みなさん、「ミズノ」というブランド名を聞いてナニを思い浮かべますか?
やはり、野球やランニングなどのシューズやアパレル、スポーツ用具がメインになると思いますが…実は、野球場やスポーツ施設などの人工芝を開発してるんですよ。知っていました?
そんなワケで、今回は老舗スポーツメーカーとしてもおなじみのミズノが開発する人工芝にフォーカスして、開発担当の方に話を聞いてみました。
■意外と気にしたことのない人口芝ってどうなってる?
スポーツメーカー・ミズノの人工芝は、野球に関しては野球専用人工芝「MS CRAFT BASEBALL TURF」という商品を展開していて、プロアマ問わずのさまざまな野球場で展開しています。さらに昨今は、耐久性を高めた「MS CRAFT BASEBALL TURF-V」もリリース。
人工芝業界全体の市場でいうと3、4、5番手くらいらしいのですが、野球場に関してはトップシェア。プロ野球においても12球団の本拠地球場のうちの6球場で使用されているということで、そちらもトップシェアだとか。
もちろん野球以外の室内外競技場においても展開をしていて、それぞれのスポーツに特化した人工芝なんかもあったりするんですよ。
人工芝って、実際に手にとって触れる機会は人によって少ないかもしれませんが、あの野球場だったり、アソコの競技場だったり、テレビやネットなどのメディアを通じて、目には触れている可能性は高いカモなんですよね。
ちなみに、人工芝ってパイル(芝葉)、パイルを固定するための土台であるバックシート、充填材と呼ばれるゴムチップ、下地材の4つの構成要素から成り立っています。充填材であるゴムチップ(Field Chip R(Resin))は、日本国内で製造していて、ゴム臭がなく、温度抑制効果という特長があるといいます。
2025年には、ミズノとカネカによって、カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」を使用した、屋内型人工芝葉と充填材の「生分解性人工芝シリーズ」を共同開発したとのこと。「Green Planet」は、95%以上バイオマス由来の生分解性バイオポリマーを使用しているため、従来の石油由来の充填材や人工芝葉に比べ、石油使用量を大幅に削減でき、環境に配慮しているのだそう。これはスポーツ用途としては世界初の試みなんだとか。充填材も、環境に配慮した成分を使用したものも開発しています。
そんな感じで、昨今の環境問題にも対応しはじめている人工芝。でも、人工芝って、名前は知っているけど、いったいどんなモノなの? そしてミズノはどのように人工芝を開発し、どんな特徴を持っているのか、そして人工芝の未来のカタチとは?
と、いうワケで、今回はミズノ コーポレーション(Mizuno Corporation)内において人工芝開発をおこなっている、グローバルイクイップメントプロダクト部 用具開発課の太田昂貴(おおた こうき)さんに、ミズノの人工芝におけるアレコレを聞いてみました。
■スポーツメーカーとしての人工芝のメリットとは?
─ ミズノとして、人工芝の開発をはじめた経緯を教えてください。
太田さん 弊社で人工芝を開発しはじめたのはごく最近のことでして、他メーカーさんに比べるとだいぶ後追いなんですよ。もともとのスタートとしては、他社さんの人工芝を仕入れて販売する代理店としての経緯があります。
─ 自社で開発しはじめた理由は、やはりスポーツメーカーとして“場所をつくる"“ベースをつくる"みたいな部分ですか。
太田さん おっしゃるとおりで、用具やシューズ、アパレルだけではなく、「スポーツする場も提供します」という感じですね。事業部でいうとスポーツファシリティという部署なのですが、体育館やグランドなどの施設管理なども行なっていて、その中のひとつの事業としての人工芝開発なんです。
─ カタログには、スポーツの競技種類などの用途によって思った以上に種類がたくさんあるんですね。ミズノの人工芝の特徴を教えてください。
太田さん 野球用、サッカー用、ラグビー用など、もちろん他メーカーさんにも用途に分けた人工芝があります。人工芝業界の話で言うと、弊社は用具などもつくっているスポーツ用品メーカーですので、社内に各スポーツの経験者が多いんですね。だから、そこでヒアリングも行えますし、各スポーツに特化した評価ができる点が強みだと考えています。
製品でいうと、パイルと呼ばれる芝葉の素材にパーマが掛かっている(スパイラルしている)アイテムがあります。
─ どんなメリットがあるんですか。
太田さん これは捲縮加工(けんしゅくかこう)というものなのですが、例えば、野球ボールがバウンドしたときにハネにくいという特性があります。直毛の人工芝だとめちゃくちゃハネてしまうんですよね。
─ なるほど。
太田さん あとは、美観の部分でいうと、直毛パイルだと選手の動きによって、いろんな方向に倒れてしまって、これをけっこう引いて見てみると、芝葉のカラーがまだらになってしまうんですよ。しかし、捲縮加工をかけることによってムラがなく一様に見えるようになります。
─ サッカーだったらサッカー専用があったり、競技によってさまざまな人工芝の種類があるようですが、それぞれどのように開発されているのですか。
太田さん 例えば、サッカーならボールの転がりを重視したり、ラグビーならスクラムを組んだりするとけっこう地面に横向きの方向の荷重が掛かったりするからそれに耐えられる仕様とか。それにラグビーはよく人が倒れますから、倒れても安全なものにしたり。スポーツごとによった特性をカバーできるように開発しているんです。
─ 例えば、野球とサッカーでは芝葉(パイル)において、どのような違いを出しているのでしょう。
太田さん 開発においてですが、スポーツの特性から商品開発に向けているんですよね。つまり、野球では「選手がどういう動きするのか?」とか、「ボールがどうバウンドするのか?」というのが一番最初の部分。ちなみに、野球においてはプロ野球選手の方に商品を使っていただいたりしているのですが、そこでヒアリングを行ったりもしています。
各スポーツにおいては、他のスポーツとの違いをよく見るようにしていますね。例えばラグビーなら、「倒れて脳しんとう起こしている選手が多いよね」とか。
─ ケガとか、そういう部分が中心になっているということでしょうか。
太田さん 特性の違いを出すには、充填材といって砂や弾性材の厚みの比率を変えたり、パイルの密度や長さを変えて、そのスポーツに特化したものにしています。
─ 昔の人工芝って、転んだときやスライディングしたときに"擦れる"というイメージがありますが、現状はどんな状況なのでしょう。
太田さん 実はそれって、年代によってイメージがかなり違うみたいなんですよ。年齢が上の方ですと、擦過傷や服が溶けるなどのお話をされる方が多い。時代的にちょうど変換期だったようでして、いわゆる火傷しやすい人工芝を使用していた時代なんです。
もちろん場所にもよりますし、どのメーカーの人工芝かどうかにも大きな違いはあると思いますが。現在の人工芝が「絶対に火傷はしません!」と一概には言えませんが、現状は20年前よりは抑制する動きになっていますので、かなり緩和していると思います。ちなみに、サッカーのFIFA(国際サッカー連盟)においては、公認を出す際、試験のなかに火傷の試験が入っていたりしますよ。
─ やはりそこはメーカー側も危惧されていた点なんですね。ちなみに、人工芝というのはざっくり何でできているのですか?
太田さん パイルの部分は熱可塑性樹脂で、充填材にはゴムや砂等が入っています。
■開発から評価まで
─ 一般的なお話として、開発においてはどのくらいの時間を要するのでしょう。
太田さん 人工芝の「新商品を発売しました!」と発表してから現場に入るまでに、2年から3年くらいの時間がかかります。さらに、それが評価されるのが、だいたい10年経って張り替えになったときなんですね。
発売してからのスパンがかなり長いから発売には慎重になっています。例えば、現状使用されているプロ野球用「MS CRAFT BASEBALL TURF」という人工芝は、完成したのが2012年くらいで、評価がされはじめているのが2020年くらいから。開発期間でいうと、2〜3年は掛かってるかと思います。開発期間ももちろん長いし、発売してから評価されるまでもとても長いんですよね。
─ 現状、カタログには野球専用の人工芝が2種類、「MS CRAFT BASEBALL TURF」と「MS CRAFT BASEBALL TURF-V」がありますが、これはどう違うのでしょうか?
太田さん 「V」の方は強度を上げているので、より長く使っていただけるというイメージを持っていただければと思います。
─ パイルの太さが400マイクロメートルとなっていますが、硬いということでしょうか?
太田さん おっしゃるとおり多少硬くなります。通常の「MS CRAFT BASEBALL TURF」が280マイクロメートルですが、それを400マイクロメートルまで上げています。
─ つまりボールのハネ具合だったりが変わってくる?
太田さん 基本的には、手触りが硬い感じがしますが、カールの大きさや充填材の仕様を変えたりして、なるべく現状と変わらない特性にはなっています。ちなみに、400マイクロメートルにしたという経緯に関しては、やはり昨今言われている環境問題が大きいんですね。使用によってはパイルがちぎれてしまうということが、どうしても起こってしまう。
そこで環境問題に対応するためにはやはりパイルを厚くする、厚みを上げることによってちぎれを抑制するという動きが、当時の各社さんの流れだったんですよ。ただ、厚くする代わりに硬くなるので、「それをどうするか?」という点に弊社は注力していました。
■人工芝の未来
─ ちょうど環境問題のお話が出てきましたが、例えば、今後どのような素材に変わるなどの予定はありますか?
太田さん 直近ですと、ミズノでは海洋で分解する樹脂、カネカ生分解性バイオポリマー「Green Planet」を使用した人工芝を、日本の総合化学メーカーであるカネカさんと共同開発しました。これは調べた限りでは世界初なんですよ。
─海で分解するというのは、つまり微生物が食べられる素材になっているということですか?
太田さん そうです。最近、大手コーヒーショップのストローも作っていたりしまして、それと同じ素材なんですよ。
現状、世の中の流れでいうと、まずヨーロッパにおいては2031年以降、人工芝の充填材において5mm以下の非生分解性の樹脂製チップが使用禁止になります。だから、ヨーロッパでは今後充填材のない人工芝、もしくは充填材として天然素材を入れるものになる方向になりそうです。
ただ日本やアメリカに関しては、まだ法律はできていないのですが、やはり環境対策は各社ともにしていかないといけない状況にはなってきていますので、その中で弊社が取り組んでいるのが、海に流れても問題がない素材に変えようと。そういう感じになっています。
─ 例えば、飲料系メーカーの「伊藤園」とで茶がらでつくったチップの共同開発のお話もそうですが、やはりそういった環境対策の流れみたいなもので共同開発的な案件は今後増えてくる、もしくは現状増えている状況なのでしょうか?
太田さん 伊藤園さんとは共同開発した茶がらを再利用した充填材を展開しましたが、人工芝の分野でいうと現状はまだまだこれからという感じかと思いますね。ただミズノとしての他のアイテム、例えばシューズや用具などでいうと、新幹線の廃棄アルミニウムを再利用した野球用バットなどがあります。
SDGsはもう流れというか、会社として取り組まないといけないCSR(Corporate Social Responsibility)としての部分はかなり大きくなっていまして、リサイクルやリユースだったり、石油由来のものをなくす、ということは重要なミッションになってきている状況ですよね。
─ ちなみに「Green Planet」の人工芝というのは、ナニからつくられているのでしょうか?
太田さん PHBH(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート))というカネカさんの開発したバイオプラスチック樹脂になりますが、基本的に微生物から抽出しているものですので、石油来の樹脂を使用していないという部分が一番のメリットなんです。
─ これは個人的妄想になるのですが、例えば人工芝内に二酸化炭素を吸収するような生物自身を組み込んだり、水分を含めるような素材を使用した人工芝で現状の砂漠化問題を抑制できる、なんてことは未来的には可能なのでしょうか。
太田さん 現状、そこまで大きな問題の部分は考えてはいないのですが、サステナブルやリユースという部分は、最終的にそういうところに繋がっていくのかなと思っています。ただ、それらがすぐに「砂漠化抑制になるか?」と言われたら、難しいとは言いたくないのですが。社内においては深刻な砂漠化対策みたいな大きな問題というよりもうすこし細かい部分に注力している状況です。
─ まずは現実的な部分ということですね。今後のミズノの人工芝としての展望を教えてください。
太田さん 現状、注力している部分は、「Green Planet」の屋外での展開に関してですね。太陽光や雨が当たらない屋内は問題がないことは確認できているのですが、屋外だとどうしても分解してしまうんですよ。
─ それは紫外線に弱いということですか?
太田さん いえ! 微生物が食べてしまうんですね。屋外に置くとどうしても微生物が繁殖してしまう。それをなんとかなくすというか、微生物が育たない環境をつくるしかないのですが、そんなことをやっています。
─そうすると「Green Planet」の耐久性が増すということですか?
太田さん 屋外の人工芝の方がシェアが多い状況ということもありますし、人工芝のパイルが抜けて、それが海まで行ってマイクロプラスティックになりうるという問題は、屋内より屋外の方が圧倒的に多いというのもあります。
だから、「Green Planet」の屋外での展開がゴール、環境問題への対策することがゴールではあるのですが、現状は屋外での耐久年数が足りていないというのが現状なんですよね。
─ 「Green Planet」の耐久性を上げることで屋外でも使用が可能であるものを作る、それが今後の展望という感じですか。
太田さん いま僕らがやろうとしているのはそこになっていますね。
─ ありがとうございました!
■人工芝と環境問題が密接だなんて
という感じで、老舗スポーツメーカー・ミズノの人工芝の深〜いおハナシ。そして、「Green Planet」を使用したサステナブルな人工芝への挑戦。人工芝と環境問題がつながっているって、知っていましたか?
昨日テレビで見たあのスポーツ、実際に応援に行ったあのスポーツ、はたまたライブに行ったあの会場、普段に敷かれている人工芝が、実はミズノの人工芝だったのかもしれませんよね。
しかも、それが昨今の環境問題に対応したものだったら…と思ったりして、なんだかニンマリしちゃうのはワタクシだけでしょうか。
>> ミズノ
<写真&文/カネコヒデシ(BonVoyage)>
カネコヒデシ|メディアディレクター、エディター&ライター、ジャーナリスト、DJ。編集プロダクション「BonVoyage」主宰。WEBマガジン「TYO magazine / トーキョーマガジン」編集長&発行人。ニッポンのいい音楽を紹介するプロジェクト「Japanese Soul」主宰。 バーチャルとリアル、楽しいモノゴトを提案する仕掛人。http://tyo-m.jp/
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