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望遠は“遠くのものを大きく撮る”だけではない。ソニー「RX10 V」を街に持ち出してみた

カメラの超望遠レンズというと「遠くにある撮りたいものに近づけないから使う」と思いがち。でも、それだけではないんです。

一台で広角から超望遠までをカバーするソニーのコンデジ「RX10 V」を使うと、同じ場所から同じ方向を撮っても、広角域、標準域、望遠域で異なる風景を撮れる。これがポイントになってきます。

ではそれぞれ、街ではどんな写真を撮れるのか。プロのフォトグラファー目線での超高倍率レンズの使い方を見てみましょう。(全3回の2回目/1回目)

監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。

 

 

【趣味カメラの世界 #40】

前回はソニー「RX10 V」を、約36万円のコンパクトデジタルカメラではなく、24-600mmのレンズまで含めた撮影システムとして紹介しました。

これだけ広いズーム域があれば、遠くにいる鳥や飛行機、スポーツなどを撮影するカメラとして活躍することはすぐに想像できます。しかし筆者は普段、そのような被写体を撮ることはほとんどありません。

そこで今回は、RX10 Vを持って街を歩いてみることにしました。遠くのものを大きく写すための望遠ではなく、24-600mmというズーム域によって、いつもの街の見え方や撮り方がどう変わるのかを試してみます。

 

■標準域をよく使う筆者が24-600mmを持ち出してみた

筆者がスナップなどでよく使っている焦点距離は、35-50mmくらいのいわゆる標準域のレンズです。ズームレンズでは、24-70mmの範囲内のものをよく使います。

撮れる範囲が限られているので、被写体を大きく写したければ自分が近づき、背景を広く入れたければ後ろへ下がる。撮影距離によって構図を決めるというのが基本になります。

▲RX10 V 1/400、F5.6、ISO100、24mm(35mm換算)

▲RX10 V 1/400、F5.6、ISO160、600mm(35mm換算)

一方、RX10 Vは24mmから600mmまでを一台でカバーします。同じ場所に立ったままでも、広い範囲を写したり、肉眼では細部まで確認しづらいほど遠くのものも大きく切り取ったりすることが可能です。

これだけ自由に画角を変えられるカメラを使うことで、撮影が楽になるのか。それとも、ズームだけに頼った雑な撮り方になってしまうのか。その点も気になっていました。

 

■24〜100mmでは、目の前の街を素直に写す

▲RX10 V 1/400、F5.6、ISO100、24mm(35mm換算)

24mmの広角側では、建物だけでなく空や道路、周囲を歩く人まで含めて、その場所の雰囲気を広く収められます。

高倍率ズームというと望遠側に注目しがちですが、始まりが24mmであることも大切です。旅行や街歩きでは、狭い場所から大きな建物を撮ったり、風景全体を記録したりする機会も多く、24mmが使えることで一台目のカメラとしての汎用性が高まります。

▲RX10 V 1/400、F4.0、ISO125、42mm(35mm換算)

▲RX10 V 1/800、F8.0、ISO200、74mm(35mm換算)

▲RX10 V 1/500、F8.0、ISO100、76mm(35mm換算)

50〜100mm付近までズームすると、画角の中から余計な要素を整理しやすくなり、普段のスナップに近い感覚で撮影できます。広角側では街全体を見ていましたが、ズームしていくことで建物やクルマを主題としたり、配置のバランスや重なりと奥行き感などの構図の面白さへと自然と目が向くようになりました。

このくらいまでの焦点距離は、一般的な標準ズームや高倍率ズームでも比較的馴染みのある画角です。RX10 Vならではの面白さはさらに望遠側へズームすることで見えてきました。

 

■200mmを超えると、街がグラフィカルな被写体に変わる

200mmを超えるあたりの望遠域は、筆者が普段の街歩きでほとんど使わない焦点距離です。実際にファインダーをのぞいてみると、目の前に広がっている街の中から、狭い範囲だけが切り取られます。

▲RX10 V 1/800、F5.6、ISO250、191mm(35mm換算)

新しいタワーマンションと古い団地の対比が面白いと思ってシャッターを切った1枚。実際には距離のある団地とタワーマンションが、望遠で切り取ることで隣接しているように重なりました。

望遠側でも細かいところまで、思っていた以上に解像していて、RX10 Vのセンサーとレンズの底力を感じます。

▲RX10 V 1/1000、F5.6、ISO250、288mm(35mm換算)

望遠レンズを通すことで、風景の一部として見えていたものが、独立した被写体として浮かび上がってくる感覚になります。

離れた位置から望遠で切り取ると、手前と奥の大きさの差が小さくなり、重なりや繰り返しがよりグラフィカルに。

▲RX10 V 1/1000、F5.6、ISO100、191mm(35mm換算)

普段なら気にもとめないような高速道路の橋脚が、望遠によって切り取られることで空を映すための額縁のように写りました。

RX10 Vの高倍率ズームは、すでに見つけている被写体を大きく写すだけでなく、普段見ているものを違った切り取り方で、新しい被写体として発見するためにも使えます。

▲RX10 V 1/400、F4.0、ISO200、340mm(35mm換算)

▲RX10 V 1/400、F8.0、ISO320、310mm(35mm換算)

300mmを超えるあたりから、ファインダーの中に見える景色は肉眼の印象と大きく変わってきます。並んだタクシーや看板は、圧縮され繰り返しの模様のように。

形を繰り返しとして見せたり、建物の隙間から一部分だけを抜き出したり、高層住宅の窓を平面的な模様として捉えたり。街を場所として説明するより、線や面、色の組み合わせとして切り取りたくなりました。

背景をぼかすだけでなく、離れた建物や人を重ね、街の密度を高く見せる。こうした圧縮効果も、望遠を街中で使う面白さのひとつです。

上は24mmで撮影した写真です。同じ場所から600mmまでズームすると、下の写真の画角になります。今回の街撮りでは600mmをうまく使いこなせませんでしたが、肉眼では細部を確認しづらい被写体まで引き寄せられるため、野鳥や航空機など、撮影する対象が明確な場面では活用しやすそうです。

 

■レンズ交換なしだから、見つけた瞬間に画角を変えられる

24-600mmを一本で使える最大の利点は、被写体に合わせてすぐに画角を変えられることです。

建物全体を24mmで撮影し、少しズームして入口付近を切り取り、最後に遠くの看板や窓を600mmで狙う。これだけ焦点距離が離れていると、レンズ交換式カメラでは複数本のレンズが必要になりますが、RX10 Vならズームリングを回すだけ。

レンズを交換している間に人が移動したり、光の状態が変わったりすることもありません。広角側から望遠側まで行き来しながら、その場で見つけたものへ素早く反応できます。

最高画質だけを追求するカメラではありませんが、ズーム全域で画質に大きなムラを感じにくく、24mmから600mmまでを安定して使えることの価値は、実際に一日歩いてみるとよく分かります。

 

■同じ場所に立ったまま、世界の見え方を変えられる

RX10 Vを街に持ち出して最も面白かったのは、望遠域で遠くのものを大きく撮れたことだけではありません。

24mmでは街全体を眺め、標準域では人や建物を自然に切り取り、200mmを超えると風景の中から一部分を探し、街を形や色として捉える。同じ場所にいても、焦点距離によって被写体の探し方そのものが変わりました。

もちろん、単焦点レンズや限られたズーム域の中で、自分の立ち位置を考えながら撮影する面白さもあります。RX10 Vはそれとは反対に、非常に多くの選択肢を用意してくれるカメラだと感じました。

遠くのものを撮る予定がなくても、24-600mmによって普段とは違う街の見方を楽しめる。旅先だけでなく、見慣れた街を少しだけ違った見え方にしてくれるカメラ。RX10 Vはそんな1台なのかもしれません。

次回はポートレート撮影で、高倍率ズームがどのような使い勝手なのかを検証します。

>> ソニー「RX10 V」

>> 趣味カメラの世界

<取材・文・写真/田中利幸 モデル/朱里(@punta_ma96)>

 

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