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AirTagの音を消す器具が販売中止〜ストーカー目的の無断取り付けは規制対象

AirTagのスピーカーを壊して音を消すアクセサリー「Silencer」が、発売からわずか13日で販売中止になりました。主な理由はストーカーに悪用されるとの批判を受けたためです。

日本国内では、2025年に初めて紛失防止タグを使ったストーカー事案がGPS機器を上回りました。同年12月からは、恋愛感情などを満たす目的で紛失防止タグを相手に無断で取り付ける行為がストーカー規制法の規制対象になっています。

AirTagの音を消す器具が販売中止

アクセサリーメーカーのElevation Labは2026年9月30日、AirTag用の「Silencer」を9.99ドルで発売しました。AirTagの裏蓋と電池を外し、専用の器具にはめ込みハンマーなどで叩き、内部スピーカーを破壊するという単純な仕組みです。もちろん元には戻せません。

同社は、自転車などに付けたAirTagを、盗んだ人に気づかれないための製品だと説明しました。これに対し海外メディアのジャーナリストが、ストーカーやドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者を助けると強く批判しました。

同社のCEOは当初、知らないAirTagが一緒に動けば通知が届くと反論。しかし、10月13日に顧客宛のメールで販売終了を告げ、通知を受け取れない相手の追跡に使われうると認めました。競合他社に同様の製品を作らせないため、特許を行使するとも発表しています。

AirTagの音は通知が届かない人への警告

盗んだ人がスマートフォンを持っていれば、音を消してもAirTagの存在には気づかれます。他人のAirTagと一緒に移動すると、通知が届くためです。ただし、音が鳴らなければ、AirTagを見つけ出すのは難しいでしょう。Elevation Labの、盗難対策として役立つという主張にも一理あります。

しかし、サイレント化による見つけにくさは、ストーカーにとっても有利に働きます。AirTagを仕込まれた被害者は、音が鳴らないためにどこにあるのか特定しづらいからです。今回、Silencerが販売中止になった理由は、まさにこの点でした。

通知が届かない人にはAirTagの音だけが頼り

AirTagは、持ち主から離れて一定の時間がたったあとに移動させると警告音が鳴ります。この仕組みは初代AirTagの発売当初から、iOS対応のデバイスを持たない人のために提供されてきました。

通知が届かない主なケースは以下の通りです。

総務省の令和7年通信利用動向調査によると、6歳以上の約2割はスマートフォンを持っていません。ほかのケースに当てはまる人を加えると、さらに多くなります。こうした人には、AirTagの音が、追跡されていることに気づく唯一の手がかりです。

AirTag(第2世代)は音量を50%アップ

2026年1月に発売されたAirTag(第2世代)は、スピーカーの音が前世代より50%大きくなり、最大2倍離れた場所から聞き取れるようになりました。通知の仕組みが整ったあとも、Appleが音による警告の改良を続けていることがうかがえます。

新しいAirTagの音量を初代と比べた検証では、Apple Watchで測った音の大きさが最大77デシベルとなり、初代を11デシベル上回りました。Silencerは、こうした音量の改良を打ち消してしまう製品だったといえます。

ストーカー相談で紛失防止タグがGPS機器を逆転

警察庁がまとめた、GPS機器と紛失防止タグが使われたストーカー事案の相談件数は次の通りです。犯罪として検挙された件数ではありません。また、AirTag以外の紛失防止タグも含みます。

年GPS機器など紛失防止タグ
2021年(令和3年)152件3件
2022年(令和4年)404件113件
2023年(令和5年)486件196件
2024年(令和6年)513件370件
2025年(令和7年)511件679件

2025年の紛失防止タグの相談は679件で、前年の370件からほぼ倍増しました。GPS機器などの511件を、初めて上回っています。改正法の施行は12月30日なので、2025年の相談の大半は規制の対象外だった時期のものです。

2021年の3件と比べると、約226倍に増えています。ただ、2021年はAirTagが発売されたばかりで、紛失防止タグがまだ出回る前でした。注目したいのは、GPS機器の相談が500件前後で横ばいになった2023年以降も、タグの相談だけが増え続けている点です。

改正ストーカー規制法で紛失防止タグも対象に

改正前のストーカー規制法の対象は、自ら位置情報を記録・送信するGPS機器などだけでした。周りのスマートフォンを通じて位置を伝える紛失防止タグは、規制できなかったのです。2025年12月30日施行の改正法で、紛失防止タグも対象に加わっています。

位置情報の取得と取り付けが規制対象に

恋愛感情が満たされなかったなどの恨みを晴らす目的の場合に、規制の対象となる行為は次の通りです。

警察庁は、相手の車にタグを無断で取り付ける例をあげています。こうした行為が繰り返されるおそれがあれば、警告や禁止命令の対象になります。実際に繰り返した場合は、ストーカー行為罪に問われます。

罰則は次の通りです。

対象罰則
ストーカー行為罪1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
禁止命令などに違反してストーカー行為をした場合2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
禁止命令などへの違反のみ6カ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金

被害者の申し出がなくても警察が警告可能に

改正前は、警察が警告するには被害者からの申し出が必要でした。改正後は申し出がなくても、警察自身の判断で警告できるようになりました。被害者が声を上げにくいケースでも、警察が先に動ける仕組みです。

配偶者暴力防止法も改正され、裁判所の接近禁止命令などで禁止される行為に、紛失防止タグの位置情報の取得と取り付けが加わりました。なお、自転車の盗難対策でAirTagの音を消すこと自体は、ストーカー規制法の対象ではありません。

国はタグのメーカーにも悪用防止を働きかけ

2026年7月28日に改訂された国のストーカー総合対策には、紛失防止タグを開発・販売する企業に、悪用防止対策を講じるよう働きかける方針が盛り込まれました。法律で使う人を取り締まるだけでなく、メーカーにも悪用されにくい製品づくりを求めています。

AirTagの登場から今回の販売中止までの、悪用対策と規制の主な動きは次の通りです。

時期主な動き
2021年4月初代AirTagが発売。持ち主から離れたAirTagは、移動すると音で知らせる
2024年5月AppleとGoogleが、iPhoneとAndroidの両方で他人のトラッカーを通知する仕組みを提供
2025年12月改正ストーカー規制法が施行。紛失防止タグの無断の取り付けなどが規制の対象に
2026年1月AirTag(第2世代)が発売。音量が前世代より50%アップ
2026年3月警察庁が2025年の統計を公表。ストーカー相談で紛失防止タグがGPS機器を上回る
2026年7月国のストーカー総合対策に、タグのメーカーへの働きかけが加わる
2026年10月Silencerが批判を受けて販売中止

AirTagの発売以降、AppleとGoogleによる通知の仕組みや、国内の法規制が段階的に整ってきました。今回の販売中止は、Apple以外のアクセサリーメーカーにも悪用防止への配慮が求められていることを示す出来事といえそうです。

他人のAirTagに気づくための設定

Silencerがなくても、スピーカーを無効にする方法は以前から知られていました。AirTag(第2世代)のスピーカーも、分解すれば比較的簡単に無効化できる可能性が指摘されています。音の鳴らないAirTagもある前提で、備えておく必要がありそうです。

トラッキング通知をオンにする

iPhoneでは「設定」>「通知」>「トラッキング通知」で「通知を許可」をオンにし、位置情報サービスとBluetoothも有効にしておきます。AirTagの通知にはiOS14.5以降、AirTag以外のトラッカーへの対応にはiOS17.5以降が必要です。

機内モードにしていると通知は届かないため、移動中に機内モードを使う人は気をつけてください。Androidでは、6.0以降であれば、一緒に移動している他人のトラッカーが自動で通知されます。

家族の持ち物も一緒に確認

家族にスマートフォンを持たない高齢者や子どもがいる場合は、かばんや車に見覚えのない小さな機器が付いていないか、ほかの家族が一緒に確かめるとよいでしょう。音の警告にしか頼れない人ほど、周りの目が大きな助けになるはずです。

音が鳴らないときや場所を特定できないときは、持ち物を一つずつ直接確かめる方法があります。ただし、身の危険を感じたら無理に探さず、安全な場所へ移動して警察に相談してください。

Photo:MacRumors

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