AI学習環境「atama+」を学習塾「能力開発センター」の兵庫や北陸など全77教室が導入、空いた時間でコミュ力強化

独自開発のAIとタブレットを利用した効率的な学習環境の提供を目指すatama plusは2月13日、兵庫県を拠点とするティエラコムとの提携を発表した。ティエラコムは、兵庫県下の明石市や加古川市、姫路市ほか、北陸の石川県、富山県、福井県、九州の長崎県、福岡県、熊本県、そのほか岐阜県と山口県で「能力開発センター」をはじめ、さまざな学習塾や経営している企業。今回の提携で、能力開発センターの全77教室のすべてにatama plusのAI学習環境「atama+」が導入される。

atama+を使った学習の様子

atama+は、AIが生徒の得意・苦手・目標・過去の学習内容などに応じて、生徒それぞれに最適な学習教材を自動作成するのが特徴。数学の正弦定理が苦手な生徒の場合、正弦定理の問題を片っ端から問いて身体で覚えるのではなく、平方根や三角形の内角などの基礎的な要素を理解させることに重点を置くのが特徴だ。生徒の苦手分野を特定するためにさまざまな角度からatama+が出題し、その生徒が何を理解していないのかを把握する。そして、その苦手分野を補う5分程度の短い動画教材や例題などを組み合わせたカリキュラムを自動で生成する。

対応教科は、高校生向けが数学、英語、物理、化学、中学生向けが数字と英語。現在大手学習塾の3割程度、約500教室以上への導入が進んでおり、atama+導入後の平均学習時間(習得までの時間)は、数Iで16時間、数Aで15時間。ちなみに、学習指導要綱で規定されている学校での授業時間は2科目合計で146時間だ。

多人数が同時の受ける学校の授業では、生徒それぞれの理解度や習熟度がまちまちでどうしても進捗に時間がかかってしまうが、atama+では自分のウィークポイントをAIが解析し、自分専用の問題が自動生成されるので、苦手な問題を短時間で克服できるのが強みだ。また、教える側の講師にはコーチ向けアプリ「atama+COACH」を用意しており、学習時間、習熟度、進捗状況などを確認しながら生徒一人ひとりにあった学習指導を進められる。AIが塾講師の仕事を奪うわけでなく、講師にもより効率的な働き方を提供するわけだ。

ティラコムでは、2017年の冬季講習からトライアルとしてatama+の体験受講をスタート。2018年のセンター試験の直前にatama+で数学I・Aを20時間学習した高校3年生83名の平均点数が、37.3点から51.7点にアップし、生徒へのアンケートでも9割以上が高評価だったことから本格導入を決めた。

能開個別AIホロンでのatama+の授業風景

2019年には、個別指導「能開個別ホロン」の全教室にatama+を導入し、ブランドを「能開個別AIホロン」に変更。そして2020年3月からは能力開発センターの全教室にatama+を導入する。これに伴い、ティラコムが運営する個別指導と集団指導の学習塾の全77教室のブランドを「能力開発センター」に統合し、「集団コースplus AI」、「個別コースwith AI」の名称で展開する。atama+の全教室導入によって、ティエラコムが経営する学習塾でatama+を利用する中学生、高校生は前年比約4倍に増加するとのこと。

ディスカッション形式の講座風景

さらに両社ではatama+の導入で各教科の習得時間が短縮されることによって生まれる時間に、課題解決能力を養うための講座「新国語」を開設する。新国語では、社会のさまざまな課題を中学生・高校生を交えたグループでディスカッション、多様な考えをまとめてプレゼンテーションする時間を設ける。さらに、その内容を各自に小論文にまとめてもらい、添削指導する体制も整える。

atama plus代表取締役の稲田大輔氏

atama plus代表取締役の稲田大輔氏は以前のTechCrunchの取材で、「日本では、必修科目を習得するための学習時間が海外に比べて非常に長く、自己表現力やコミュニケーション能力、グループで協力して作業するといった『社会でいきる力』の教育・習得に時間が取れていない」と語っていた。今回の能力開発センターにおける新国語の新設は、atama plusが目指す日本の学習環境の改革に一歩近づいたと言えるのではないか。

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