2025年1月30日に発表されるやいなや5万台の注文が殺到して、わずか4日間で受注停止に陥ったスズキ ジムニーノマド。私は1月末にオーダーを入れたのですが、平日の午前中なのにディーラーには商談のための列ができているのを見てとても驚きました。
ご承知のようにノマドはインドで生産されて日本に輸入されるモデル。当初は月1200台持ってくる計画でしたが、あまりの反響にスズキは体制を変更して月3300台に増産。そして現在、急ピッチで納車が進んでいます。
そしてオーダーから10ヵ月半。私のもとにも11月中旬にノマドがやってきました! 実はノマドの前には軽のジムニーに乗っていて、こちらは納車までに1年半を要したので、とても早く納車された気分です。
納車から1ヵ月半。1600kmほど走って感じるノマドならではの魅力をお届けします。
■5ドア化は乗降性アップ以外にもメリットがある
2018年7月のデビューと同時に爆発的なヒットモデルとなったJB64型ジムニー&JB74型ジムニーシエラ。1970年に初代が誕生してから頑なに守り続けてきた圧倒的な悪路走破性に加え、四角いボディに丸目のライトというタフでありながらノスタルジックな雰囲気もあるデザインが大受け。歴代モデルからは想像もできないほど女性オーナーが多いのも特徴で、「ジムニー女子」という言葉まで生まれました。
そんなジムニーですが、軽規格でFRベースのパートタイム4WDを採用しているためエンジンルームが大きく、その分キャビンはミニマムスペースになります。普通車のシエラもボディは軽自動車と共通なので、スペースは最小限。ヒットモデルとなったことでジムニーやシエラを選ぶ家族も増えましたが、決して使い勝手がいいモデルとは言えません。だからこそ5ドア化を熱望する声が大きくなったのです。
実はジムニーの5ドア化を望む声は古くからあったそう。しかしコストを考えると難しく(ジムニーは息の長いモデルですが大量に売れる商品ではなかったため)、5ドア化は実現しませんでした。
しかしJB64型ジムニーとJB74型シエラが異例の大ヒットモデルとなったことで、「これならいける!」と5ドアモデルの開発が実現したという背景があるそうです。
そんなノマドの購入を考えている人がもっとも気になるのは後席の居住性なのは言うまでもありません。ジムニー&シエラも後席はあるものの、3ドアで乗降性は決して良くなく、シートもあくまで非常用という感じ。長距離移動はかなりキツイです。
一方ノマドは、リアドアがついて乗降性が良くなっただけでなく、座面と背もたれの厚みが与えられたシートを装備。長距離移動が楽になったのはもちろん、チャイルドシートに子どもを乗せやすくなりました。
納車後、東京から千葉と栃木まで3人でゴルフに行きましたが、後席に座った人に話を聞くと「全然辛くないよ。超快適!」とのこと。しかもノマドは後席に人が日常的に座ることを想定して防音対策もしっかり行われています。そのため高速道路を走りながら後席の人と普通に話をすることもできます。これもファミリーユーザーにとって嬉しい部分でしょう。
後席への乗降性を高めるために後席の座面端をカットしてスペースが広げられています。ただ、最低地上高が高い上にラダーフレームの上にボディが載る構造なので、フロア高はかなり高くなります。ディーラーオプションではサイドステップの用意もなく(社外品ではサイドステップがいくつか販売されています)、子どもや背が低い女性は乗り降りにやや苦労するかもしれません。ゴルフに同行した女性も「よいしょ」という感じで車内に入っていました。
ノマドは5ドアになったことで、ジムニー&シエラよりもフロントのドアが10cmほど短くなりました。これがとても便利! 言うまでもなく、ドアが大きいとその分開けるのに広いスペースが必要になります。隣にクルマが止まっているような狭い場所だとドアをあまり開けることができず、乗るのに不便を感じていました。ドアが小さなノマドは乗り降りに不便を感じるシーンが少ないのでストレスが軽減しています。これはコンビニやSAの駐車場などはもちろん、アウトドアでも山道で乗り降りする際に威力を発揮します。
また、車内空間が狭く気密性が高いJB64型ジムニーとJB74型ジムニーシエラには、「半ドア問題」が生じています。ドアを閉めた時に車内の空気がほとんど抜けず、かなり力を入れてドアを閉めないと半ドアになってしまうのです。ノマドは車内空間が広がりドアも小さくなっているので、この問題がほぼ解消しています。
■荷室の大きな段差は思ったほど不便じゃない
ノマドをオーダーする際に気になっていたこと。それが荷室空間でした。
ホイールベースが延長されてボディが拡大したとはいえ、全長3890×全幅1645×全高1725mmというミニマムサイズのSUV。荷室は決して広くはありません。
そのため後席を格納して荷物を積む機会が多いことが予想されたのですが、後席の座面と背もたれを厚くしたノマドは後席格納時に床面に10cmほどの段差ができてしまうのです。これが不便かどうかは使ってみないとわからない。スズキはディーラーオプションで段差を埋める(荷室の床面を高くする)ラゲッジボックスを用意しています。実際に使ってあまりにも不便だったらラゲッジボックスを導入しようと考えました。
しかし今のところ、大きな不便は感じていません。ゴルフバッグも後席片側を格納すれば3セット積めます(奥行きはギリギリですが)。むしろラゲッジボックスを積むことで荷室のフロア高が高くなってしまい、特に重い荷物を積む際に苦労しそうです。テントやクーラーボックス、コンテナなどを積んでキャンプに行くとまた評価は変わってくると思いますが、まずは素の状態で使ってみて、自分が積みたい荷物が段差に干渉するようならラゲッジボックスの導入を考えても十分に間に合うはずです。
ジムニーシリーズは軽自動車のジムニーと普通車のシエラでボディは基本的に共有されています。ノマドも全長を延長してその分室内長も広げられていますが、室内幅と室内高は軽のジムニーと同じ(だから定員は4名です)。インパネデザインやスイッチ・メーター類などの配置もジムニーと変わりません。そのため、ジムニーやシエラからの乗り換えでもまったく違和感がないのと同時に、すでに数多く販売されているジムニーに合わせて作られた社外パーツをそのまま使えます。
車内が狭いジムニーにはドリンクホルダー問題(運転席の後ろに配置されているので使いづらい)とスマホ問題(ちょうどいい置き場がない)が存在するため、さまざまなアフターパーツが販売されています。
私はGoods Press Webの記事で複数を試した結果、ドリンクホルダーはAPIO、スマホホルダーは槌屋ヤックのものがベストという結論に至りました。ノマドにもこのドリンクホルダーとスマホホルダーを装着。スッキリしたデザインなのに便利に使えて気に入っています。
■ジムニーの特殊性が適度に抑えられて日常使いがかなり楽に
ノマドのエンジンはシエラと同じ1460ccのK15B型。最高出力はシエラより1kWだけ大きい75kWで、最大トルクはどちらも130N・mになります。私はMTのノマドを購入したためAT車には乗っていません。以前乗っていたジムニーもMTだったので、MT同士の比較になります。
ジムニーに乗っていた約1年半は、ジムニー以外にもう一台「普通のクルマ」が手元にありました。そのため仕事で出かける際は「普通のクルマ」を使うことが多く、ジムニーはどちらかというと趣味的要素の強いクルマとして楽しんでいました。理由はジムニーのMT車の特殊な走りにあります。
言うまでもなくジムニーは、軽自動車でありながら屈強な悪路走破性を得るため、一般的なクルマとは違う設計がされています。有名なものではラダーフレーム構造に3リンクリジットアクスル式サスペンション、FRベースのパートタイム式4WDなどが挙げられますが、他にも1速:5.809、2速:3.433という強烈な変速比やボール・ナット式ステアリングなどがあります。
この変速比のために信号待ちからの発進では2速まで入れても20km/h出るか出ないかくらいしか前に進まず、常に素早いシフトアップが求められます。ボール・ナット式ステアリングはオフロードで路面の凹凸によるキックバックが少ないというメリットがあるものの、日常使いではどうしても遊びが大きくなり中立性に欠けるという特徴があります。しかもリジットアクスルならではのふらつきやすさもあります(JB23の頃に比べるとかなり改善されていると感じましたが)。そのため、高速道路で80km/hを超えてくるとふらつき感が顕著に現れます。だからいつも一番左の車線を80km/h程度で走っていました。
ノマドはシエラ同様に1.5Lエンジンを搭載。パワーに余裕がある分、変速比はジムニーより抑えめに設計されています。普通に変速していっても自然に周囲のクルマの流れに乗れるため、日常でのストレスはほとんど感じません。
ボール・ナットとリジットアクスルという機構はジムニー同様なものの、オーバーフェンダーを装着してトレッドが広げられ、ホイールベースも拡大されています。さらに増加した車重を受け止めるためにサスペンションチューニングもシエラとは変更されていて、これらがうまく作用し、高速走行時の安定感がジムニーよりも格段にアップしています。
とはいえ100km/h程度で高速道路を走っていると常に修正舵を当てる必要があるため、納車直後は運転を終えると身体の緊張を感じていたのですが、今は修正舵の当て感に慣れたのか、ロングドライブでもそれほど疲れを感じていません。
MTの操作も、ジムニーの時はそれなりにふかしてあげてから繋いでいましたが、ノマドはパワーがある分ジムニーよりも発進がかなり楽なので、日常使いでもMTでダルさを感じていません。通勤や買物などにも使う人に相談された場合、ジムニーなら「ATのほうが楽だと思うよ」と言いますが、ノマドは「MTでもそこまで大変じゃないよ」と話すと思います。
もちろんノマドは楽といっても、あくまでジムニーと比べた時の話。基本的にはオフロード走行に特化した設計なので、高速走行などはどちらかというと不得意分野になると思います。
もし家族でロングドライブを超快適に楽しめるものを探しているなら、クロスオーバータイプのコンパクトSUVを選ぶことをおすすめします。でもオフローダーとしての色を残しつつネガティブな部分が適度に抑えられているので、ジムニーシリーズならではの「非日常感」を気軽に味わいながら、日常でも便利に使うことができる。ノマドはジムニーシリーズの中でもっともバランスのいいモデルだと感じています。これは長い付き合いになりそうです。
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
【関連記事】
◆待望の5ドアがついに!日常での使い心地がアップして大ヒット間違いなしの「ジムニー ノマド」の問題は、納期だけ!?
◆【専門店を直撃!】リーフスプリング時代のオールドジムニー、買うならどこに注意すべき?
◆【ジムニー納車!】「カーナビ」「ETC」「ドラレコ」「バックカメラ」新車購入時に迷いがちなカーグッズ選びレポート!
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/712310/
- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web