子どもたちのやさしい心を育むと同時に、犬と人の共生を未来につなぐために、大人ができることは何だろうか。
動物保護活動に参画する子どもたちのボランティアグループをつくるなど、子どもの動物とふれあう機会を創出する小野千恵子さんと本誌総監修者の中村泰治先生の対談を通して、考えていこう。
【DOG LOVER】
小野千恵子
おの・ちえこ。『パウリブプラス』代表理事・大型犬向けファッションブランド『LAUW(ラウー)』オーナー兼ディレクタ
ー・モデル 21歳のときにサッカー日本代表・小野伸二氏と結婚し、オランダへ移住。孤独な異国での生活を犬に支えられ
た経験から、犬のためにできることを模索するように。2025年、犬と人が共生するまち・パウリブタウンの実現を目指す『パウリブプラス』を設立。
中村泰治
なかむら・やすはる。『小滝橋動物病院グループ』創業者・獣医師 1995年、日本大学卒業。師匠の教えである「診る・触る・聞く」ことで異変にいち早く気づく姿勢と、高度な検査や治療を両立することで、少しでも助けられる命を増やすことが信念。さまざまな家族と出会うなかで、犬と人がともに生きていくことの素晴らしさを強く実感。人と犬の共生を後世へとつないでいくことに邁進する。
■心の支えとなり、思いやりや共感力を育む。犬と交流する機会を、子どもたちに
中村:最近は、子どもたちの動物とふれあう機会が減ってきていると感じます。犬の飼育頭数も減少傾向にありますし、また、動物福祉の観点や教職員の方々の負担という面からも、学校飼育動物を廃止するところも増えていると聞きます。
小野:それは私も実感します。動物介在教育のボランティアで、愛犬のラウエとロームを連れて小学校の道徳の時間に入らせていただくことがあるのですが、子どもたちに聞くと、家で犬と暮らしているという子は10人に1人くらい。はじめて犬とふれあうという子がほとんどです。
中村:昔は家にいなくても、外につながれた犬を見たり、ときにふれあったりする機会がありました。犬が快適であることや家族とのかかわりの面で必要なことではありますが、室内飼育が一般的となった今、家に犬がいない子どもたちにとって、犬を身近に感じることのできる機会は、より少なくなっていそうです。
小野:私も同じことを感じていて。それもあって、『パウリブプラス』の活動の一環で、子どもたちのボランティアグループをつくって、保護犬のための活動をするようになりました。子どもたちと犬の保護施設に行ったり、イベントで保護犬のための募金を集めたりしています。じつは私自身、大人になって犬と暮らすまでは、犬のことや、犬をとりまく日本の課題について、ほとんど知りませんでした。こんなにも保護犬がいるのかと驚いたんです。犬を迎えようとしたときに、保護犬が選択肢の一つに入ってくるかこないかって、まず知っているかどうかですから、子どものころからの経験が大切だと思っています。
中村:ボランティアグループの子どもたちは、何歳くらいの子たちなんですか。
小野:10人くらいいて、小学1年生から中学1年生までいます。保護施設でのボランティアって、やることの8割方が掃除です。排泄物で汚れた犬の部屋を掃除することも多々あるのですが、犬だってウンチやオシッコをするという当たり前のことをあらためて見て知って、一緒に暮らしていくにはいくらでも掃除しなきゃならない場面があることを、子どもたちは学びます。
中村:ただ可愛がればいいというのと違う側面を知ることは、とても大事ですね。犬と、いのちと向き合うということでもあります。
小野:それから、自分たちで勉強して、保護犬とは何であるかを発表する場もつくっています。地域のイベントに出展して行うのですが、大人が話すよりも子どもたちが展示や発表をするほうが、耳を傾けてもらえると感じます。子どもたち自身の学びにもなりますし、より社会にも伝えていくことができる、いい循環があります。
中村:行き場のない犬たちを救い、減らしていくことになりますね。と同時に、犬とのふれあいは、子どもから高齢者まで、人間にとっても、素晴らしい側面がたくさんありますよね。犬がいることで、気持ちが明るくポジティブになったり、散歩で健康になったり、生活の質も向上していくと思います。
小野:その通りだと、子どもたちを見ていて思います。動物介在教育のボランティアでは、支援学級に行くこともあるのですが、犬がいることで集中して話を聞くことができたり、とても明るい表情を見せたり。普段とは明らかに異なる子どもたちの姿に、先生が感動して泣いてしまうこともありました。
中村:獣医師会でも同じような活動があります。小学校に行き、授業をする。みんな集中して話を聞いているし、何か質問はありますかと聞くと、「はい!」って、どんどん手が挙がります。
小野:犬という動物のことや、犬とのふれあい方について学んでもらうとき、そこで子どもたちが経験することは、他者とのかかわり全般に応用していくことができる、大切なことばかりです。それに、動物とふれあう経験がないと、一度犬を怖いと思ってしまったら、怖いまま大人になってしまう。小さなころから、犬に対してポジティブな感情を持ってもらいたいと思っています。
中村:小学1年生や2年生くらいって、「お兄ちゃんになりたい」、「お姉ちゃんになりたい」という感情が芽生える時期。その想いも、犬の面倒を見ることで満たされますよね。実際には難しい場面もたくさんありますから、犬とどう接したらいいかを考えるようにもなりますし、そこからやさしさや思いやりなどの感情も育まれていくと感じます。
小野:役割をもらうことで、人はすごく成長しますものね。
中村:犬は言葉を話さないからこそ、人は考えることをしないとならない。こう
したらいやがられてしまう、このコはこれが好きなんだって、相手の気持ちを考
えるようになります。意識しなくとも、自然と子どもたちの情操教育になってい
くものです。
小野:犬とふれあうことで得られる恩恵は本当にたくさんあると思います。私自
身、犬と暮らすようになって、心が豊かになりました。散歩中、大人も子どもも
関係なく、「さわっていいですか?」と聞かれたら、喜んで応えるようにしていま
す。そういう小さなことも含めて、子どもをはじめ、いろいろな人たちの犬とふ
れあう機会をこれからもつくっていけたらと思います。
中村:イギリスでは、古くから伝わることわざに「子どもが生まれたら犬を飼い
なさい」というものがあります。訪れる別れはつらいですが、その悲しみは、幸
せだったからこそ存在するものです。犬とともに生きるって、本当に素晴らしい
ことだと、伝えていきたいですね。
——イギリスに伝わる、古いことわざ
子どもが生まれたら犬を飼いなさい。
子どもが赤ん坊のときは、子どものよき守り手となるでしょう。
子どもが幼いときは、子どものよき遊び相手となるでしょう。
子どもが少年期のときは、子どものよき理解者となるでしょう。
そして子どもが青年になったとき、犬は自らの死をもって子どもに命の尊さを教えるでしょう。
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<写真=加藤史人/構成・文=川本央子>
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