【達人のプラモ術】
ミニアート
「1/48 ユンカースF13水上飛行機(初期型)」
前回の達人のプラモ術では、1960年代にジェット戦闘機として初のマッハ2を達成しアメリカをはじめ航空自衛隊でも採用された超音速戦闘機「F-104スターファイター」を紹介しました。今回は、そこから遡ること40年。1920年代にヨーロッパの空を飛んでいた世界初の全金属製旅客機「ユンカースF13」を紹介します。
ミニアート
「1/48 ユンカースF13水上飛行機(初期型)」(9900円)
■ユンカースF13とは
飛行機好きな人であれば、ユンカース(Junkers)の名は聞いたことがあると思います。メッサーシュミットやハインケル、フォッケウルフなど数あるドイツ航空機メーカーの中でも、第二次世界大戦時に最も多くの航空機を製造したメーカーとして知られています。大戦初期で活躍した有名な急降下爆撃機「Ju-87スツーカ」もユンカースが開発した機体でしたね。
同社は1917年に設立された航空機メーカーで、第一次世界大戦(1914~1918年)で、世界初の全金属製航空機をはじめて実用化したメーカーでもありました。
ライト兄弟が初の有人動力飛行を実現したのが1903年。その後、第一次世界大戦で大きく進歩した飛行機ですが、1920年代はまだまだ木製や布張りの翼が2枚ある複葉機が当たり前だった時代、当時新素材だったジュラルミンを使った全金属製の機体を実用化したという先進の航空機メーカーだったのです。
ユンカース「F13」は、1919年にオーストリア、ポーランド、アメリカから、さらに翌年にはSCADTA(コロンビア)、アメリカ合衆国郵政省からも注文を受け作られました。全金属製、翼は支持架を持たない片持ち式低翼単葉機となっていて、当時としては実に先進的な機体であり、ユンカース社初の商用航空機でもありました。
機体は同社独特かつお得意の波形ジュラルミン製応力外皮(悪いけど見た目はトタン板にしかみえない)を鋼管製パイプに張り付けた構造で、この波板が強度確保に貢献していたんですね。
乗客定員は最大4人で、胴体側面に窓とドアが設けてあり、密閉された暖房付きキャビン、さらに当時としては珍しい乗客用のシートベルトも備えられていたそうです。半開放式の操縦席(寒そうです)は隔壁でキャビンと分けられています。
「F13」は本来、尾橇(びぞり=胴体後部下面にある部材)付き固定式降着装置を備えた陸上機ですが、派生型の中にはフロートを装備した水上機仕様、スキーを履いた寒冷地仕様も作られていました。
ベストセラーとなった「F13」は13年間で300機以上生産され、当時フランス、アメリカ、アフガニスタン、オーストリア、ブラジルをはじめ世界23カ国で使用されています。ちなみに日本にも水上機仕様が2機が輸入されています。本国ドイツではルフトハンザが43の路線で110機を運行、民間航空路線で1938年まで使われ続けた傑作旅客機でもあります。
ユンカースF13初期型
乗員:2名
乗客数:4名
全長:9.59 m
全幅:14.8 m
全高:3.50 m
※機体サイズは陸上機仕様
エンジン:1 × e
エンジン出力:160 hp
最高速度:173 km/h
航続距離:1,400 km
■ミニアート「F13」について
今回製作したユンカース「F13」はミニアートが昨年発売したものです。ミニアートはウクライナの模型メーカーで、日本国内での知名度も高くAFV、ミリタリーフィギュア、航空機モデルなど幅広く展開しています。
最初に発売されたのは陸上機仕様で、フロートを装備した水上機仕様は最近発売されました。達人はこの手の機体が好きということもあり、陸上機使用は発売時にゲットしていたのですが、水上機仕様はどうしようかと購入を悩んでいたら、あっという間に模型店の店頭から消えてしまいました(泣)。しかしありがたいことに10月の全日本模型ホビーショー会場にて入手することができました。
■キットの製作
箱を開けると、みっちりとパーツが詰まっています。ミニアートのキットの常で、細かくパーツが細分化されており…ぶっちゃけバラバラな印象のキットです。そして「F13」は、実機解説でも書いたように機体外板が特徴的なトタン板…もとい波板構造を採用しています。それをこのキットは、シャープで細かいピッチで再現されているんです。それはいいのですが、どう考えても外板の合わせ目、言うところの接着線が研磨できない(研磨したら波板のモールドが消えてしまう)んですよ。
しかしいざ製作を開始したら、それは杞憂でした。胴体は分割が4面合わせで、接着線が目立たない角にくるようになっており、主翼はパーツ精度がパチピタなので前縁の接着線などほとんど目立ちません。要は研磨しなくてOKなんですね。いやミニアートさまさまです。
エンジンやキャビンは細部までディテールが再現されており、キャビン内部の照明やカーテンまで別バーツになっています。現代の旅客機と比べるべくもないのですが、飛行機が木製の機体に布張り翼の時代に暖房付きのキャビンを採用していた「F13」、乗り心地は最高だったんでしょう。
キット製作にはストレスがないので塗装もサクサクと進められます。特にエンジンはあとからカウルを外して見られるので、丁重に塗装しています。ただしこのエンジンはディテールがよくできているものの、パーツが皆小さく、パーツ単位で塗装して組むのは老眼モデラーには厳しいんですよ。なので組み上げてから塗装しています。
キャビン内部もよくできていますが、完成するとほとんど見えなくなってしまう…。飛行機モデルのお約束ですね。反面半開放型の操縦席は完成後もよく見えるので、丁重に塗り分けてます。欲を言えば操縦士のフィギュア、それにキャビンに乗る女性のフィギュアなんかも欲しくなります。
製作で苦労したのは、水上機仕様のフロートを支える支柱です。細く接着面積が少ないので、正しく組み上げるのになかなかに手間がかかります。完成するとしっかり剛性は出るんですけどね。
■塗装は今回もナチュラルメタル…無塗装のジュラルミン仕上げ
機体は上面が無塗装のジュラルミン…。そう前回製作した「F-104」と同じナチュラルメタルです。なので今回はMr.カラーの「Mr.スーパーメタリック2 スーパージュラルミン」で仕上げています。下地はグレーサーフェイサーとしていて、あえて抑揚をつけていません。機体下面から機首にかけてはセミグロスブラックで塗装。旅客機ということもあり、ウエザリングを入れずに仕上げています。
■古い良き時代の空の旅のロマンを感じさせてくれる良キット
ミニアートのユンカース「F13」は、何事も先入観を持つのはイカンということを改めて教えてくれました。
先にも書きましたが、陸上機仕様の「F13」は発売時に購入していたのです。しかしながら波板構造を再現したパーツを見て、これを組むのは無理だと思い込んで、そっと箱を閉めて積みプラになっていたんですね。
今回の水上機仕様はどうしても作りたくて手をつけたワケですが、いざ組んでみたら、難物に見えた波板構造もサクサクと問題なく組めてしまったんですねぇ。海外メーカーのキットは地雷があるという思い込みはダメですね(まぁたまにマジ地雷もありますけどね)。反省しきりです。本キットはパーツの精度も高く、組みやすく本当に良いキットだと思います。
第一次世界大戦後の平和になったヨーロッパ、アメリカそして日本の空も飛んでいた世界初の全金属製旅客機。そんなロマンを感じさせてくれるミニアートの「F13」です。正直、陸上機仕様も作ってみたくなりました。
さて次回はどんなプラモデルを作りましょう?
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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