Luckin Coffee(ラッキンコーヒー)は、現代史で最も急成長したスタートアップの1社であり、2019年にIPOする見込みが最も高い会社の1つだった。だが数億ドル(数百億円)の不正の可能性があると同社が開示した今、旅は終わりの始まりの様相を見せている。
同社は米国6月26日にSECに提出した声明で、NASDAQ(ナスダック総合指数)による上場廃止の決定に異議を唱えることはないと表明した。中国に本拠を置くコーヒーチェーンである同社は、市場から退出させたいという意向を示す通知を証券取引所からここ数週間で2通受け取っていた。売買は6月29日火曜日の朝には正式に停止される。つまり、少なくとも当面は同社株が売買される最後の日は6月28日月曜日となる。
Luckinの物語は非常に刺激的だった。同社は創業わずか2年のスタートアップで、コーヒー「ショップ」を立ち上げ、世界中で存在感をもつStarbucks(スターバックス)よりも速くコーヒーを届けていた。Starbucksは中国に進出して20年以上、消費者に対し伝統的なお茶文化からの転換を働きかけてきたが、中国全域でLuckinに追い抜かれた。
その成長が昨年のデビューの際、ウォールストリートから大きな関心を集めた。目まぐるしい成長により同社の株価は急上昇した。ただ1つ問題があった。成長は明らかに現実からほとんどかけ離れていた。
同社の取締役会は今年4月、3億ドル(約320億円)の帳簿上の不正行為の調査を始め、関連会社が大量のコーヒーを購入したと見せかけ、売り上げを水増ししたことを発見した。この戦術により売上高と売上数量を増やし、会社の利益率を良く見せた(真面目な話、対価をもらって何も提供しないというのは非常に利益率の高いビジネスだ)。もちろん、これが10-Kフォーム(年次報告書)に記載され、SEC(証券取引委員会)に提出されれば不正となる。
これが消費者による同社アプリのダウンロード急増(未訳記事)を引き起こした。会社がつぶれる前に、クーポンやその他の景品を実際にコーヒーと交換しようと大挙して押し寄せたためだ。
上場廃止が差し迫った今、米国および世界中で会計基準の質が大きく懸念されている(未訳記事)。公開会社会計監視委員会を通じてではあるが、米国が中国で会社の帳簿記録を実際に検証する能力には限界がある(PCAOB記事)。EYのような監査人の検証にもかかわらず、Luckinのような不正スキャンダルが繰り返し発生してきた。EYはLuckinの監査人を務める(ウォールストリート・ジャーナル記事)。
議会は現在、現地の会社資料にアクセスできる法律制定に取り組んでいる(ウォールストリート・ジャーナル記事)。米国の市場にとっての不名誉を挽回するためだ。
しかし今週騒ぎになったのはLuckinの不正だけではない。ドイツのフィンテック決済会社であるWirecard(ワイヤーカード)は今週、ミュンヘンの裁判所で破産を正式に発表した。債権者からの数十億ドル(数千億円)の融資は凍結される可能性が高い。ドイツのイノベーションシーンにとっては大きな挫折となった。Wirecardは、ドイツのトップ企業で構成するDax 30インデックスの中では珍しいスタートアップだった。
Luckinに関しては、さらに多くのドラマが展開中のようだ。銀行は、会社とその会長の陸正耀(Lu Zhengyao)氏から資金を回収しようとしている(ウォールストリート・ジャーナル記事)。たぶん同社は将来、もっと多くの幸運(Luckin)に恵まれるだろう。
画像クレジット:Victor J. Blue/Bloomberg / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2020/06/28/2020-06-26-luckin-coffee-will-unluckinly-delist-from-nasdaq-following-fraud-allegations/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Danny Crichton
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