なるべく身軽でいたいソロキャンパーに課された難問、それが刃物選びです。
キャンプで刃物を使うシーンは、調理と焚き火。小さくてもナイフがあれば調理に使えるし、木や竹で食器を作るくらいなら折りたたみナイフでも対応できます。
一方、焚き火まわりで必要なのは、薪を細く割る、焚き火台に入る長さに薪を切る、木のハンガーなどちょっとした木工作業をするための道具、ナタ、斧、ノコギリです。
硬い広葉樹の薪を相手にするには、ある程度大きくて重いものじゃないと作業がはかどらないのはわかっていますが、ひとりですべての道具を持ち運ばなくちゃいけないソロキャンパーはあまり大げさなものを持ちたくありません。この難問を解決する小さめの刃物を探してみました。
■小さいからこそフルタング
まずは薪割り道具。ナタ、斧などがありますが、小さな道具だからこそフルタング(刃が持ち手部分まで伸びているもの)が安心です。一般的なナタは刃渡り150〜170mmで重量は500〜700g 。片手で持てる手斧の場合、全長350〜380mm程度で650〜900gのものが多いようです。小さすぎると使いづらいので、一般的なナタや斧よりも1割以上コンパクトで、なおかつ実用的なものを選びました。
1. 豪快な薪割りから繊細な削りまで!
馬場長金物「多喜火鉈110mm」(9350円)
▲刃渡り110mm、板厚5mm、重量300g
多喜火鉈と書いて“たきびなた”と読みます。喜びの多い焚き火のためのナタという焚き火LOVERが手に取らずにはいられない名前の小型ナタです。刃渡り110mmで刃幅26mm、出っ張りが少なく、バッグに入れやすく、付属のレザーケースでベルトに通しても邪魔になりません。
板厚5mmのSK鋼材で黒染梨地仕上げ。フルタングなのでバトニングしていて刃がハンドルから外れる心配がありません。ハンドルはウォールナットでエイジングも楽しみ。
キャンプ場で売られていた薪を割ってみました。薪の太さは5〜7cm程度だったので刃の長さの半分ほど。問題なく割れました。ただ、広葉樹の薪で太さ8cmほどのものは、当然ですが割り進むほど刃をたたく部分が少なく、大変。比較的まっすぐだったのが救いですが、刃渡りを考えると無理は禁物です。
※レザーグローブがない場合は、素手でナタを持ってください
両刃仕様で、豪快に木をたたき割る薪割りと、薄く木を削ぐという相反する作業を両立させています。
キャンプ場では伐採されたばかりの枝が放置されていることが多々あります。伐採直後の木は、薪にするには水分が多すぎるけれども、柔らかくて道具作りにもってこい。生木を使う木工をグリーンウッドワークと言いますが、「多喜火鉈110mm」は薪割りの後は、焚き火の前で生木を削って道具を作るのにも使えます。
>> 馬場長金物
2. 薄いのに安心感があるまさかり
越乃火匠久八「手鉞共柄」(1万5400円)
▲刃渡り130mm、板厚6mm、重量780g
手鉞の読み方は“てまさかり”。まさかりと斧は似ていますが、斧はくさび形の刃、まさかりはハンドル近くは細いのに、その先は持ち手側に向かって長く伸びているという違いがあります。キャンプ用では片手で持つ手斧が使われますが、「手鉞共柄」のような小さなまさかり(全長300mm)はレアアイテムと言えるでしょう。
しかもご覧の通り、ハンドルと刃が一体化したステンレス鋼のフルタング仕様です。
よくある手斧に比べて厚みはありませんが、これは安心。
レザーのケースが付いていて、ベルトに通して運べます。薄いのでバックパックの隙間にスッと入るのがいいですね。
市販の薪を割ってみました。
フルタングなので刃の重量感がわかりづらいのですが、指一本でバランスよく持てるのは刃先の手元側あたり。重心は中央よりややハンドル側ですが、思った以上にラクに振り下ろせます。もっとヘッドよりに重心があると硬い薪を割るのは楽なのですが、コントロールしづらいという面も。
「手鉞共柄」はヘッドが重すぎず、また、ハンドルのカーブとパラコードのおかげでしょう、グリップ力があります。すっぽ抜けの不安がないので、無駄な力が入らず安心して刃を振り下ろせる。だから小薪作りがサクサク進むんです。
※レザーグローブがない場合は、素手で斧を持ってください。
>> 越乃火匠久八
■ノコギリは刃が命
ノコギリには木の繊維と平行に刃を当てる“縦挽き”、繊維に対して直角に刃を当てる“横挽き”の刃があります。キャンプの場合は薪を短くするのが主目的なので、横挽きを選択。そして、小さくても刃はそこそこ厚みがあり硬めの木でもスムーズに切れるノコギリがベストではないでしょうか。
ちなみに多くのキャンパーが持っている2大折込ノコギリのひとつ「ポケットボーイ130」は刃渡り130mmで重量180g、全長290mm。もうひとつの「騎士180」は刃渡り180mmで重量260g、全長400mm。これらふたつより小さいモノという視点で考えて、全長260mm以下でこれは!と思う2モデルをご紹介。
3. 2種類の刃をシーンによって使い分け
コニファーコーン「バタフライソー」(4950円)
▲刃長120mm、刃厚0.6mm、重量110g、全長250mm
横挽きの刃をよく見ると、ギザギザの山が並んでいるだけではなく山の両側と先端が削られていて、小型なのに木の繊維をバリバリ切断していきます。この先端部分は上目と言うんですが、上目がないものが茨目。茨目は斜めに切るのに適した刃で、木くずをかき出しやすくスピーディーに切れるという特徴があります。
この「バタフライソー」は、横挽きの横挽き目と茨目を装備していて、堅い木は横挽き目、斜め方向に切りたいときや柔らかめの木を素早く切断したいときは茨目という具合に使い分けられるんです。全長わずか250mmに2つの刃が装備しているのがすごい!
「バタフライソー」のすごいところは折りたたみ機構にあります。刃に2本のハンドルがついていて、使用時は2本まとめて持ってしっかりグリップ。ハンドルを外側に開いていくと刃を保護するケースになるんです。実に無駄がない構造。
ちなみにグリップ部はブラックチェリー。使いこむほどツヤが出るので、エイジングも楽しみです。
市販の薪を切ってみました。針葉樹の薪はどちらの刃もスムーズに切れました。薄く見えますが刃がたわむことがないのも好印象。硬い広葉樹の薪はやはり上目がついた横挽き目のほうがスムーズに切断できます。
刃は高硬度炭素鋼に特殊フッ素コートを施しているからでしょうか、どちらの刃でも木くずがたまりにくく、軽い力で切れました。もちろん替刃もありますよ。
>> コニファーコーン
4. 安定感のある厚めの刃
ユニフレーム「燕三条乃鋸」(4900円)
▲刃長90mm、重量165g、全長228mm
日本有数の刃物の街、燕三条の名が付いたフォールディングノコギリです。ハンドルはステンレス、刃はSK-5。全体がシルバーで統一されており、プライヤー付きのマルチツール、レンチなんかと並べたくなる工具っぽいデザインに仕上がっています。もちろんハンドルの握りやすさにこだわっていて、角ばって見えますが肌にやさしく、引いたときに力をいれやすい形になっているんです。
コンパクトなノコギリは刃がたわみやすいものが多いんですが、「燕三条乃鋸」の刃は指で押してもビヨンビヨンしません。
折りたたんだ姿も美しいですね。ハンドルの端にあるのはカラビナで、ベルトループやバックパックのハーネスなどに引っ掛けて持ち運べます。
ちなみに、ナタやナイフ同様、ノコギリも正当な理由なしに持ち歩けません。キャンプ帰りにうっかりバッグに引っ掛けたまま遊びにいかないよう気をつけましょう。
上目がついた横挽き目なので薪を短く切断するのはお手の物。刃長90mmなので太い薪は半分くらいまで切り進み、刃を引き抜き、別の角度からアプローチするわけですが、しっかりめの刃がついているのでスムーズに引き抜けます。物理的に10cm以上の薪は最後まで切れないのが残念といえば残念。ですが、ある程度まで切り込みを入れたらあとはブーツで踏みつけて折ればよし。焚き火用なのですから、じつはこんな使い方で十分ではないでしょうか。
>> ユニフレーム
* * *
フルタングナイフがあればちょっとした薪なら細く割れるし、木工作業だってできます。ちょっと面倒ですが切り込みを入れて長い薪を短く折ることもできます。
けれどもナタや斧、ノコギリには、たとえコンパクトサイズでも特化した道具ならではの使いやすさがありました。なによりもかっこよくて持っていると気分が上がりますよ。
<取材・文/大森弘恵 写真/田口陽介>
大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/346238/
- Source:&GP
- Author:&GP
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