【大人の文房具“再”入門】
おそらくいま50代以下の人であれば、ほとんどがお世話になったであろうコクヨの「キャンパスノート」。学生時代、ノートといえば一も二もなく「キャンパスノート」だったのではないでしょうか。それはいまの学生さんも同じだと思います。
2025年に50周年を迎えた「キャンパスノート」ですが、これまでに何度か表紙のデザイン変更が行われています。そのため、どの表紙の「キャンパスノート」を使っていたかでだいたいの年齢が分かっちゃうとか。
そんな日本人にとってなくてはならない「キャンパスノート」の歴史と、意外と知られていないスゴいポイントをコクヨの佐藤祐子さんに教えてもらいました。
■学生時代、どのキャンパスノート使ってた?
帳簿の表紙メーカーとして1905年に創業したコクヨ(当時は黒田表紙店)。その後、洋式帳簿の製造を始めるなど、主に紙製品を手掛けるメーカーとして歩み続け、学生がノートを使って勉強する世の中になった時、ノート市場に参入します。
当時はグレーの表紙に糸綴じ製本のノートが主流。コクヨも、大学生などある程度上の年齢層に向けて作られていた、いわゆる“大学ノート”と呼ばれるものを、他社と同様手掛けていたといいます。
そんな中、ノート市場への本格参入の象徴的商品として生まれたのが「キャンパスノート」です。発売後は、小中高生まで広く使われるようになりました。
【初代】1975年(昭和50年)発売
当時のノート市場では珍しいカラフルな表紙が売り場で目立っていたこともあり、広く受け入れられました。
実は「キャンパスノート」発売以前にコクヨが発売していた「意匠ノート」に、海外の大学のキャンパス風景が表紙になっていたものがあり、人気だったそう。そのノートには「campus note」と書かれていました。これが「Campus」の由来だとか。
【ニ代目】1983年(昭和58年)発売
ニ代目になって最大の変化は、表紙にも罫線が入れられたことです。開かなくても、どのサイズの罫線なのかが分かるように入れたといいます。ロゴ化された“Campus”もこの代からになります。
【三代目】1991年(平成3年)発売
似たような商品が市場に多く出てきて、差別化ができなくなってきた時代。より安価な商品にユーザーが流れる危機感から、ユニークなデザインの表紙にして目立つようにしたといいます。ビビッドなカラーリングで、ロゴを縦に配置したことも特徴です。
【四代目】2000年(平成12年)発売
“背クロス”という綴じ部分を覆うパーツの素材にビニールを入れ、頑丈に。開発にあたり100人以上のノートを見せてもらう中で、長く使っているノートの背クロスに破けているものがあったことから、背クロスの強度アップが図られました。またロゴを大きくし、表紙にタイトルや名前を書くスペースをたっぷり設けたのもこの代からになります。
【五代目】2011年(平成23年)発売
四代目で好評だったタイトルスペースは踏襲。売り場で平置きでも縦置きでもCampusだと分かるように、ロゴを縦と横の両方に入れられています。また背表紙に文字を書く人にとってビニール入りの背クロスだと書きづらいことから、文字を書きやすい素材にし、色味を少し淡くするなどブラッシュアップされています。
■知ると誰かに話したくなる「キャンパスノート」豆知識
▼罫線
メインとなるのはA罫(7mm幅)とB罫(6mm幅)。
「社員も実はB罫のほうが売れているというイメージを持っていたんですが、実はそんなに差がないんです」(佐藤さん)
現在の「キャンパスノート」には数多くの罫線が存在しています。
A罫…7mm幅
B罫…6mm幅
C罫…5mm幅
U罫…8mm幅(漢字文化の中国ではU罫が主流)
UL罫…10mm幅
M17罫…縦罫線17行(縦書き用)
W罫…ウィークリー罫
S5罫…5mm方眼
他にも英語学習用の英習罫や五線譜といった特殊罫もラインナップしていて、総数なんと15種類! ちなみに方眼罫は2016年に登場した「大人キャンパス」で新たに加わった罫線になります。
そしていま、最も売れているのがドット入り罫線です。2008年に発売され中高生を中心に爆発的ヒット。コクヨが定期的に行っている東大生100名への使用率調査でも、約90%以上の学生がドット入り罫線を使ったことがあると回答しています。
ちなみに通常のキャンパスノートにも棚罫という上下の太い罫線にドットが入っているのですが、5つごとに「・」が「▼」になっているのを知っていましたか?
さらにページの真ん中あたりの罫線にも「・」が付いているんです。
これは、学生が持ち歩くことが多い15cm定規でも線を引きやすいように付けられているとのこと。どちらも五代目からの仕様で、地味ですがユーザー視点に立った大きな変化です。
▼紙質
密度や表面のほどよい引っかかり感などで書きやすさのバランスを取っているキャンパスノートの紙質。コクヨでは、紙の開発部分から携わり、どんな筆記具でも書きやすい紙質を追求しています。
2011年発売の五代目からは、パルプの量を減らして環境に配慮しながら軽量化を実現しつつも、裏写りのないものに変わっています。
▼綴じ方(製本方法)
キャンパスノートが誕生した頃、ノートは「糸綴じ」が主流でしたが、それでは開いて使いづらいことから、キャンパスノートでは紙を糊付けして固定する「無線綴じ」を採用。
キャンパスノートを生産している滋賀工場では、1枚だけ出して糊付け強度をチェックするなど厳しく検査が行われており、外れる心配はなし。ちなみに数値上では、自転車1台分ぐらいは吊るせる強度があるとのことです。
強度を高める以外にも綴じ方は進化しています。2023年末に発売された「フラットが気持ちいいキャンパスノート」では、膨らみを抑えて見開きでフラットになるだけでなく、左右のページで罫線がずれないことも特徴になっています。しかも罫線がページの端まで引かれているので、2ページを広い1ページのように使えます。
「フラットにして広く使ってほしいよね。だったら罫線をつなげるべきだよね」という話から生まれたこの仕様。当然ながらこれを実現するのはかなり大変だったそうです。
■50周年で大きくリブランド
2025年、初代「キャンパスノート」発売から50年を迎え、Campusは大きくリブランディングしました。ノートブランドから「まなびかた」ブランドへ。
メインターゲットは変わらず中高生ではありますが、人生100年時代となり、大人になっても学び続ける人は多くなっています。そこで、学生に向けて学びのブランドとして訴求していく中で、その良さを大人にも認知してもらい、そして使ってもらうことも想定しているといいます。
コクヨの佐藤さんは「大人になっても“ノートといえば”で、キャンパスノートを使い続けてくださる方がいます。同じことを“まなびかた”でも起こしたい」と話します。
「コクヨの強みは、総合文具メーカーとしていろいろなアイテムを持っていることです。そのノウハウと、キャンパスノートを通して見てきた学生さんの学びの背景。これらをもって、学生さんをサポートできるブランドにしていくべきではないか。これが50周年で行った“リブランド”の趣旨になります」
いまや「キャンパスノート」はコンビニでも売っていて、誰もが手に取りやすくなっています。また学生時代から使っている人が多く、馴染みもある。そんなCampusを、例えば語学の勉強をしようとなった時に自然と手にする。勉強するにあたってCampusを使う。この流れに違和感がない人も多いのでは。
「キャンパスノートは、紙質などさまざまな面で、無意識で使っていてもストレスにならない使用感を追求しています。だからこそ多くの方が離脱せずに使っていただいているのかなとは思います。でもそれはある意味、無個性になっているのではないか。50周年を迎えた際に、そういったことを自覚した部分はあり、またこれからの学びの変化にノートだけで対応していけるのか、という課題もありました」
そこで新たなCampusでは「文具×メソッド」としてさまざまな“まなびかた”のアイデアを提案し、そのメソッドに合った文具を順次発売しています。
またコクヨでは、グローバルでもCampusブランドを広めるべく動き始めています。
「日本メーカーの筆記具は海外でも有名になっていますが、キャンパスノートの認知度は低いんです。そこでまずは学習環境が似ているアジアを中心にCampusブランドを育てていきたいと考えています」
現在、主に展開しているのは中国とベトナム。ここからさらに周辺のASEAN諸国に向けて展開していければと考えているとか。またインドでも現地会社を子会社化しているなど、まずはアジアからCampusのグローバル展開を進めていくようです。
「中国では数年前から中高生女子の文具熱が高まっていて、デザイン性やモチベーションを上げるためのアイテムとして文房具が受け入れられているんですよ」
* * *
「累計38億冊以上」という驚異的な販売数を誇るキャンパスノート。このほとんどが日本で売れた数と考えると、ほとんどの日本人が一度は使ったことがあるだろうことが分かります。
それだけ圧倒的なブランド力があったとしても、メインターゲットとなる学生数が減っている現状に危機感を抱くのは当然の話です。
高品質で使いやすい製品を追求し続けてきた開発力をもってグローバル展開を目指すCampus。現地語や学習環境に合わせた罫線やデザインのキャンパスノートが海外土産になる日もそう遠くないのかもしれません。
>> コクヨ「Campus」
>> 大人の文房具“再”入門
<取材・文/円道秀和(GoodsPress Web) 写真/逢坂 聡>
【関連記事】
◆コクヨ「Campus」50周年。新たに"まなびかたブランド"へとリニューアル!
◆無地も方眼もいいけどやっぱり横罫が好きな人へ。横罫仕様の「BIBLIO NOTE」誕生
◆あのキングジムがダイソーと組んだ!スタンダードプロダクツから“使える文具”13アイテムが登場
- Original:https://www.goodspress.jp/columns/717376/
- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web