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24-600mmでポートレート撮影。ソニー「RX10 V」は広角側こそ面白かった

人物を撮影するなら、背景はボカしたい。ボカすならフルサイズカメラがいいんだよね? そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。

たしかにセンサーサイズが大きいと、ボケやすくはなります。となると、ソニー「RX10 V」の1.0型センサーでは背景をボカした写真は撮れないのか。

一概にそういうわけではないし、そうとも言える。というのが正解になります。では高倍率レンズを持つ1.0型センサーのカメラでポートレート撮影する場合は、どうすればいいのか。

そこにはボケ味だけではない、相手がいるポートレート撮影ならではの撮り方や見せ方があるようです。(全3回の最終回/1回目、2回目)

監修・執筆:田中利幸(たなかとしゆき)|ファッション誌などでブツ撮りやポートレートを中心に活動するフォトグラファー。カメラ・ガジェット好きで自身で運営するブログ「Tanaka Blog」において、カメラやガジェットに関するちょっとマニアックなことを書いている。

 

 

【趣味カメラの世界 #41】

ここまでの2回は、ソニー「RX10 V」を“24-600mmの撮影システム”として捉え、実際に街へ持ち出して、広大なズーム域が撮影者の視点をどのように変えるのかを試してきました。

そして最終回となる本記事では、RX10 Vをポートレート撮影に使います。

ポートレート撮影というと、フルサイズカメラに明るい単焦点レンズを装着し、背景を大きくぼかすようなスタイルを最初に思い浮かべる方も多いと思います。しかし、1.0型センサーと高倍率ズームレンズを組み合わせたRX10 Vは、その正反対に近いカメラかもしれません。

24mmから600mmまでを一本で使えることは、ポートレートでも大きな特徴になります。焦点距離によって人物や背景の見え方、モデルとの距離感も大きく変わります。

 

■人物の大きさを揃えながら24-600mmで撮り比べる

まずはモデルの立ち位置をほぼ固定し、人物が画面内で同じくらいの大きさに写るように、焦点距離を変えながら撮影してみました。

▲RX10 V 1/640、F5.0、ISO400

広角側ではモデルの近くに立ち、ズームするにつれてカメラマンが後ろへ下がっていきます。人物の大きさを同じくらいにすることで、背景の写る範囲や、モデルと背景の位置関係がかなり変わってきます。

広角では周囲の風景が広く入り、望遠になるほど背景に写る範囲が狭くなります。また、焦点距離が長くなるのに合わせて撮影距離も離れるため、手前と奥の大きさの差が小さくなり、背景が人物へ近づいたように見えてきます。

レンズの焦点距離は写真の見た目だけでなく、モデルとのコミュニケーションにも関係してきます。24mmではモデルとの距離がかなり近くなるので、初対面だと少し気まずさを覚えることもあるかもしれません。50〜135mmくらいまではポートレートでも良く使われる焦点距離で、適度な距離感で、会話も普通にできる距離です。200mmを超えると普通の声量で話すのが少し難しくなってきます。筆者はどちらかというと、コミュニケーションを取りながら撮影するタイプなので、あまり望遠になると少し撮影しづらさを感じました。

 

■24〜35mmは、風景と人物を一緒に撮りやすい

今回、ポートレート撮影で試してみて、最も使いやすいと感じたのは、24〜35mm付近の広角側でした。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、34mm(35mm換算)

1.0型センサーはフルサイズセンサーほど大きなボケを得やすくありません。そこで無理に背景をぼかすのではなく、周囲の風景まで写真の一部として取り入れてみると、RX10 Vの特徴が生きてくると感じました。

▲RX10 V 1/800、F4.0、ISO125、35mm(35mm換算)

今回の撮影では、建物や植物など、その場所にあるものを人物と一緒に写すことで、街を歩きながら撮ったスナップのようなポートレートを意識しました。背景を消して人物だけを浮かび上がらせるのではなく、どこで、どのように過ごしていたのかを思い出として残すような写真です。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO200、24mm(35mm換算)

広角側では、全身を入れるような引きでの撮影でも撮影距離が近いため、モデルと会話しながら撮影しやすいのも利点です。細かなポーズを指示するというより、普通に話しながら歩いたり、目についたものへ反応してもらったりすることで、友人と遊びながら撮ったような自然な写真を作りやすくなります。

▲RX10 V 1/1000、F5.6、ISO100、33mm(35mm換算)

 

■標準〜望遠域は撮りやすいが、ボケの扱いが難しい

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、55mm(35mm換算)

50〜100mm付近は人物の形が自然に見え、背景も整理しやすく、モデルとの距離も遠すぎないため、一般的なポートレートとしては撮りやすい焦点距離です。

ただ、RX10 Vの場合は、フルサイズカメラに明るい単焦点レンズを付けたときのように背景が大きくぼけるわけではないので、人物を主題として撮影するには少し難しさを感じました。

▲RX10 V 1/1000、F3.5、ISO1000、85mm(35mm換算)

85mm付近では開放F値がF3.5となり、モデルと背景の距離などを意識すれば、もちろん背景をぼかすことはできます。とはいえ大口径レンズのようなとろけるボケとはいかず、背景によってはやや騒がしく感じることもありました。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO1250、246mm(35mm換算)

1.0型センサーでも、モデルと背景の距離を確保すれば、ボケを大きくできます。標準域よりも人物を背景から分離しやすく、王道ポートレートらしい画を作れました。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO320、55mm(35mm換算)

ただ、RX10 Vで1日ポートレート撮影をしてみて感じたのは、センサーの小ささに起因する被写界深度の深さを活かして、標準〜広角域寄りの焦点距離で、周囲の環境まで含めた人物撮影なのではないかということです。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、24mm(35mm換算)

この日に撮影した写真を見返してみると、一緒に歩いたときの会話まで思い出せそうな気がしてきます。お互いが歩きながら見つけたものを教え合ったり、自然な距離感でその日の思い出を残せていたように感じました。

 

■高速なストロボ同調で日中の光をコントロールする

ポートレート撮影で使ってみて気づいたRX10 Vの利点が、高速なストロボ同調速度です。

一般的なフルサイズミラーレスカメラの場合、通常発光でストロボを同調できるシャッタースピードは1/200〜1/250秒程度です。それ以上にシャッタースピードを上げる場合はハイスピードシンクロを使用しますが、ストロボの光量が大きく低下します。

▲RX10 V 1/1000、F5.6、ISO100、44mm(35mm換算)

RX10 Vは、条件によって最高1/2000秒まで通常発光のままストロボを同調できます。今回の撮影では小型のクリップオンストロボを使用し、明るい青空を残しながら人物へ光を加えてみました。大光量のストロボやハイスピードシンクロを使わなくても、日中シンクロ撮影ができるのはメリットです。

なお、メカシャッターの最高速度はF2.4〜F7.1では1/1000秒、F8以上では1/2000秒となります。それでも一般的なカメラより高速なシャッタースピードで通常発光を利用できるため、小型のストロボでも表現の幅を広げられます。

背景を大きくぼかすのではなく、空や風景をしっかり写しながら光をコントロールする。高速なストロボ同調も、RX10 Vに向いているポートレートの方向性と相性が良いと思いました。

 

■ボケに頼らないスナップ的なポートレートが面白い

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、36mm(35mm換算)

RX10 Vでのポートレート撮影で最も相性が良いと感じたのは、24〜35mm付近で周囲の風景を取り入れた、スナップ的な撮り方でした。

▲RX10 V 1/1000、F4.0、ISO100、34mm(35mm換算)

撮影者とモデルの距離が近いため、コミュニケーションを取りやすく、一緒に歩きながらその場で見つけたものを写真に取り入れられます。大きなボケを作りにくい1.0型センサーも、周囲の風景まで含めた撮り方では弱点になりません。

標準域では素直な人物写真を撮れるものの、ボケが中途半端になりやすく、フルサイズカメラとの差も感じました。望遠側では圧縮効果や大きなボケを作れますが、モデルとの距離が離れるため、撮影のテンポやコミュニケーションは変わります。

RX10 Vは、明るい単焦点レンズの代わりになるポートレートカメラではありません。背景を大きくぼかすことを最優先するなら、フルサイズカメラと明るいレンズを選ぶほうが良いかもしれません。

それよりも、広角側で場所と人物を一緒に写し、必要に応じて一瞬で望遠へ切り替える。友人と街を歩くような距離感で、風景と人物の両方を残す。そう考えると、24-600mmという広大なズーム域と1.0型センサーを搭載したRX10 Vならではの、ポートレートの楽しみ方が見えてきました。

>> ソニー「RX10 V」

>> 趣味カメラの世界

<取材・文・写真/田中利幸 モデル/朱里(@punta_ma96)>

 

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