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「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」~株式会社 虎屋【GPジャーナル】

【GPジャーナル】

毎月、独自のイノベーションや情熱、モノづくりへのこだわりを持った“気になる企業”にズームアップ。その現場の裏側を深堀りします!

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【VOL.04】

<PICK UP>

株式会社 虎屋

設立年:室町時代後期
従業員数 860人

室町時代後期の京都で創業。明治2年(1869)、東京遷都にともない、京都の店はそのままに東京に進出。五世紀にわたり和菓子屋を営んでいる。また、後陽成天皇の御在位中より御所の御用を勤めていることでも知られる。

■「おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く」五世紀にわたる菓子づくり

日本人の生活文化に根づいた伝統的な菓子の総称にして身近な存在。それが〝和菓子〞。その中でも羊羹で知られる和菓子屋といえば、とらや(虎屋)だろう。まずは広報担当の龍さんの話から、“とらやと、とらやの羊羹が長きにわたり愛されてきた理由”を紐解いていくとしよう。

創業は室町時代後期。五世紀にもわたる長き歴史の中でさまざまな和菓子を生み出してきた同社。中でも、切り口の小豆を“夜の闇に咲く梅”に見立てて名付けられた「夜の梅」は、数多くの文人・著名人を虜にしてきた逸品。とらやの羊羹の代名詞として広く知られる。

「原材料は小豆、砂糖、寒天の3つのみと実にシンプルですが、だからこそ良質なものを厳選して使用しています。その上で小豆を煮る作業から、熟練の職人が炊きあがった羊羹の煉り具合を見極めて完成させるまでに3日間を要します。このように良質な原材料と職人の技術でお作りするとらやの羊羹は、しっかりとした食感と後味のよい甘さが特徴です」(龍さん)

実際に味わえば、いかに同社の菓子が手間暇かけて作られているかがわかるだろう。しかも、江戸時代前期の菓子見本帳に記録が残るほど古くから作り続けている菓子であっても、現状に満足することなく、日々試行錯誤を繰り返してアップデートしているという。とらやの菓子作りは、これからどこに向かっていくのだろうか?

「“おいしい和菓子を喜んで召し上がって頂く”。すべては弊社の経営理念である、この言葉に集約されると思います。これからも“今、とらやとして何ができるか”を考え、励んでまいりたいと思います」(龍さん)

「愚直に、誠実に」。とらやは常に前に向かって進んでいく。

虎屋 マーケティング部
龍 旭佳さん
“羊羹を世界へ”という同社の取り組みに惹かれて入社。主にプレスリリースの作成・配信、メディアの取材対応など、社内外含めた情報発信を担当する。

■創業は室町時代後期! 五世紀にも及ぶその歴史 をざっくりプレイバック

500年も歴史を重ねてきただけあって、その内容の濃さはもはや大河ドラマ級。すべてを詳細に語ることは難しいので要所のみをざっくりプレイバック。より深く知りたければ、同社公式サイト内の「歴史」をクリック。

室町時代後期…京都にて創業
1586年…後陽成天皇ご即位。御在位中から御所の御用を承る
1695年…年記のあるものとしては最も古いと考えられる菓子見本帳「御菓子之畫圖」を作成
1805年…店員が守るべき基本的な姿勢や考え方、行動規準を示した「掟書」を策定
1869年…東京遷都にともない、京都の店はそのままに、東京へと進出
1879年…銀座に店舗を開設、後に赤坂表(元赤坂1丁目)に移転する。
1927年…群馬県利根郡農会に白小豆の栽培を委託
1947年…銀座店を開店。以降、日本橋店、四条店、新丸ビル店を続々と開店 ※現在は店名変更や移転、閉店
1962年…現在の東武池袋本店に売店を設ける。デパート出店第一号
1964年…旧本社ビルを新築竣工。さらに喫茶を併設して赤坂本店を開店
1978年…おいしい和菓子を作るために良い水を求め、富士山麓の地に「御殿場工場」を建設
1980年…パリ店を開店
1999年…とらやホームページを開設する。翌年、とらやオンラインショップも開設
2018年…旧本社ビル、赤坂本店を低層の建物に改築し、赤坂店としてリニューアルオープン
2024年…銀座店および虎屋菓寮 銀座店を「TORAYA GINZA」としてリニューアルオープン

▲大正12年店頭にて

▲江戸時代につくられた菓子見本帳(菓子のデザイン帳)

■“餡”は和菓子の命 妥協を許さぬ味への追求

和菓子の命である“餡”の味を、長きにわたって追求し続けてきたとらや。そこで重要となるのがこだわりの原材料だ。代表的な4つを見せてもらった。

<こだわりの原材料にフォーカス>

和菓子の命“餡”作りから、とらやの菓子作りは始まる。厳選された原材料は、北海道十勝産の小豆、西表島産の黒砂糖、天然の糸寒天など。その中でも注目は、とらや独自品種の白小豆「福とら白」!

▼小豆

▼白小豆

▼黒砂糖

▼糸寒天

 

■とらやの定番商品といえば「羊羹」と「最中

原材料から製法までこだわりが詰まったとらやの餡。これを存分に味わえる定番商品が「羊羹」と「最中」だ。すべての同社商品の基本のキ。まずはこれを知っておくべし!

■とらやの羊羹の基本はこの3種類

とらやの羊羹は、シンプルに小豆などの豆、寒天、砂糖から作られる。煉り固めた「煉羊羹」、みずみずしい夏季限定の「水羊羹」、四季折々の情景や草花を映した季節限定の「季節の羊羹」が基本3種として並ぶ。

▼煉羊羹

▼水羊羹

▼季節の羊羹

■最中はこの3商品が定番としてラインアップ

濃厚でなめらかな餡と口どけの良い最中皮が渾然一体となった味わいで、羊羹に次ぐ人気を誇るのが最中。日本の代表的な花をかたどった意匠と縁起の良い菓銘(菓子の名前)もあって、贈答品としても人気が高い

▼「弥栄」(238円)

▼「御代の春 白」(238円)

▼「御代の春 紅」(238円)

■伝統を継承するだけではなく、“時代に合わせて進化し続ける”とらや

伝統を継承しつつも、時代に合わせてアップデートしてきたからこそ、とらやの今がある。期間限定のモダンな羊羹、パンに塗れるあんペースト、レアな地域限定羊羹は、まさに“進化し続けるとらや“の象徴といえよう。

*  *  *

これまでに約3000種類ほどの菓子の記録が残っているとらや。通年販売されている羊羹や最中の他に、パンとコーヒーにマッチする「あんペースト」や季節限定・地域限定といった商品も数多く存在しており、さまざまな味わいが楽しめる。

特に注目度が高いのが、期間限定で販売される“モダンな羊羹”たち。昨年もいちご、珈琲、新栗などが登場し、和菓子を食べ慣れていない若い世代からも支持を集めた。また毎年好評を博しているラムレーズンは今年も販売。

負けず劣らず面白いのが“レアな地域限定羊羹”。旅先で飛び込んだとらやの店舗。そこで見つけた他では手に入らない味となれば、お土産としてもらった際に、より一層美味しく感じられるに違いない。

このように時代の空気に合わせてアップデートし続けてきたとらやだが、どう新商品が開発されているのかも気になるところ。前頁で話を伺った龍さん曰く、「とらやでは毎年11月頃に翌年の干支・歌会始のお題にちなんだ菓子が販売されるのですが、それらは社内からアイデア(意匠・菓銘)を募集し、選ばれた作品が商品化されたものです」とのこと。

こういった柔軟な姿勢こそが、とらやの最大の強みなのである。

■期間限定で登場する“モダンな羊羹”

和菓子の世界では季節に合わせた素材を落とし込むことは珍しくないが、とらやではさらに現代感覚にマッチした“モダンな羊羹”を期間限定で販売している。一度買い逃したら、復活するまで味わえないという希少性もあって、新味が登場するたび話題に。ラムレーズン味も当然買い逃し厳禁。

▼小形羊羹「ラムレーズン」(346円) ※2026年1月15日~2月中旬販売

■過去(2025年)に販売された期間限定味

▼「いちご」

▼「珈琲」

▼「新栗」

■“あん”のある生活を提案トラヤあんスタンド

パリでも人気なだけあって“とらやの餡”は洋の食卓にも馴染む。なめらかなペーストは、トーストなどパンにたっぷりと塗ってかじりつくもよし、ヨーグルトなどの乳製品にかけてもオツなもの。

▼「あんペースト[こしあん]」(1080円)

▼「あんペースト[黒砂糖とメープルシロップ]」(1080円)

■こちらも必見! “レアな地域限定羊羹”

その土地に合わせた味や意匠もまた、和菓子にとって重要な要素だ。ここでは、とらやの屋号の虎にちなんで虎斑模様を意匠化した特製羊羹『千里の風』、京都にちなんだ原材料を使用した小形羊羹の『白味噌』・『黒豆黄粉』」、四季折々の美しい富士山を表した羊羹『四季の富士』をピックアップ。旅先でのお土産にも嬉しい

▼御殿場店限定「『四季の富士』冬(竹皮)」(4320円) ※季節で色目が変わる

▼京都限定「小形羊羹『白味噌』・『黒豆黄粉』」(324円)

▼赤坂店・京都一条店限定「『千里の風』(中形)」(2160円)

■LIVEを楽しむように作りたての菓子が味わえる! “とらやの新たな取り組み”「TORAYA GINZA」

1947年誕生のとらや 銀座店が2024年リニューアル。“とらやの菓子の新たな一面を体験できる”という同店の魅力を紐解く。

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▲TORAYA GINZA喫茶 店長 柴﨑正行さん:東京工場(生菓子・焼菓子担当)→京都工場(焼菓子担当)を経て、同店・菓寮の店長に。資材部門の在籍経験もあり、素材を見極める目を持つ。趣味はゴルフ

前頁で触れた〝伝統を受け継ぎながらも、柔軟に時代の空気を取り入れる姿勢〞。その象徴といえるのが、とらや直営店の中でも“とらやの菓子の新たな一面を体験できる店”としての役割を担う「TORAYAGINZA」だ。

同店最大の特徴は、職人が目の前で菓子を作るカウンター席(予約制)。半個室の空間で、菓子についての説明を聞きながら、熟練の職人の技術を間近で堪能できるのだ。作りたての生菓子の美味しさは、また格別。

「作りたてを提供するということは、“その状態がもっとも美味しい”ということを意味します。目の前で生地を焼く『夜半の月』の場合でいえば、香ばしい香りや温かさ・柔らかさ、濃厚な小倉餡と馴染んで生まれる、焼きたてならではの味わいがお楽しみいただけます」(柴﨑さん)

樹齢100年を超す植栽や水盤を設置した、吹き抜けが開放的なテラス席も見どころ。都会の喧騒から切り離されたかのように、自然を感じながら菓子をゆったり楽しむことが叶う。

「今後は、お客様よりご提案いただいた味や食材を使用した菓子を商品化できるよう取り組んでいければと思っています」と柴﨑さん。ここを起点に、今後どんな“とらやの新たな一面”を見せてくれるのか興味が尽きない。

■ココでしか食べられない店舗限定生菓子

伝統的な和菓子の素材のほか、果物やスパイス、乳製品などを使い、とらやの餡との相性を見極めながら、店舗限定の生菓子を提供。「夜半の月」は通年で味わえるが、きんとん製は季節によって種類が変わる。

▼「きんとん製『馨』御膳餡入 飲み物付き」(2090円~)

▼「焼きたて 『夜半の月』小倉餡入 飲み物付き」(1958円~)

■ココでしか手に入らない地域限定羊羹

▼「TORAYA GINZA限定『ちぐさかん』」(2484円)

TORAYA GINZA
住所:東京都中央区銀座7-8-17 虎屋銀座ビル4階
電話:03-6264-5200
営業時間:11:00~19:00(L.O. 18:30)
定休日:元日、毎月第2月曜日(祝日の場合は第3月曜日)

 

 

>> 連載【GPジャーナル】

※2026年2月6日発売「GoodsPress」3月号P108-111ページの記事をもとに構成しています

<取材・文/TOMMY 写真/河田浩明(P111) イラスト/福島モンタ>

 

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