“足袋”。それは日本における伝統的な履き物のひとつ。和装が日常だった頃、草履や下駄を履くときの靴下的な存在として一般的なアイテムでした。また、地下足袋は屋外で直接歩けるシューズとして大工や農業などの現場では現在でも作業用の靴として使用されていることもあります。
しかし、現代では一般の人が履くというのはめっきりと減りました。それこそ、正月や成人式、結婚式などで和装をする際に履く機会がギリギリある、くらいまで廃れてしまったアイテムとも言えます。そんな足袋にスポットを当てたのは、間違いなくメゾン マルジェラではないでしょうか。同ブランドを大して知らなくても、あのタビブーツのブランドだと言えばわかる人も多いと思います。

1988年に初登場したスプリットシューズは海外の人たちだけではなく、日本においても新鮮に映りました。足袋がモードな着こなしのようなハイファッションと合うなんてそれまでは誰もが思いもしませんでしたし、しかもしゃれた印象を放つなんて本当に想像も付かなかったことでしょう。メゾン マルジェラの所謂タビブーツは最早ブランドのアイコン的存在ですし、とても革新的なアイテムです。
そのタビブーツの登場も手伝って、“足袋”というものは以前よりも身近なものになったように感じます。マルジェラ以外のブランドからも登場するようになりました。そして今回紹介するのも足袋がモチーフとなった1足です。
それがムーンスターの「JIKATABI RF」(1万4300円)。
ムーンスターは日本において知らない人はほとんどいないと言っても過言ではない、非常に認知度が高いブランド。本社は福岡・久留米にあり、同市内ではアサヒシューズ、ブリヂストンと並んで“ゴム三社”と称され、地元民をはじめ多くの人から愛されています。特に小学校~高校くらいまでは上履きや体育館用のシューズなどでお世話になった人も多いのではないでしょうか? ちなみに、福岡では上履きを上靴(うわぐつ)と呼びます。
個人的にムーンスターはとても親しみのあるブランドです。同じ筑後地方が地元で、小学校低学年の頃に社会見学でムーンスターとアサヒシューズの工場に行ったのを今でも思い出します。話が逸れましたが、ムーンスターは実は日本で初めて足袋の製造現場にミシンを導入したことでも知られ、1922年にゴム底の地下足袋を商品化したブランドでもあります。つまり、この「JIKATABI RF」は同メーカーの長年の歴史や精神を継いだアイテムとも言えるわけです。それをサラリと出してくるあたり、何だか大人の余裕を感じます。同郷の立場からすると、もっと声を大にして日本の足袋産業の大手がモダンな足袋シューズ出したよと吹聴しまくれば良いのにとヤキモキするくらいです。と、言うことでこの「JIKATABI RF」、紹介せずにはいられませんでした。
見てください、この1足。このヴァルカナイズ製法の地下足袋は久留米で生まれたものです。それが100年以上経った今でも変わらずに採用されているのです。これって本当にすごいことですし、日本のモノ作りってやっぱり素晴らしい、そう思いはしませんか。
そんな伝統が詰まっているのにご覧の通りモードでしゃれた足元を形成する洗練されたデザイン。このバランス感が実に絶妙です。地元企業だから多少の贔屓目はもちろんありますが、それを差っ引いてもそう思います。
良くも悪くも、現在のシューズシーンには大きなトレンドがないという状態です。逆に言えば、今であればどんなシューズも自由に履ける(もちろんファッションは自由というのが大前提ではありますが、やはりトレンドもそれはそれで大事なので)ということ。今こそ伝統と斬新さが融合した足袋モチーフのシューズを試すときなのではないでしょうか?
>> ムーンスター
<文/手柴太一(GoodsPress Web)>
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