも大手自動車メーカーからベンチャー企業までさまざまなメーカーから発売されていますが、ヨーロッパの街を走るものに比べると「これは欲しい!」と思えるデザインのものが少ないんですよね。
でも2025年10月30日〜11月9日まで東京ビッグサイトで開催されたJapan Mobility Show 2025の会場を歩いていたら「これは乗りたい!」と感じる次世代モビリティが目につきました。多くの人が欲しいと思う次世代パーソナルモビリティが増えれば、街の風景も変わるかもしれませんね。
■ホンダ Micro EV|バモスホンダを連想させるデザインがかわいい!
Japan Mobility Show 2023でホンダが世界初公開した四輪電動マイクロモビリティ「CI-MEV」は、取り外しや持ち運びが可能な「モバイルパワーパック(MPP)」を採用。ホンダが開発した独自の協調人工知能を活用し、地図に頼らなくても道路環境を把握したり、他のクルマなどと協調や交渉を行って安全に移動できるようになることを創造していました。
今回出展された「Micro EV」は参考出品車という形での展示に。「CI-MEV」のイメージを受け継ぎながら、フロント周りのデザインが変更され、より愛らしい雰囲気が打ち出されています。とくにフロントセンターのスペアタイヤが付けられたような大きな丸型のデザインは、1970年にデビューしたバモスホンダを連想させる処理。丸目やコロンとしたボディも含め、かわいいデザインが好感を持てます。
ホンダの代名詞でもあるM・M思想(Man-Maximum、Mecha-Minimum)が盛り込まれたボディ設計により小さくても2人で移動するための十分なスペースを確保。ラストワンマイルの移動を手軽に楽しめるモビリティとして、将来の実用化に期待したいですね。
■ダイハツ ミゼットX|商用車としても乗用車としても使える超小型モビリティ
オート三輪の初代ミゼットが登場したのは1957年。高度成長期の真っ只中だった日本において、人々の仕事を支える相棒として日本中で大活躍しました。1996年にはそんなミゼットのコンセプトを受け継いだ軽自動車、ミゼットIIが登場。三輪から四輪に姿を変えましたが、1人乗りのコンパクトなキャビンと必要最小限の小さな荷台を備え、マイクロ軽貨物として街中での配送車として活躍。また、キュートなルックスからコマーシャルビークル的な需要もありました。
ミゼット、ミゼットIIと進化したマイクロ貨物車は、今回のモビリティショーで新たなコンセプトカー、「ミゼットX」へと進化しました。両車のイメージを引き継いだデザインは二輪の気軽さと四輪の便利さを融合したもの。貨物車として配送に使うだけでなく、子育てや趣味などにも使えるように、商用車としても乗用車としても利用できる自由設計が可能になっています。
自転車+α感覚で使える次世代モビリティは身近な移動の再発明と、ダイハツはうたっています。
■AIM EVM|沖縄の島々を便利に楽しく移動できるモビリティ
超小型モビリティは、大きく分けると「第一種原動機付自転車(ミニカー)」「超小型モビリティ(型式指定車)」「超小型モビリティ(認定車)」の3種類になります。最高速度は基本的に60km/hで高速道路の走行は不可。現在、この規定に沿って開発されて認可を受けたモデルが実際に街を走っています。
AIMが開発した「EVM」もその一つ。沖縄県の島嶼部やリゾート地域の人々の意見を反映し、島の人たちが笑顔になるモビリティとして開発。全長2490×全幅1606×全高1560mmという最小限のスペースに大人2人で乗れるスペースが確保されています。
愛らしいエクステリアはシーサーをモチーフにしたもの。荷室は水や汚れに強いラバーマットを採用。長さ400-610mm、幅660mmのスペースが確保されているので、機内持ち込み可能なスーツケースを2つ積むこともできます。インテリアはメーター類をシンプルに配置。明るいカラーリングは運転が楽しくなりそうです。
■トヨタ IMV Origin|未完成のまま出荷される次世代パーソナルモビリティ
トヨタが展示した「IMV Origin」は見た感じトラックですが、どこか不自然。中途半端というか、まだ出来上がっていない感じがするというか…。そう。実はこのクルマ、まだ完全には出来上がっていない状態で出荷するという斬新なコンセプトなのです。
クルマはどんなものを積むか、どのくらいの量を積むか、あるいは荷物ではなく人を乗せるのかで求める姿は変わってくるもの。だから使う人が用途に応じた形に仕上げる。そう考えたと言います。
このアイデアは開発者がアフリカの農村に住む人々と話す中で生まれたもの。未完成のまま出荷して現地で組み立てることで、そこに新たな雇用を生む。さらにアフリカの荒れた路面でも走れる走破性を与え、故障した際も現地の設備で修理ができる。このようなコンセプトがシンプルでタフなイメージを生み出しているのでしょう。
■ヤマハ TRICERA proto|かつてない操作感を味わえる
まるでフォーミュラカーのようなイメージのフルオープンEVが「TRICERA proto」。最大の特徴は前2輪、後ろ1輪の3輪構造であることです。構造上、操縦は一般的なクルマに比べると複雑になるそうですが、それを習得していくのも一つの楽しみになると言います。
コーナリング時は前輪だけでなく後輪も操舵される3輪手動操舵(3WS)を採用。これは間違いなくこれまで体験したことがないコーナリング感覚を味わえるマシンです。後輪は同位相だけでなく逆位相にも動きます。逆位相に動いたときは最小回転半径が驚くほど小さくなるため、強烈なコーナリングを味わえるはず。この操作はステアリングとステアリングに付いたパドルシフトで行ないます。ちなみに後輪の操舵はオートモードをチョイスすることもできます。
動力はモーターですが、走行音をチューニング&調律するサウンドデバイス「αlive AD」を搭載して操縦に没入する高揚感を演出。音づくりはヤマハの真骨頂だけに期待大!
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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