【大“電動化”時代到来!特集「バッテリー」】
クルマに比べると電動化が進んでいないイメージのあるバイクですが、近年は国産メーカーのラインナップも充実してきています。とはいえ、原付二種以下のスクーターが中心で、日常のコミューターというイメージです。“趣味の乗り物”として、どれくらい遊べるのか? 過酷さで知られるダカール・ラリーで上位を独占する活躍を見せているArctic Leopard(アークティック・レオパード)の主力モデル「XE Pro S」に試乗して、その実力を体感してきました。
■恐ろしく速いが予想以上に乗りやすい
「XE Pro S」は日本の法規では軽二輪(126cc〜250cc相当)に分類される電動のオフロードバイク。今年から保安部品を装備し、公道走行が可能なモデルの販売もスタートしますが、まだ国内に入ってきていないとのことでオフロードコースでの試乗となりました。
試乗したのは神奈川県小田原市にあるRidge Park (リッジパーク)というコース。管理する「Ridge Cycle(リッジサイクル)」というショップは「XE Pro S」の試乗車もあり、予約をすれば試乗することが可能です。
「XE Pro S」に搭載されるモーターの最高出力は16.8 kW(約22.5PS)。数値で見ると驚くほどのハイパワーではありませんが、最大トルクは500Nmもあります。これはバイクのエンジンでは並ぶものがない数値で、クルマのエンジンでいうと3000ccのターボ車並みのハイトルクです。しかも、電動バイクは回転し始めた瞬間から最大トルクを発揮できるので、数字以上にパワフルに感じるもの。これをわずか67kgという軽量な車体に積んでいるので、異次元の加速が味わえそうです。
しかも試乗当日は朝から雨が降っており、コースの路面はかなりぬかるんでいて水たまりもできている状態。そんなコンディションもあって、乗る前はかなり緊張していました。
ちなみにシート高は830mmですが、サスペンションが沈み込むので足付き性は良好。身長175cmの筆者の場合、両足ともしっかり接地する高さなのでオフロードを走る上では安心感につながります。
出力は4段階のモードを選択することができます。路面が濡れていることもあり、最も扱いやすい「1」から走行をスタート。思った以上に走り出しのトルクがコントローラブルで、滑りやすい路面でも安心して発進できました。
とはいえ、大きめにアクセルを捻るとモーター音とともに鋭い加速が味わえます。一番下のモードでも十分に速い。ただ、アクセルの操作がかなり上質で出力をコントロールしやすいので、濡れた路面にもかかわらずタイヤが滑らないように走れます。調子に乗ってモードを「2」「3」と上げていきますが、出力は上がってもコントロールのしやすさは変わらず。電動バイクの中には、アクセルがONとOFFしかないスイッチのようなモデルもありますが、「XE Pro S」の制御はかなりよくできていて、必要なだけのパワーを取り出すことができました。
濡れた坂道も登ってみましたが、ここでも急なアクセル操作さえしなければ滑ることなく登っていけます。エンジンと違って、アクセルを一定にしておけば回転が上がって思ったよりパワーが出てきてしまうことがないので、非常にコントロールしやすい印象です。変速の操作が必要ないので、アクセルと重心の位置の調整に集中できるのも乗りやすさに繋がっています。
下り坂も両手でブレーキを操作できるので、恐怖心が少なくて扱いやすい。オフロードブーツを履いているとフットペダルでリアブレーキを繊細に操作するのは難しいので、これもありがたいと感じました。
■車体剛性が高くてコーナリング性能も上々
少し慣れてきたところで、森の中のコースも走ってみます。
車体が軽量で扱いやすいので、木々の間を抜けていくようなルートも恐怖心なく走れました。乗っている感じはエンジン付きのバイクよりもe-Bikeと呼ばれる電動アシストのマウンテンバイクに近い感覚です。
そしてエンジン音がないので、森の中でも自然の音が耳に入ってきます(この日は主に雨の音でしたが)。これはエンジン付きの乗り物では真似のできないことなので、自然をより身近に楽しみたいという人には大きな魅力でしょう。
軽量な車体なのですが、路面をしっかりとグリップする感覚も伝わってきて滑りやすい路面でもコーナリングを楽しめました。特にフロント周りの剛性感があって、前輪への荷重をしっかり受け止めてくれるので安心感があります。オフロード向けの電動バイクの中でもサスペンションの性能が高く、路面追従性が良いのも安心感に繋がっています。減衰力やプリロードの調整も可能なので、体格や乗り方に合わせて設定できます。
ブレーキは前後とも4ポッドキャリパーの油圧ディスク式。マウンテンバイク向けのパーツのようですが、制動力・コントロール性ともに十分以上のものでした。ホイール径は試乗車はフロント18、リア16インチでしたが、フロント21インチ、リア18インチのいわゆるフルサイズも選べるとのこと。シートは高くなりますが、走破性はこちらの方が高くなります。
このマシンでレースにも参戦している「Ridge Cycle」の馬庭隼人代表によると、スタートでの加速は2スト250ccに匹敵するほどだとか。その割には扱いやすい特性に驚かされました。過酷なダカール・ラリーを走り切るには、こうした乗りやすさが有効なのだということでしょう。
■大容量バッテリーで航続距離は135km
バッテリーの容量は3960Wh(72V 55Ah)と大容量。航続距離は135kmですが、これは時速50kmでの定速走行での値です。実際に坂の多いルートなどを通ると、短くなることでしょう。馬庭代表によると「90分のレースは余裕を持って走り切れるが120分だとバッテリーの残量を気にしないといけない」とのこと。ハードな登りなどもあるレースでのことなので、遊びで走る分にはもっと余裕がありそうです。
長距離のツーリングを考えると、やや心細くなる数字ですが、ベースが競技用車両なのでシートは硬めで長時間乗るには向いていない作り。遠くまで行くというよりは、今回試乗したようなコースで走る、あるいはあまり遠くない林道などまで出掛けるという楽しみ方の方が合っているように感じます。
充電はポータブル電源でもできるので、クルマに積んで走りにいくのであればポータブル電源も併せて持っていけば休憩時間に充電することも可能。オフロードコースで120分以上走り続けるのは人間の体力的にも厳しいので、休憩時に充電をしながらであれば1日遊ぶことができそう。個人的には、電動バイクはそうした楽しみ方が一番合っているように感じました。
用途的には配達などの業務用やコミューターから普及の始まっている電動バイク。今回、実際に乗ってみると趣味の乗り物としてのポテンシャルも十分以上に持っていることが感じられました。ただ、長距離ツーリングを楽しむには、もっと大容量のバッテリーが必要で、そうなると車体も重くなってしまうというジレンマに陥ります。ひと昔前に比べるとバッテリーの技術は日進月歩で進化していますが、より幅広い層が楽しめるようになるためにはさらなる進化が必要でしょう。電動バイクの普及はバッテリーの進化にかかっているといえそうです。
>> Ridge Cycle
<取材・文/増谷茂樹 写真/松川 忍>
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