ホンダの「CB400スーパーフォア(SF)」といえば、長年に渡ってホンダの中型バイクの代名詞的な存在でした。教習車にも採用されていたことから、このバイクで免許を取ったというライダーも少なくないはず。ただ、2022年をもって残念ながら生産が終了していました。

このモデルがなくなったことで、ホンダの400cc 4気筒マシンは消滅。日本市場だけに限られる400ccクラスの4気筒バイクはもう出てこないのではないかとも思われていました。そんな中にあって、新型モデルとして「CB400SF Eクラッチ」が登場。多くのバイクファンに歓迎されているこのマシンがどんな仕上がりとなっているのか、歴史を振り返りながらレポートします。
■多くのライダーを育てた名車
初代の「CB400SF」が生まれたのは1992年のこと。当時はレーサーレプリカブームが下火となり、カワサキ「ゼファー」を皮切りにネイキッドブームが始まった頃でした。空冷エンジン車も少なくない中で「CB400SF」は水冷4気筒エンジンを搭載しており、走行性能でも高い評価を獲得。
当時行われていたネイキッドレースでも活躍し、1995年にはレース向けにビキニカウルやハイカム、アルミサイレンサーを装備した「Version R」も発売されました。
そして1999年には低回転域と中回転域で作動するバルブ数を可変させる「HYPER VTEC」機構を採用。6750rpmを境に排気音まで変わるこの機構は「CB400SF」シリーズを語る上ではずせない存在となり、その後も「HYPER VTEC SPECⅡ」「HYPER VTEC SPECⅢ」「HYPER VTEC Revo」と進化していきます。
2005年にはハーフカウルを装備した「CB400スーパーボルドール」も追加に。2007年にはインジェクション化されるなど、着実に進化を遂げていきます。
サーキットでも通用する走行性能の高さだけでなく扱いやすさも両立しており、教習車としても長らく活躍。このマシンでバイクに乗り始めたというライダーも少なくないほど、支持を集めていたモデルでした。
2022年に生産が終了してからは、プレミアム価格で取り引きされるほどで、ホンダだけでなく日本を代表する中型バイクだったといえます。
■新設計エンジンに「Eクラッチ」を内蔵
そんなマシンの復活だけあり、初お披露目された今年のモーターサイクルショーでは大きな話題となりました。価格がいくらになるのか? も注目されましたが、発売されてみれば99万8000円という価格を実現。この時代に新規の4気筒エンジンを開発しただけでなく、100万円を切る価格で発売されたことは多くのバイクファンに歓喜の声で迎えられました。
このマシンは中国市場などで販売される「CB500SF」と同時に開発されました。グローバル市場で販売が見込まれるモデルと同時開発することで、この価格も実現できたといえますが、エンジンはボア/ストロークともに変更されるなど国内モデルとしてもかなり作り込まれています。
搭載されるエンジンは完全新設計の水冷4気筒。先代モデルに搭載されていたパワーユニットから考えると30年以上ぶりの新規エンジンとなります。最高出力は58PS/11500rpmで先代モデルに比べると2PSのパワーアップを実現。最大トルクは38Nm/9750rpmを発揮します。美しく4本並んだエキゾーストパイプは、ホンダ初の400cc 4気筒マシンである「CB400フォア」をオマージュしたデザインに仕上げられています。
もうひとつのトピックは、変速時だけでなく発進・停止時もクラッチ操作が不要となる「Eクラッチ」システムをエンジンに内蔵したこと。
これまでの「Eクラッチ」ユニットは車体右側に外付けされていましたが、エンジンに内蔵されたことでデザインがスッキリしたほか、ライダーの足に当たることもなくなり、重量バランスも向上しています。また、電子制御スロットルと組み合わせることで、シフトダウン時にはブリッピングも自動で行われるなど変速もスムーズになっています。
足回りはフロントに倒立フォークを採用し、ラジアルマウントのブレーキキャリパーをダブルで装着。リアはプロリンク式のモノショックとなり、現代的なサスペンションが採用されています。
先代までのトラディショナルなリアの2本サスから変更されたこともあり、車重は前モデルより14kgもの軽量化を果たした187kgとなりました。
■軽快な車体と全域で気持ちがいいエンジン
シート高は先代モデルより25mm高い780mmですが、プロリンク式のリアサスが適度に沈み込むため、足付き性は同等を確保しているとのこと。小柄なライダーや初心者にはありがたいポイントです。ハンドルはやや低く幅広くなっていて、フロントに荷重しやすい現代的なライディングポジションになっていると感じました。
走り出すと、まず実感できるのが車体の軽さ。車体が14kg軽くなっているのに加えて、重量物が車体の中央付近に集中しているため、取り回しから交差点でのバンクまで操作が全て軽快です。エンジンの出力も4気筒らしく低回転域からスムーズなので、街乗りでも扱いやすくストレスがありません。「Eクラッチ」のおかげで、発進から停止までクラッチを握る必要がないのが、扱いやすさをさらに向上させています。
高回転までエンジンを回すと、4気筒らしい澄んだ排気音が耳に届きます。新型では「HYPER VTEC」が装備されなかったことを残念がる声もありますが、高回転まで回した際の気持ち良さは全く失われていません。逆に「HYPER VTEC」では低回転域が盛り上がりに欠ける感がありましたが、新型では低い回転数でも大きめにアクセルを開けると迫力ある吸気音が響いて右手を捻るのが楽しくなります。
これは2本あるエアクリーナーの吸気ダクトを左右で長さを変更し、スロットルボディのエアファンネル長も変えることで音を作り出しているとのこと。低回転域からトルクフルな特性もあって、全域で楽しく乗れるエンジンに仕上がっていました。
軽快に動く車体と、全域で気持ちいいエンジンの組み合わせがワインディングで楽しくないわけがありません。試乗した日は天候が雨模様で路面もウェットだったのですが、それでも右に左に車体をバンクさせながらコーナー出口に向かってアクセルを開けていくのが楽しくて、ついつい時間を忘れて走り回ってしまう面白さがありました。特に、コーナー手前でシフトダウンした際に、自動でブリッピングしてくれる際の排気音はこのマシンならではの魅力だと言えます。
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街中からワインディングまで、あらゆるシーンで”操る楽しさ”が味わえる新型の「CB400SF Eクラッチ」。特に電子制御を充実させながら、車体重量を軽く抑えていることは評価に値するでしょう。長距離ツーリングも快適にこなせる扱いやすさも備えていて、「Eクラッチ」の採用がさらに快適性と面白さをアップさせています。
国産中型バイクの新たなスタンダードと呼ぶにふさわしい完成度で、新時代の名車といえるモデルです。そんなマシンを100万円を切る価格でリリースしてくれたことに感謝したいと思います。
【SPEC】
・価格(消費税込):99万8800円〜
・サイズ:2110×770×1085mm
・シート高:780mm
・車両重量:187kg
・エンジン:水冷4気筒DOHC4バルブ
・総排気量:399cc
・最高出力:58ps/11500rpm
・最大トルク:38Nm/9750rpm
<取材・文/増谷茂樹>
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