アウトドアを担当していることもあって、山登りは私の大切な趣味のひとつです。山のテン場でキャンプをしながら、周りをのんびり散策する時間は何物にも代えがたい楽しさがありますよね。ただ、登山の頻度は良くて数ヶ月に1回という、お世辞にもガチ勢とは言えないライトハイカー。当然ながら体力はお察しの通りですので、担ぐ荷物は軽ければ軽いほど良い、というのが正直な本音なんです。
たぶん私と同じように、パッキングのたびに「あと少しでも軽くならないかな……」と溜息をついている人は多いはず。特に荷物の中で一番重いテント選び。軽さを優先してシングルウォールにすると結露が気になるし、かといって快適なダブルウォールにするとどうしても重くなる。体力が追いつかないからこそ、道具に頼りたくなる気持ち、わかりますよね。そんな「もっと構造からガラッと変えて、良いとこ取りはできないの?」と思っていた矢先に出会ったのが、アメリカのBig Agnes(ビッグアグネス)から5月に登場する新作「VSTシリーズ」です。
そもそもビッグアグネスというブランド、日本ではまだ馴染みのない人もいるかもしれませんが、実はコロラド州で誕生して以来、UL(ウルトラライト)テントの歴史を切り拓いてきたパイオニア的存在なんです。今年で製品販売25周年を迎える彼らは“Mother of Comfort(マザー・オブ・コンフォート)”、つまりフィールドでの快適さを何より大切にするという信念を持っていて、世界中のハイカーから厚い信頼を寄せられているんです。そんな名門が満を持して放つ今作、これまでの常識を覆すような驚きの工夫が詰まっていました。
■「シングル」と「ダブル」の良いとこ取りをしたハイブリッド構造

この「VSTシリーズ」を語る上でまず外せないのが、その独自の構造です。基本的には軽量なシングルウォールなのですが、サイドパネルに大型のメッシュを配置することで通気性を劇的に向上。さらに、高位置と低位置の通気口を組み合わせたベンチレーションを工夫することで、シングルウォール特有の悩みである「結露」に非常に強い設計になっているのが、シリーズ共通の大きな魅力なんです。
さらに面白いのが、出入口や天井部分はダブルウォール的な構成にしている点です。これ、実はすごく実用的で、雨が降っている状況下でも前室内でちょっとした作業がしやすかったり、万が一結露してしまっても寝ている間にテント内に雨が降ってくる…なんていう心配もなさそう。まさに、私のような“ラクも快適さも諦めたくない”ハイカーが求めていた“うまいことやってくれる”構造と言えそうです。
素材面でも、独自開発の新生地である“HYPERBEAD(ハイパービード)”を採用し、軽量化と耐久性、防水性を高いレベルで両立。見た目もフィールドで目立ちにくいダークグレーの“ステルスカラー”に、オーロラ着想の“ミントリーフグリーン”のアクセントが効いていて遊び心たっぷりです。
■自分のスタイルで選べる個性豊かな3モデル
今回のシリーズは、自分の登山のスタイルに合わせて選べる3つのモデルが用意されています。
まず、とにかく1gでも荷物を削ぎ落としたいミニマリストの期待に応えるのが、トレッキングポールを使って設営する「ストリングリッジ VST」(1.5P:8万8000円/2.5P:12万1000円)です。
このモデルは、FKT(Fastest Known Time)と呼ばれる“素早くコースを踏破する”スタイルに対応するハイブリッド型で、設営にはトレッキングポールを使用。
専用のポールを持ち歩く必要がないので、重量も1.5Pで654g、2.5Pで953gととかなり軽量。トレッキングポールを使う人ならこれに替えるだけでザックの重さが劇的に変わるはずですよ。
さらに“とにかく自立式(専用ポール式)がいい、でも軽さも妥協したくない! ”というストレートな要望には、ブランド内の全ラインナップ中で882gと最軽量を更新した「ピッチパインVST 1.5P」(9万9000円)が最適。
シンプルな設計ながら“DACフェザーライトNFLポール”を組み合わせることで、素早く簡単に広い居住空間を確保できるハイブリッドシェルターに仕上がっています。この軽さでこの広さ、ULバックパッカーにとってはまさに理想郷のような選択肢になるのではないでしょうか。
そして私のように“やっぱり専用ポールがある安心感は捨てがたい…”という欲張りな人には「サルビス VST」(2P:12万6500円/3P:14万8500円)。付属のポールを使って簡単かつスピーディーに設営できるこのモデルは、まさに冒険者のための頼もしい相棒といえます。
2Pで1270g、3Pで1530gと、同じ専用ポールを使用する「ピッチパインVST 1.5P」と比べると重量は増しますが、その分、居住性は格段にアップ。
天井空間を広げるリッジポールの採用に加え、前後2か所に入口を設けることで、FKT対応モデルでありながら開放的で快適な空間を実現しているんです。軽さを極めるか、広さと安心感を取るか、自分のスタイルに合わせて選べるのがこのラインナップの魅力ですね。
パイオニアであるビッグアグネスが、ハイカーたちの生の声をフィードバックして作り上げたこのシリーズ。“FKT”というタイムアタック的な遊び方は日本ではまだまだ知られていませんが、それでも野遊びを楽しむ多くの人達にとって、このシリーズの高機能性っぷりは恩恵マシマシ。実際に手に取ってその軽さを体感したら、次の山行がもっと楽しみになりそう。
5月上旬から順次発売とのことなので、これからのグリーンシーズン、装備の軽量化を考えている人はチェックしておいて損はないですよ。個人的には「ピッチパインVST 1.5P」が気になるな。1“.5”Pっていうのがすごく良い。
>> Big Agnes
<文/山口健壱(GoodsPress Web)>
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