【達人のプラモ術】
スペシャルホビー
「1/32 ノースアメリカンX-15 A-2」

スペシャルホビー
「1/32 ノースアメリカン X-15 A-2 グラウンドドーリー(地上台車)付き」
参考価格:9180円
※スペシャルホビーは1990年に設立されたチェコの模型メーカー MPM Production Ltd.のブランド。日本での知名度も高い。
■宇宙に到達した航空機 X-15
プラモデルにはいろいろなジャンルが存在します。ミリタリーモデル、カーモデル、SF系モデル、フィギュアetc. そして定番でもあるミリタリーモデルにしても航空機、AFV、艦船など細分化されています。
そして今回は、さらに多くのジャンルが存在する航空機モデルから、アノマリーな存在とも言えるexperimental aircraft(エクスペリメンタル・エアクラフト)をテーマに選んでみました。
航空技術の進歩、宇宙開発、記録への挑戦に大きな貢献を果たしてきたのが、アメリカのXシリーズを冠するエクスペリメンタル・エアクラフト。SFチックなデザインの機体もあり、模型的にも実に魅力溢れる存在だと思います。
そんなXナンバーを与えられた航空機の中から(Xは実験機、記録機を意味しており、1946年のベルX-1が1947年10月14日に初の有人超音速飛行を達成して以降に使用されている)今回取り上げるのは、1950年代に高高度、極超音速時の空力特性や熱力学的な機体へ影響を調べるために開発されたノースアメリカン X-15 ロケットプレーンになります。
高高度への挑戦、極超音速を追求するため生み出された機体の特異なスタイルは先進的でスケールモデルとしても大いに魅力に溢れる存在です。
■X-15実機解説
X-15は高高度、極超音速飛行実験機で、ジェットエンジンではなくロケットエンジン採用しています。そのため、ジェットエンジンを搭載した航空機よりも遥かに高い高度や速度に到達できる性能を持ったロケットプレーンです。
試作機の初飛行は 1959年9月。X-15A1、X-15A2、X-15A3 の3機が製造され、1970年まで様々なテストに運用されました。
飛行で得られたマッハ4以上の極超音速下での空力特性や熱力学的影な機体への影響といった研究結果は、のちのスペースシャトルの開発にも貢献しています。
X-15は一般的な航空機のように滑走路からの離陸はできません。機体は母機となるNB-52(改造B-52爆撃機)の翼の下に懸下され、空中で母機から切り離されたのち、ロケットモーターを点火して飛行します。着陸には通常の航空機と同じく滑走路を使用します。ただし前脚は車輪ですが、後脚は車輪ではなくスキッド(ソリ)が使われており、着陸時には地上とのクリアランスを確保するために、機体下部の垂直安定板下側半分を切り離されます(投棄した下部垂直安定板はパラシュートにより回収)。また着陸速度が速く着陸は難しかったそうです。
1号機では、搭載が予定されていたXLR99ロケットモーターが間に合わず、出力の低いXLR11エンジンを搭載して1959年9月に初の動力飛行に成功。1960年8月に本来のXLR99エンジンを搭載した2号機がマッハ3.31を達成しました。また1号機も高度4万1605mの飛行高度記録樹立しています。
2号機は1959年11月にエンジン火災を起こし、緊急着陸の際に胴体が折れて大破しましたが、大規模修理改修され翌年にはテストに復帰しています。
そして1963年8月22日に行われた91回目のフライトで、ジョセフ・A・ウォーカーの操る機体が高度10万7960mに到達しました。これがX-15計画では最高到達高度となり、NASAが宇宙との境界線と規定されている高度80kmを超えて飛行した航空機として認定され、5人のパイロットは宇宙飛行士として認められています。
さらに1967年10月3日に行われた188回目のフライトでは、X-15A-2が最高速度マッハ6.7(時速7247km)を達成しています(X-15による最高速度)。この飛行では、将来のスクラムジェット実用化のために実寸大モデルを下部垂直尾翼に装備し、さらに新たに開発された耐熱塗料(蒸発して機体を熱から保護するアブレーション冷却)を機体全面に塗布していたのですが、耐熱塗料をもってしても機体を熱から守りぬくことはできず、装着されたスクラムジェットのモデルは焼失。重度の損傷を受けた機体はその後、飛行することなく引退しています。ちなみにX-15A2の限界速度はマッハ8(時速9862km)となっていました。
同年11月に3号機による191回目の飛行では、高度1万9000mで機体が空中分解、パイロットが死亡しています。そして翌1968年10月の1号機による199回目の飛行でX-15の飛行試験は終了しました。
X-15計画には12名のパイロットが参加していますが、その中に、後にアポロ11号で人類初の月着陸を果たしたニール・アームストロングも名を連ねています。
■キットに関して
キットは、1962年11月9日に行われた74回目のフライトで着陸事故を起こし大破した2号機を修理大規模改修したX-15A-2モデル化したものです。1号機に比べて胴体を延長、大型のドロップタンクが搭載することができるようになった機体で、下側の垂直安定板下部が着陸時の切り離された状態となっており、大型のドロップタンク2基とレジン製のドーリー(地上台車)が付属しています。ちなみにスペシャルホビーは1/48スケールでもX-15をラインナップしています。
■製作レビュー
2000年代に発売されたもので、さらにスペシャルホビーの簡易インジェクションキットということもあり、現代のプラモデルのようにパチピタで製作がサクサク進む…というワケにはいきません。パーツはダルな印象で、全て削りこんでシャープなエッジ出さなければいけません。
また垂直尾翼をはじめ細部パーツの多くが嵌合ピンのないイモ着けなので、強度確保のために金属線を打ち込んでいます。
コクピットはレジンパーツで再現されており、細部まで作り込みが可能ですが、キャノピーを被せてしまうと、ほとんど見えなくなってしまいます。
キットはドーリが付属しており、駐機状態を再現しているのですが、そのままではあまりカッコよくないのと、胴体下面に装備した大型ドロップタンクの見栄えも悪いので、前脚を収納状態に改造。スタンドに乗せて飛行状態のデスクトップモデルとして仕上げました。
■塗装へのこだわり
X-15は、基本黒い塗装が施されています。これは高高度を高速で飛行する際に圧縮断熱で機体表面が高温になるため(空気との摩擦ではない)、効率的に放熱する黒い塗装が採用されているのですが、実機の写真見ると、外板は部位によって黒の色味が違います。ガンメタ調の部分もかなり目立ちますね。実機は高熱に耐えるようにチタンやステンレス、さらインコネルXと呼ばれる耐熱ニッケル合金が使われており、材質の違いにより色の違いが生じています。
そこで作例では、ガンメタリックで下地塗装、そこに調色したトーンの違うシルバー×ブラックを重ねていくことで、微妙な色の違いを再現しました。さらに墨入れ塗料によるウエザリング(汚し塗装)、水彩色鉛筆を使ってのチッピング(塗装のハゲ)を再現しています。
搭載された大型の増加タンクは白×オレンジと派手な派手な色で黒い機体とのコントラストが気に入っています。タンクは使用後に切り離されて、パラシュートで回収され再利用されます。
■X-15A-2ギャラリー
X-15が達成した有人航空機によりマッハ6.7の速度記録は公式上いまだに破られていません。そして航空機として高度10万mを超えて宇宙に到達した航空機としての記録もしかり(スペースシャトルは宇宙船であり航空機ではないので)。それも1950年代から1970年代にかけての時代でした。
マーキュリー計画から始まるアメリカの有人宇宙計画、そしてスペーシャトル開発にもX-15が残した飛行データは多大な貢献をしているのです。スミソニアン博物館で実物も見ました! 黒い精悍なX-15の機体は、男の冒険心とロマンが詰まっているんです。
さて次回はどんなプラモデルを作りましょうか?
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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