JR新浦安駅からシャトルバスに揺られること約10分。エントランスに一歩足を踏み入れると目に飛び込んできたのが、サーフボードを立てかけたクラシックカー(プロップ)。その奥には、昔の銀行の窓口を思わせる、番号プレートとペンダントライトが並ぶチェックインカウンター。宿泊客を単なる旅行者としてではなく、1955年のアメリカを舞台にした物語の主人公として迎え入れる――「1955 東京ベイ by 星野リゾート」の滞在は、到着した瞬間からそんな設計思想を感じさせるものでした。
星野リゾートといえば、圧倒的な非日常を定常する「星のや」、温泉旅館の「界」、“街ナカ”ホテルの「OMO」など、こだわりの詰まった宿を数多く手がける100年以上の歴史を持つ、国内有数の総合リゾート運営会社。そのなかでも今回訪れた「1955 東京ベイ by 星野リゾート」は、いい意味でかなり異色でした。

テーマは、世界初のディズニーランドが誕生した1955年前後のアメリカ。公式サイトでも「一歩足を踏み入れれば、初めてディズニーランドが誕生した1955年頃のアメリカへタイムスリップ」とうたわれている通り、「OLDIES GOODIES(古き良き)」をコンセプトに、館内のすみずみまでオールドアメリカンな世界観が徹底されています。
千葉県浦安市という立地から、「“夢の国”の前泊・後泊に便利なホテル」という紹介のされ方をよく目にしますが、実際に宿泊してみると、それだけにとどまらない魅力を感じました。
■外観からは想像できないほど個性的
星野リゾートは「旅を楽しくする」をテーマに、6つのサブブランドと「そのほかの個性的な宿泊施設」を展開しており、1955 東京ベイは後者に属します。2024年6月20日に開業した、星野リゾートとしては千葉県1施設目。地上18階建て、客室数は638室というスケールの大きさも特徴です。
アクセスはJR京葉線「新浦安駅」から無料シャトルバスで約10分、東京ディズニーリゾートからも無料シャトルバスで約30分(いずれも予約不要)。料金は1泊11,500円〜(2名1室利用時1名あたり、税込、食事なし)と、この立地・規模にしては手を出しやすい設定も魅力となっています。
■ロビーで一気に引き込まれた、"モノ好き心"をくすぐる仕掛け
ロビーに足を踏み入れると、落ち着いたトーンの色に、当時流行した鮮やかな色を大胆に組み合わせた配色が広がっていました。BGMも朝はカントリー、夜はジャズやロックンロールと時間帯で変わる凝りようで、テーマパークを出たあとも非日常の余韻に浸れる仕組みになっています。
実はエントランスに置かれたクラシックカーのプロップも、期間限定イベント「California Summer Vacation 1955」(2026年6月18日〜9月14日)の装飾のひとつ(次はハロウィン)。訪れた8月下旬はその真っ最中で、茅葺き風の屋根が付いたバーも、当時流行したティキバーがモチーフとのことでした。ロビーだけでも、写欲が止まりません。
そしてモノメディアを運営している身として刺さったのは、館内のいたるところに置かれたアンティークの小物とソファ。テーブルや椅子、本やおもちゃなど、実際に集められた1950年代のビンテージ品がさりげなく配置されていて、「ここでしか座れないアイテム」が揃っているというのは、モノ好きにとってはたまらないポイントです。
当時物のソファに腰掛け、まったりと過ごす…こんな体験ができるのも、このホテルならでは。
もうひとつ、見逃せないのがさまざまな場所の案内に使われているフォント(文字)。チェックインカウンターの窓口番号は「No.9」「No.10」と時代がかった書体のプレートで示されていたり、「2nd Room」の案内サインには"RELAXING TIME"、コインランドリーの扉には"LAUNDRY Wash & Dry"と書かれていたり、館内のあちこちで当時を感じさせるレタリングが徹底されています。
これは編集者的な視点で見ると、なかなかそそられるポイント。家具や小物の"モノ"だけでなく、文字のデザインにまで1955年のアメリカが宿っている――ここまで徹底されていると、つい館内を歩き回り、隠しアイテムを探したくもなります。
■チェックインもチェックアウトも気にせず過ごせる豊富な空間
館内で特に気に入ったエリアのひとつが、宿泊者ならいつでも自由に使えるパブリックスペース「2nd Room」。ミッドセンチュリーデザインの家具が並び、靴を脱いでくつろげるリラックススペースや、カーテンを引いて半個室として使えるスペースがあり、好きな場所で好きな姿勢で過ごせるんです。滑り台付きのキッズスペースもあるので、子ども連れでも安心。
驚いたのは利用時間の自由度で、プリチェックイン(AM5:00〜手続き可能)後からチェックアウト後PM3:00まで使えるとのこと。早朝到着でも身支度を整えられ、チェックアウト後も荷物を預けてゆっくり過ごせるので、テーマパーク旅ならではの慌ただしさを吸収してくれる、心強い存在といえます。
それに限らず、宿泊時における、チェックインまでの時間とチェックアウト後の時間という何気ない悩みの種を解消してくれるのは、本当にありがたいサービスです。
■寝るだけじゃない、遊べる客室。コンセプトルーム「50sスターダムルーム」
エントランスで感じた「宿泊客を物語の主人公にする」という設計思想が、もっとも色濃く表れていたのが、2室限定のコンセプトルーム「50sスターダムルーム」。(2026年7月1日宿泊開始、1泊1万6000円〜、38㎡、定員4名)。部屋は「楽屋」と「オンステージ」の2エリアで構成されており、50年代アメリカのスターになりきって過ごせる仕掛けが施されています。
入口側の楽屋エリアには、丸いライトが鏡を囲む"ハリウッドミラー"仕様のドレッサーがあり、鏡にはルージュでメッセージが書かれています。ジュークボックスをモチーフにしたウォールハンガーにはステージ衣装がかかっていて、実際に手に取って身につけられるのも面白いポイント。
奥側のオンステージエリアは小上がりになっていて、頭上ではミラーボールが回り、壁にはネオンサインが輝きます。
マイクを握れば、思わず声を上げたくなるくらい、ステージに立ったスターの気分に浸れるかも。向かいには50年代アメリカンダイナーをイメージしたソファ席があり、窓の外にはパパラッチの姿が描かれているという演出も凝っています。さらに実際に聴けるレコードプレーヤーと数種類のレコードも用意されていて、テレビを置かない選択をすることで、部屋をエンターテインメント化した好例といえそうです。
■通底したコンセプトの、エンターテインメントな食体験
食事にも、このホテルのこだわりが色濃く出ているポイント。チェックインを済ませたあとは、オーシャンビューの「1955 Seaside Cafe」(※夏期間限定で、8月31日で提供終了)で一息。期間限定のサマースイーツプレートは、ブルーのゼリーで海を、クッキーでビーチを表現しています。貝殻型のクッキーやチョコ、グミの魚は、自分で好きなものを選んで飾る体験型。海を眺めながら涼しい店内で過ごすちょうどよいひと時でさえ、思い出に変わります。
夜は「Cafeteria」で、開業2周年のタイミングでリニューアルしたばかりの新メニューをひと通り試食。
オリジナルのビーフソーセージを使った「ビーフホットドッグ」、南部の家庭料理をルーツに持つカレー風味の「カントリーキャプテン」、濃厚なチーズソースをまとった「マカロニチーズ」、クラシックな「シーザーサラダ」、アサリの旨みが効いた「クラムチャウダー」、温かいブラウニーに冷たいバニラアイスを重ねた「チョコレートブラウニー」。正直、アメリカンフードをファストフード以外でちゃんと食べる機会は普段ない(そもそも知らない)のですが、これが新鮮で、その美味しさには素直に驚きました。
食後には、夏限定の「クールサマースノーコーン」(全5種、各500円)も追加で注文。50’s当時、海岸線の遊歩道沿いで親しまれていた移動販売をイメージした“ワゴン”で、ひとつずつ丁寧に作られていました。ソフトクリームとは比べ物にならないほど凝った工程で、思わず見入ってしまいました。
ちなみに10月31日までの期間は、レトロアメリカンな空間で収穫祭を楽しむイベント「OLDIES HALLOWEEN NIGHT」を開催中。Cafeteriaではパンプキンパイサンデー 1500円トリート‧キャラメルアップル 1400円を各食限定20食提供中。ハロウィン気分を味わいたい人にはぴったりです!
翌朝は、ピンクベージュの壁とフローラル柄のカーテン、六角形のタイルを組み合わせた内装の「Restaurant」で。オーシャンビューで、朝から気分が上がる食体験を楽しめます。
目移りするほど豊富な和洋ビュッフェのなかで選んだのは、パストラミビーフとキャベツソテー、チェダーチーズを挟んだサンドイッチを鉄板で焼き上げる「ルーベンサンド」。アメリカの定番サンドウィッチとのこと。知らないアメリカに出会えた朝でした。
■もう一度行きたくなる、旅の目的になり得るホテル
そしてなんといっても見逃せないのが、季節ごとのイベント。体験したのはちょうど夏の「California Summer Vacation 1955」が実施されていましたが、館内がこのテーマに沿って彩られ、食体験も含め全体に統一。気分を盛り上げてくれました。
現在開催中の「OLDIES HALLOWEEN NIGHT」に加え、冬は「OLDIES COLA HOLIDAY 1955」、そして年明けは「American Candy Party 1955」がテーマだそう。訪れるたびに違う顔を見せてくれる仕掛けが年間を通して用意されています。
1泊2日過ごして感じたのは、東京ディズニーリゾートの前泊・後泊地として便利なだけでなく、館内で過ごす時間そのものが十分に旅の目的になり得るホテルだということ。アンティーク家具やフォントを追いかける時間ももちろん楽しかったのですが、それ以上に「また来たい」と思えたのは、2nd Roomをはじめとするのんびり過ごせる空間の多さと、率直に美味しかった食事。そして東京駅から30分ほどで着くという立地で、非日常を体験できる気軽さ。ディズニーランドに興味がないため念頭になかったエリアでしたが、想像以上に快適で、ちょっとストレスが溜まったら気分転換に足を伸ばしたくなりました。
【1955 東京ベイ by 星野リゾート】
所在地:〒279-0013 千葉県浦安市日の出7-2-3
電話:050-3134-8097(1955 東京ベイ by 星野リゾート予約センター)
客室数:638室(地上18階)
チェックイン:15:00/チェックアウト:11:00
料金:1泊11,500円~(2名1室利用時1名あたり、税込、食事なし)
・ ゴロゴロ寝台付 スーペリア:12,000円~(最大4名)
・ ゴロゴロ寝台付 デラックスコーナー:19,000円~(最大6名)
・ 50sスターダムルーム:16,000円~(38㎡、定員4名、2室限定)
アクセス:JR京葉線「新浦安駅」からバスで約10分(無料シャトルバスあり、予約不要)/東京ディズニーリゾート®から無料シャトルバスで約30分(予約不要)
<写真・文/澤村尚徳(GoodsPress Web編集部)>
- Original:https://www.goodspress.jp/reports/747043/
- Source:GoodsPress Web
- Author:GoodsPress Web