インテルとグーグルはChromebookを皮切りに未来に向けた密接なコラボを計画

巨大なチップメーカーIntel(インテル)は、ここ数カ月で戦略の見直しに取り組んでいる。その一環として、モバイルチップ事業をApple(アップル)に売却し、コネクテッドホーム部門の買い手を探していると伝えられている。そして、長年同社のビジネスの中心となってきたPCに対して、これからどのように取り組むべきか検討するという、難しい課題にも取り組んでいる

後者に関する戦略の一部は、今回のCES 2020で大々的に発表された。インテルは米国時間の1月6日、Google(グーグル)とのより強固なパートナーシップによって、Project Athena上で実現するChromebook用のチップと仕様を設計することを発表した。Project Athenaは、昨年初めて発表されたフレームワークであり、設計仕様と技術仕様の両方をカバーするもの。将来の高性能ラップトップを開発することを目的としている。仕事だけでなく、メディアストリーミング、ゲーム、エンタープライズアプリケーションなど、出先でも使えるものを目指す。当然ながらインテルのチップを利用する。

その要求仕様に含まれるのは、指紋センサー、押しボタン、あるいはディスプレイを開くことで即座に起動する「高速ウェイク」、Intel Core i5、または同i7プロセッサー、Ice Lakeベースの設計、バッテリー寿命と充電機能の改善、WiFi 6、タッチディスプレイ、2イン1デザイン、幅の狭いベゼルなど、多岐にわたる。

今回のCESでは、こうしたAthena仕様に基づいて設計された最初のChromebookが、Samsung(サムスン)とAsus(エイスース)から、それぞれ発表された。インテルによれば、さらに多くの機種が登場するという。そしてインテルの基調講演のステージにはグーグルも登場し、このミッションに対する両社のコミットメントが確かなものであることを強調した。

「AthenaをChromebookに導入するために、グーグルとのパートナーシップを深め、さらに前進させようとしています」と、インテルのクライアントコンピューティンググループのEVPおよびGMであるGregory Bryant(グレゴリー・ブライアント)氏は、今日の発表に先立つTechCrunchとのインタビューで述べた。「これらの仕様をデバイスメーカーがうまく活用できるよう、グーグルとかなり密接に協力しています」。

インテルにとっては、Athenaを利用するChromebookのシリーズが登場することは重要だ。というのも、Chromebookは非常に人気が高く、そこにインテルのプロセッサーが喰い込めるようになるからだ。Chromebookを買おうというユーザーは、セキュリティの高さなどを求めてグーグルのサービスにアクセスしたい人や、アプリのエコシステムを利用したいと考えている人だ。

そしてインテルだけでなくグーグルにとっても、Chromebookの仕様を強化することは、収益とビジネスを成長させるという観点から重要なのだ。

「これはグーグルにとって大きな変化です」と、同社のChromeOS担当副社長であるJohn Solomon(ジョン・ソロモン)氏も、発表に先立つインタビューで語っている。「Chromebookは、最初は教育分野で成功しました。しかし、今後18か月から2年の間に、より広い市場を求めて、消費者や企業ユーザーに拡大することを計画しています。そうしたユーザーは、より高い期待を抱き、デバイスの使い方についても幅広いアイデアを持っています。それを考えれば、もっと高いパフォーマンスの提供が不可欠となるのです」。

今回の取り組みは、ちょうど難しい時期に向けてスタートを切ることになった。一般的に言って、最近のラップトップ市場は窮地に追いやられている。全体として、パーソナルコンピューター市場自体も衰退しつつあり、それが今後数年間続くと予測されているからだ。

しかし、インテルとグーグル、そしてその他のハードウェアパートナーによるコラボレーションから生まれてくるようなマシンに関しては明るい希望もないわけではない。IDCは、2イン1デバイスの繁栄を予想している。つまり、キーボードを取り外してタブレットとして使うことも可能なコンバーチブルなPCのことだ。また、超薄型のノートブックも「同期間で全体に5%成長すると予想される」としている。それに対して、2019年から2023年までの期間のPC全体の年間成長率はマイナス2.4%だ。仮に成長するとしても、それほど大きなものは見込めない。

それに比べれば、スマートフォン市場にはまだ強みがある。複数の市場がスマホとしての飽和状態に達し、消費者のアップグレードが遅いなど、あれこれ問題がないわけではないのは事実としてもだ。

こうした状況ををひっくるめて言えば課題があるということ。それゆえインテルは、Athenaのようなプロジェクトを大きく推進させる必要があるわけだ。というのもインテルは、パソコン用のプロセッサーを製造しているため、その命運はPCデバイスと一蓮托生の関係にあるからだ。

今月初めまでは、Athena仕様に適合して開発されたラップトップは、すべてWindows PCで、現在までに25機種を数えていた。しかしインテルは最初から、Chromebookもそのシリーズの視野に入れていることを明言していた。そして、今年の年末までに、Athena仕様のデバイスを75機種まで増やす、つまり2020年中に50機種を追加するつもりでいる。

Chromebookは、他の市場の成長を上回っているように見えるため、インテルにとって注力するのに適した領域と言える。OSとして、いくつかの明らかな欠点があるのも確かだ。Chrome OSは、ネイティブツールの数も少なく、アプリとの統合も弱い「貧弱」なOSと認識されてきた経緯がある。それでもIDCによれば、2019年の第4四半期の成長率は、前年比で19%だった。ホリデーシーズンを加えれば、伸び率はもっと高いと考えられている。そして米国でのChromebookの市場シェアは、NPD/Gfkによれば、昨年11月時点で約27%に達している。

ここで興味深いのは、インテルとグーグルが、ともに成長を目指して採用している協力的なアプローチだ。これはアップルスタイルのモデルで、同社のハードウェアビジネスに垂直的に統合されるもの。それにより、形状と機能に関して、統制のとれた統一的なアプローチを確保している。そこでは、ハードウェアの仕様は、特にアップルが同社のデバイスで動作することを想定する範囲のサービスに対応するように定められている。それは結局、アップル独自のネイティブなサービスやアプリではない範囲でデバイスに関わろうとするサードパーティに対しては、非常に具体的な要求を突き付けることになる。

グーグルは、ラップトップを製造したり、プロセッサーを開発するビジネスを(少なくとも今のところ)展開しているわけではない。またインテルも、プロセッサー以上のものを開発するにはほど遠い状況だ。そのような両社がここで策定したのは、アップルのような垂直統合されたビジネスから得られるものに似た、規律のある仕様だ。

「すべては、最高の製品を開発し、最高の体験を提供するためです」と、ブライアント氏は述べた。

「過去18か月にわたるインテルの支援と、緊密なエンジニアリング上のコラボレーションがなければ、私たちはこれを成し遂げることができませんでした」とソロモン氏は付け加えた。「これは、これまでには見られなかった革新であると同時に、この領域でさらに多くのものが得られるようになるきっかけを示すものなのです」。

そして興味深いことに、ブライアントとソロモン両氏は、Athenaの採用と彼らのコラボレーションが、ラップトップ以外の領域にも拡張する可能性を排除しなかった。

「私たちの仕事は、PCを素晴らしいものにすることです。PCを購入する価値と理由を消費者に提示することができれば、PCを生き永らえさせることができます」と、ブライアント氏は語った。そして、インテルとしては、仕様を進化させ続けていることを付け加えた。

「フォームファクターについて言えば、デュアルディスプレイを搭載したデバイスも可能ですし、さまざまな技術を搭載した、いろいろな形状のデバイスも考えられます」と同氏は言う。「私たちは、本日示したものを拡張し、さらにバリエーションを加えることを目指しています」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)


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