凸版印刷株式会社(以下、凸版印刷)は、人体に関する様々なデータの活用を目的とした研究開発施設「トッパンバーチャルヒューマンラボ」を2020年12月23日に設立した。
個々人の人体情報を一括管理し、さまざまな分野に応用できる自由なプラットフォームの構築に向けて、まずは立体的に顔計測ができる装置「ライトステージ」を導入。今後は人体に関する計測機能を拡充させ、同時に多様な領域で事業展開を進めていくという。
高まるパーソナライズ需要と課題
さまざまなサービスに対して、パーソナライズの需要が高まっている昨今。そうした傾向のなかで、個人の身体的特徴や健康状態に合わせたサービスを提供するビジネスが生まれ始めている。
しかし、ユーザーにとっては複数のサービスで個人情報の登録や身体計測などの手間を強いられ、煩わしさの元になっていたのも事実。そこで凸版印刷が考案したのは、人体情報を一括で管理し、外部サービスに適用できるプラットフォームだ。
このプラットフォームを実現するために、生体情報の研究や用途開発を行う施設「トッパンバーチャルヒューマンラボ」を設立。ここでは、人体に関する情報の計測から、計測結果を用いた3DCG・映像などのコンテンツ制作までを一貫して行うことができるという。
顔画像の撮影から加工まで一貫して提供
「人体情報プラットフォーム」の構築に向けた取り組みの第一弾として、凸版印刷は、顔の形状や肌の質感を計測できる「ライトステージ」を導入した。
この装置は南カリフォルニア大学が開発したもので、ドーム内に配置された光源をコントロールしながら顔の形状・質感を立体的に捉え、記録することができる。
こうして得られた計測データには、様々なビジネス領域で広く活用できる可能性が秘められている。たとえば現在、凸版印刷と株式会社コーセーは、「ライトステージ」による顔計測データを活用し、バーチャルで肌質に合わせた化粧品選びや適用イメージの確認ができるサービスの実証実験を実施。顔の3DCGデータに光学シミュレーションを施すことで、実際に化粧を塗ったときのイメージを再現できることがわかった。
このほかにも、「ライトステージ」で撮影した顔画像を3DCGに加工するまでの一貫したコンテンツ制作サービスを提供予定。凸版印刷では、計測データをWebブラウザ上で確認できるビューワを既に開発しており、スマホ向けのビューワアプリも制作する予定だという。従来「ライトステージ」は映画産業での活用が主であったが、今後は化粧品・ヘルスケアをはじめアパレル・広告・スポーツなど多様な分野に事業を展開していく。
「ライトステージ」の活用が期待されるのはもちろん、個人情報を一括管理できる新たなサービスの開発にも注目が集まるであろう。凸版印刷は、生体情報をAPI経由で提供することで、企業が人体に関する事業開発を行うことができる情報基盤の構築を目指すとしている。
(文・九条ハル)
- Original:https://techable.jp/archives/145519
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:九条ハル
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