2050年カーボンニュートラル・脱炭素社会の実現に向け、農林水産省は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を示し、その中で「有機農業の取組み面積割合を25%、100万haに拡大する」という目標を掲げています。
稲作における有機農業の課題のひとつが、除草作業の時間・人的コスト。これを解決すべく、有機米デザイン株式会社は、雑草を抑制する「自動抑草ロボット」を開発中です。そしてこのたび、農業機械総合専業メーカーである井関農機株式会社と業務提携を締結。性能評価や開発への技術サポートおよび販売面で全面的なバックアップを受け、同ロボットの早期社会実装を目指します。
除草作業の省力化
有機米デザインは、有機米づくりのハードルを低減し、米本来の味と力を多くの人に届けることを目標に、「自動抑草ロボット」の開発および有機米の生産支援および流通・販売に注力している企業です。
同社が開発するロボットは、代掻き後の水田を自律航行して、水中をかき混ぜて泥を巻き上げることで光を遮り、水面下にある雑草の生長を抑制します。これにより、除草剤を使わずとも雑草が生えにくい状態になり、除草作業の省力化に貢献するようです。
今回の業務提携により、圃場での実証試験と性能評価、開発技術サポート、早期販売に向けたマーケティング、販売とアフターサポート、同ロボットによるスマートオーガニックシステムの構築およびユーザー指導などを強化。数年以内の販売を目指すとのことです。
有機農業の普及・拡大を目指すには
有機農業は高い利益率を見込めると言われていますが、農林水産省によると国内の耕地面積に対する有機農業取の面積割合は0.2%(2017年)と、普及しているとは言い難いでしょう。
2016年の同省の調査では、有機栽培に取り組みたいとする慣行栽培従事者は55.1%に上っており、意欲は高いものの、そう簡単に有機農業に切り替えることができないのが現状のようです。先述のような時間・人的コストを考えたとき、高齢化や就農人口の減少がネックとなるのでしょう。こうしてみると、「自動抑草ロボット」の社会実装は、除草作業に課題を感じ有機農業に二の足を踏んでいた農家に新たな可能性を示すかもしれません。
世界的に見ると、有機農業の栽培面積は増加傾向にあり、有機栽培された食品に対する消費者の需要もニーズも高まっているといいます。国内でも健康志向や食への関心の高まりからニーズが高まっているようで、スーパーや百貨店などでの有機栽培食品の売上が伸びているようです。つまり、有機農業は成長産業のひとつであり、その成長を後押しするのは栽培・サプライチェーンの課題解決なのかもしれません。
(文・Higuchi)
- Original:https://techable.jp/archives/156308
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:樋口
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