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プロが選んだ愛用イヤホン&ヘッドホンは何だろう? 男気啓蒙アーティスト・掟ポルシェの相棒とは

【ようこそ、オーディオの“沼”へ】

世の中にはさまざまなイヤホン&ヘッドホンが溢れ返っています。技術やデザインは日々更新され、その選択肢は最早無限に等しいと言っても過言ではありません。これから新しく購入しようと思った際、何を選ぶべきか悩む人も多いはずです。そこでひとつの指標として、音楽のプロ=アーティストたちに取材を敢行しました。果たして彼らは何を愛用し、そしてなぜそのアイテムを使っているのでしょうか。今回お話を伺ったのは掟ポルシェさん。イヤホン・ヘッドホンについて、さらに自身の音楽のルーツについて語ってもらいました。

■長時間のリスニングでも疲れないモノが良い

掟ポルシェさん/5月3日生まれ、北海道出身。ニュー・ウェイヴバンド「ロマンポルシェ。」のVo.&説教担当。ひとり打ち込みデスメタルソロプロジェクト「ド・ロドロシテル」としても活動。DJやコラム執筆、司会、俳優・声優などその活躍は多岐にわたる。X:@okiteporsche、YouTube:@掟ポルシェチャンネル、公式HP:https://ginrame.com/、掟ポルシェと日下ゆにの結婚相談所「縁むすび セキレイパートナーズ

日本のニュー・ウェイヴバンド「ロマンポルシェ。」のVo.&説教担当、そしてデスメタルソロプロジェクト「ド・ロドロシテル」として音楽制作やライブなど精力的に活動し続ける掟ポルシェさん。ジャンルを問わずさまざまな偏愛する音楽を聴く掟さんが愛用しているヘッドホンは何なのか、そしてなぜニュー・ウェイヴバンドをやるに至ったかなどインタビューしてきました。

――掟ポルシェさんと言えばニュー・ウェイヴバンドやデスメタルプロジェクト、DJなど幅広い音楽活動をされていますが、愛用されているヘッドホンのお話から聞かせてください。

掟ポルシェ(以下、掟):今、使っているのはオーディオテクニカの「ATH-M20x」です。オーディオテクニカの前は、20年程ソニーのDJ用ヘッドホンをリスニング用としても使っていました。2000年代頭くらいからアイドル歌謡曲のCDを使ったDJをしているんですけど、音のバランスが良く、基本的にどの帯域もフラットに聴こえるのでそれが良くて。

▲掟ポルシェさんが愛用するオーディオテクニカ「ATH-M20x」

――そんなに気に入っていたのにソニーからオーディオテクニカに買い替えた理由は何でしょう?

:ひとつ大きな欠点があって。筐体がプラスチック製でイヤーレシーバーを支えるヘッドバンドが致命的に脆くて必ず割れてしまうんです。2年に1回は同じ部分が割れて買い替えて、中古も含めて10個くらいは買ったのかな。で、もう20年くらい前のモノなので生産・販売が終了になってしまい…。音はすごく好みだったんですけど、さすがにないモノは買えないということで、今の「ATH-M20x」になりました。

一応、家電量販店まで行って、いろいろとリスニングしてみたんです。「カーカス」(イギリスのデスメタルバンド)っていう1番好きなバンドのよく聴いている曲でね。あまりにも聴いているので、試した瞬間にどの帯域が出ている・出ていないというのが1発でわかるんです。

それで展示してある全部のヘッドホンで聴き比べて。高価格帯のモノになると音は良いんですけど、今度は逆に高域が豊かになりすぎてちょっと気持ち悪く感じるんですよ。情報量が多すぎて疲れるというか。やっぱり長時間のリスニングで疲れないのが良いと思うんですけど、オーディオテクニカの「ATH-M20x」は価格も含めてちょうど良かったんですよね。買った当初はDJでも使ってました。

――オーディオテクニカのほかの製品と比べて何が良かったのでしょう?

:高価格帯のモノだと上の帯域が出すぎな気がしましたし、逆に安価なモノだとローが出すぎるんですよ。HIP-HOPとかには良いんでしょうけど。「ATH-M20x」はローもハイも出すぎないし、原音が分離しすぎずまとまったかたちで聴こえてくる。それが1番良かったんですよね。

――かなりこだわって選ばれたんですね。普段はどういったシーンで使用されますか?

:移動中や自宅など、音楽を聴くときはいつも使っています。もちろん楽曲制作のときも使いますけどね。以前は自分の部屋でスピーカーを使用していたんです。夜でも結構なボリュームでデスメタルを聴いていました。5年程前、東京都下の古い一軒家に引っ越しまして、ある日の夜遅く、いつものように「カーカス」を聴いていたんですけど、翌朝自宅の庭の扉が開いていて。それで自分の部屋の真ん前に何かをアピールするかのように強い殺虫剤、劇薬ですよね、それが置いてあって。これは何だろう? と思ったんですけど、最初は気にしていませんでした。

でも、また違う日の夜に「カーカス」を聴いていた翌朝、今度は庭の石灯篭に注射器が置いてある。しかも使用済みの。これってもしかすると自分が聴いていた音楽がうるさくて、そのクレームというか注意するために嫌がらせでやられているんじゃないか? と思い至って音楽をかけた状態で外に出てみたんです。そしたら、もう外で音楽流しているんじゃないかってくらいとんでもない音量で漏れていて。古い一軒家で壁に防音材が一切入っていなかったんでしょうね。これは近所の人たち怒るわ、と思って。それから自宅ではずっとこのヘッドホンを使うようにしています。

――そんなに防音性ゼロな家だったんですね。

:そう、防音性ゼロ(笑)。まあ、もう引っ越すんで。でも引っ越し先もマンションなので、このヘッドホンで音楽を聴く生活がこれからも続くと思います。本当はスピーカーで聴ければ良いんですが…。

■さまざまな音楽を聴くようになったのは、あるアーティストがきっかけ

――スピーカーで聴く日が来ることを祈っています(笑)。掟さんはかなりこだわってヘッドホンを探したようですが、どう選べば良いかアドバイスはありますか?

:そうですね…。ヘッドホンって難しいのが“慣れていく”みたいなところもあると思うんです。ちょっと良いかもって思ったら長く使えば使うほど耳に馴染んでくるというか。例えば、「エアポッズ」とパナソニックを比べてみると全然違うわけですよ。各メーカー、ほかのところと差別化しようとしているでしょうし。だから、こういうのって正解はないんじゃないかとも思うんですよね。みなさん一人ひとり耳が全然違うだろうし、ということは当然鳴っている音楽も違うように聴こえるわけで。答えになっていないと思いますが、試してみて自分が直感的に良いと思ったものを使うのがベターだと思いますよ。

――なるほど。少し話が戻るのですが、先程「カーカス」が好きだと仰っていました。そこからなぜご自身はニュー・ウェイヴのユニットを作ろうと思ったのでしょうか?

:ずっと高校時代にニュー・ウェイヴというか、1980年代の海外とか日本の変な音楽を聴いていて。気持ちの悪い音階のニュー・ウェイヴミュージックの方がもともと好きなんですよ。ヘヴィメタルは高校卒業するぐらいまでまったく聴いていなかったし、それどころかもともとは好きじゃないんです。メタルを聴いている友達を少しバカにしていましたし。むさ苦しいおっさんが金切り声出しているのが好きになれなくて。

▲耳のプラスチックのところがどのヘッドホンを使っていても壊れてしまうそう

――そこからどうして好きになったんですか?

:子供の頃に映画『ゾンビ』を観て、そのサントラをやっていた「ゴブリン」というイタリアのプログレッシブ・ロックバンドの薄気味悪い音楽が大好きになって。それがきっかけになったのか、自分が好きになるものは明るくポップな音楽ではなく、気持ちの悪いメロディやディストーションが利いたかなり潰れた音楽だった。そういうものがニュー・ウェイヴの中にもたくさんあったし、あとはポジティブ・パンクって顔面を白塗りにして歌ったりするジャンルの音楽とかが高校時代好きでよく聴いていて。それで当時読んでいた音楽雑誌「フールズメイト」の編集長が自身でバンドを始めたんです、「YBO²」っていう。それがノイズ的な音楽とパンクを足したみたいな感じでとても好みだったんですよね。

そういった気持ちの悪いメロディのバンドを好んで聴いていたんですけど、1989年に「カーカス」のセカンドアルバムが出たんです。そのタイミングで友達の家で聴かせてもらって、「YBO²」みたいな音楽で良いなと思うようになって。で、「カーカス」というのがアルバムごとに音楽性が変わる人たちだったんですよね。最初聴いたときはグラインドコアだったんですけど、どんどん音楽性が変わっていって1993年の4thアルバム「Heartwork」では、メロディック・デスメタルと言われるかなりヘヴィメタル要素の強い音楽になっていきました。なのでメタルが好きになったというか、「カーカス」がメタルになったので行きがかり上メタルファンになってしまったんですね。

――それではメタルから入ったわけではなく、「カーカス」が好きで彼らの変遷によって聴く音楽ジャンルも半ば強制的に変えられたという感じなんですね。

:そうですね。自分は「カーカス」というバンド自体のファンなので。最初は戸惑ったものの、3日くらい聴いているとむしろこれが1番良いんじゃないか、みたいに思えてきて。ファンというのは不思議ですよね。それで上京後、普通にTVでメタルの番組を観るようになって、メタルも好んで聴くようになっていったわけです。

――それでご自身でもメタルプロジェクト「ド・ロドロシテル」を始めたと。

:はい。自分の場合、ジャンル全体が好きって感じではないですね。どの音楽も。ニュー・ウェイヴもそうで、ニュー・ウェイヴだったら何でも良いかと言うとそうではなくて。そもそもニュー・ウェイヴ自体がすごく曖昧で、80年代にちょっと変わったことをやっていれば何でもニュー・ウェイヴだとか、シンセサイザーが入っていれば、とかいろいろと言われているんですけど、厳密な定義って存在しない音楽なんです。なのでジャンル丸ごと好きっていうのはなくて、自分が好きなバンドが各ジャンルにひとつはある、という感じですね。逆にそういう感じなのでいろんなジャンルが聴けるというか。

――それでニュー・ウェイヴのみならずメタル、そしてJ-POPまで、聴く音楽が幅広いんですね。最後に、掟さんがイヤホン・ヘッドホンに求めることとは何でしょうか?

:堅牢性ですね。やっぱ壊れにくさが1番。あとはDJ用で買うのであればカールコードであること。カールコードじゃないとやっぱり邪魔ですね。今日持ってきたオーディオテクニカも一時期DJでも使用していたのですが、やっぱりそれには向いていないというか。DJブースや会場内を動き回る自分のDJスタイルだと、足で踏んじゃうし危なくてしょうがない。

あとはパーツに金属をやたらと使っていると、音も金属的になるのでそれも個人的には避けたいですね。堅牢性は欲しいけど、音質にいらない変化が加わるのは避けたい。だからヘッドホンの筐体がプラスチックでできているのって、それなりに理由があるんだなと思っていて。壊れにくい強化プラスチック製ヘッドホンがあればそれがベストなんですけど、そうなるとお値段もお高くなるでしょうし。そういう意味でもお手頃価格の「ATH-M20x」が自分にはあっているんだと思います。

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<文/手柴太一(GoodsPress Web) 写真/高橋絵里奈>

 

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