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軽自動車界のカローラ!?47年の歴史と無数のモデルを生んだ「小さな名車」スズキ・アルトの変遷

数ある日本車の中でも「派生モデルがめちゃくちゃ多い」と言われるトヨタ・カローラ。各モデルの変遷を辿るだけで頭が混乱しますが、軽自動車でも、さまざまなモデルが生まれては消え、そしてカローラ同様のロングセラーに至っているクルマがあります。

それが1979年に初代が発売されたスズキ・アルトです。「新車47万円」「女性でも運転しやすいモデル」としての登場で瞬く間に大ヒット。元々のベースモデルの完成度が高かったこともあり、以降今日までの47年間、様々な派生モデルを生んできました。

■初代発売から6年間で国内販売台数100万台を突破!

初代アルトはシンプルなデザインでありながら、広い室内空間と大容量のラゲッジスペースを確保。また、2サイクルエンジン特有の軽さと加速性をもって、「気軽に乗れる」利便性を実現しました。発売当時、日本の軽自動車市場は低迷しつつありましたが、この初代アルトのヒットによって市場全体の活性化につながり「第2の軽自動車ブーム」を牽引するにも至りました。

 

▲「新車47万円」「女性でも運転しやすいモデル」として登場した初代アルト(画像:スズキ)

▲シンプル・イズ・ベストの極実のような初代アルトの運転席(画像:スズキ)

後に4サイクルエンジン仕様を追加するなど、複数の派生モデルを生み、また複数回フルモデルチェンジを経て初代発売から6年後の1985年には国内販売台数100万台を記録。

1987年には、箱型キャビンモデルのウォークスルーバン、1988年には、軽乗用車にしてスライドドアを採用し、運転席が平行に回転するという実験的モデル、スライドスリムなども登場しました。

▲1987年発売のアルト・ウォークスルーバン(画像:スズキ)

▲1988年発売のアルト・スライドスリム(画像:スズキ)

▲1997年発売のアルト・電気自動車(画像:スズキ)

 

また、1990年には軽自動車の新規格に呼応して、大幅なモデルチェンジが行われ、排気量は550ccから660ccへ、さらに大型バンパーの採用などによって全長は100mm伸びました。

また、1997年には電気自動車モデルもアルトシリーズに投入され、おおいに注目を浴びました。

現行モデルは2021年に発売された9代目で、親しみやすいデザインと「リッター27.7km」という優れた燃費性能を発揮し、初代からの「安定人気」を不動のものにし続けています。

▲現行モデルは2021年発売の9代目アルトがベースです(画像:スズキ)

「女性向け」だったアルトに、性別を問わない高性能スポーツシリーズが登場

ベースモデルのアルトはここまでの通りですが、やや混乱するのが、大きく2つの系譜を持つ派生モデルです。

1つは1987年に発売となった高性能スポーツモデルのアルトワークス。軽自動車初のツインカムターボエンジンを搭載し、走行性能がベースモデルよりはるかにアップしました。

▲1987年発売の初代アルトワークス(画像:スズキ)

▲初代よりもさらにスポーツ感覚を高めた1988年発売の2代目アルトワークス(画像:スズキ)

▲2代目アルトワークスを、1990年の軽自動車の新規格に合わせてマイナーチェンジさせたアルトワークス・新規格車(画像:スズキ)

 

初代アルトは女性向けの開発でしたが、このアルトワークス以降は、性別を問わず支持を集めるようになり、モデルチェンジの度にスポーティなスタイルを高めていきました。残念なことに2015年発売の5代目アルトワークスを最後に、シリーズは生産終了に至りますが、軽自動車のスポーツモデル市場を切りひらいたのもやはりアルトでした。

▲「本格軽ホットハッチ」のコンセプトで2015年に発売された5代目アルトワークス。このモデルを最後に2021年にアルトワークスシリーズは生産終了に(画像:スズキ)

 

初代アルトのコンセプトを2000年代に継承した「うさぎ」が語源のシリーズ

アルト、アルトワークスとも複数のモデルを出し多彩なニーズに応え続けましたが、2000年代に入り、初心に帰るがごとく改めて「女性向け」に特化した派生モデルを誕生させます。それが2002年に初代発売となったアルトラパンです。

▲2002年発売の初代アルトラパン(画像:スズキ)

 

フランス語で「うさぎ」を意味するラパンは、「こころに感じるデザイン」をコンセプトに、「自分の部屋にいるようなくつろぎ」を目指した新感覚モデルで、廉価版のG、標準車のX、ツートンカラー仕様のX2の3スペックを発売。いずれも雑貨や家具のようなかわいらしさと使いやすさから、いずれも大ヒットに至ります。

アルトラパンもまた、結果的には女性だけでなく、オシャレ好きな男性からも支持を得たことで、2003年には64PSのターボエンジン搭載のスポーツモデル・アルトラパンSSなども登場。

この経緯は初代と似たものを感じますが、このほかにも、「軽自動車販売台数30年連続No.1」を記念したバージョンV、キャンバストップ仕様車、ベネトンとのタイアップの特別仕様車、ベンチシートモデルのL、さらにLの特別仕様車・Lリミテッド、ピンクの内装のアンセルバージョンといった派生モデルを続々と発売しました。

▲2003年、初代アルトラパンにラインナップされたアルトラパン・キャンバストップ(画像:スズキ)

 

▲2008年にフルモデルチェンジし登場した2代目アルトラパン(画像:スズキ)

 

▲2015年にフルモデルチェンジし登場した3代目アルトラパン(画像:スズキ)

 

さらに2008年には2代目アルトラパンを発売し、ショコラ、3代目にはLCといった派生モデルも登場しました。

現行車は、2015年発売の3代目アルトラパンをベースにした2025年発売の6型と呼ばれるもの。ISG(モーター機能付き発電機)を搭載し、スズキが掲げる「マイルドハイブリッド」仕様となり、燃費性能も格段にアップしリッター35.6kmを実現させました。

もちろん、安全機能もスズキの最新技術が存分に投影され、ブレーキサポートがミリ派レーダー+単眼カメラ方式のデュアルセンサーとなりました。

これまでの進化と高い支持から「2015-2016日本カー・オブ・ザ・イヤー」のスモールモビリティ部門賞も受賞。初代アルトから続く「絶大な支持」をアルトラパンもまた守り続けています。

■世界中で累計1500万台以上を販売した「小さな名車」

ここまでの通り、自動車メーカー各社には「ワークス」という、世界規模のレースシーンの極限状況下で技術開発を行う部門があるわけですが、これらは「技術開発の推進」と合わせて、自社ブランドの「イメージ」を世界中に知らしめる目的もあります。

ベースモデルのアルトシリーズだけでも国内の累計販売台数は2025年時点で約539万台、世界中での累計販売台数は1500万台以上とも言われます。これにアルトワークスシリーズ、大ヒット継続中のアルトラパンシリーズも加えれば、とんでもない数字になることでしょう。

▲「小さな名車」アルトシリーズの伝説はさらなる未来へ(画像:スズキ)

 

ちなみに、冒頭で触れたトヨタ・カローラのシリーズ全体での国内の累計販売台数は2025年時点で約1089万台、世界中の累計販売台数は5500万台以上と言われています。

この数字だけを見れば、アルトシリーズはまだまだカローラシリーズに及ばないとも見えますが、自動車市場全体を見れば、当然普通車の需要のほうが高く、また、カローラシリーズは、アルトシリーズよりもさらに12年もの古い歴史を持っています。この違いを鑑みれば、アルトシリーズを指して「軽自動車界のカローラ」という呼称も全くオーバーではないでしょう。

47年もの間、販売台数の数だけ多くの人々の生活を支え続けた「小さな名車」アルト。今後もさらなる進化をし続け、軽自動車の代名詞であり続けてほしいと願うばかりです。

 

<取材・文/松田義人(deco)>

松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数

 

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