アウトドアの調理道具に使われる素材は、鉄、ステンレス、アルミ、チタンとさまざま。蓄熱性が高く、育てていく楽しみがある鉄、サビに強く清潔感を保てるステンレス、熱伝導率の高いアルミ、そして軽く強度の高いチタンなど、素材には特性があり、用途や素材感によって、好みも分かれます。
そんなアウトドア用の調理道具は鉄・非鉄を問わず金属がメインなのですが、今回、金属ではない素材・カーボングラファイトを使用したグリルプレートが発売されました。それがStay smileの「カーボングラファイト製グリルプレート」(大/3万1800円、小/1万9600円)です。
近年、家庭用ではカーボングラファイト製の調理器具も発売されていますが、アウトドア用のプレートとしてはおそらく初めて。実際に使ってみたらどうなのか、金属とどう違うのか、利点はあるのかキャンプに持って行って検証してみました。
■そもそもカーボングラファイトとは?
カーボングラファイトとは、簡単にいうと、カーボン(原子番号6元素記号C=炭素)を高温で熱して不純物を取りさった、純度99.9%の炭=グラファイト(黒鉛)です。
またひと口にカーボングラファイトといっても加工方法は3種類あり、1つが6面を等圧でプレスするCIP材(等方性黒鉛)、もう1つが片側から圧力をかけて押し出す押出材(異方性黒鉛)、最後が型に入れてプレスする型押材です。
CIP材は強度が高く、キメが細かいのが特徴で、その分高価になりがち。押出材はキメは粗いもののCIP材に比べて安価にできるメリットがあり、型押材は強度的には劣りますが、大量生産に向いています。
ちなみにこのグリルプレートには、粒径が小さく、より高強度なCIP材を使用。その分、押出材を使用したカーボングラファイトの調理道具よりも高価になってしまうのです。
■遠赤外線効果で中までふっくら
カーボングラファイト製グリルプレートの特徴は、1.熱伝導率が高い 2.赤外線放射率が高い 3.熱膨張率が低い 4.錆びない 5.軽量 6.セラミックコーティングが施されているという点です。
使って分かりやすかったのは、やはり焼いた食材の美味しさ。カーボングラファイト製のグリルプレートは、言ってみればどんな熱源の上に置おいても炭火焼きなので、「これが遠赤外線の効果か!」と感じられるほど、食材がふっくらジューシー。
キャンプで食べたくなるステーキも美味しいのですが、焼き魚や豚肉など中まで火を通した方がいい食材のほか、イカやホタテ、野菜では明確にそれを感じられました。
アジの開きを焼けば、キャンプ場では普段しない和定食も美味しくいただけます。ニオイが付きにくいので、魚を焼いても問題なし。サバサンドも作れ、アウトドア料理の幅が広がります。
プレートですが、大も小も、中心から縁に向かって緩やかに傾斜しているので、肉を焼いた時には余分な脂が流れる構造。しかも縁がわずかながら立ち上がっているので、脂が下にこぼれテーブルやバーナーを汚すことがありませんし、炭に脂が落ちて、煙が立ち上ることもありません。
傾斜している分、柔らかい食材はプレートに沿って焼けるのですが、食パンは耳の部分が浮いてしまい焼けないというのに気づきました。あまり焼くことはないかもしれませんが…。
熱伝導率の高さも分かりやすい点。シングルバーナーの上に大プレートを載せて焼きましたが、熱源があたらない隅でも焼けます。熱源があたる部分とそうでない部分の温度差が小さいので、全体にムラなく焼ける印象です。
強火にすると焦げてしまうので、中火以下での調理が基本。弱火でも、プレートが熱くなれば調理ができるため、風が吹いたり、火力が安定しなかったりする屋外でもしっかり焼けるのもメリットです。
焚き火で調理する場合は、焼きすぎ防止のため熾火で使用。鋳鉄製の調理器具のように豪快に! とはいきませんが、じっくり焼けるので飲みながらつつまむ時にも良さそう。
■汚れを簡単に落とせるからキャンプ場で重宝
分かりやすさでいうと洗いやすさも特筆すべき点。セラミックコーティングのおかげもありますが、ほんとツルッと洗えます。洗剤が使えないキャンプ場でのお手入れにもぴったり。しかも料理した後に放置して次の日でも、簡単に落とせますし、そもそも食材がくっつかないので、料理した後でもあまり汚れていないのです。
ちなみにこのセラミックコーティングは、高純度に精製した天然のセラミックを使用したもので、フッ素コーティングに比べて硬度が3倍、耐熱は2倍の500℃、塩水や太陽光にも強いためアウトドアの使用でも問題ないそう。しかもこのコーティング、劣化したら再コーティングも可能。長年愛用できそうです。
また熱膨張率が低いので、熱い状態で水をかけても変形したり、割れたりすることもなく、また冷めるのが早いので片付けもはかどります。
表面にはセラミックコーティングが施されているためツルツルしていますが、裏面にはサンドブラストがかけられてザラザラ。シングルバーナーの五徳でツルっと滑り落ちるということはありません。
持ち運び用に、ネオプレーン製のケースも付属。強度があるとはいえ、金属に比べると、多少慎重に扱う必要があります。
バーナーや炭火だけでなく、IHやオーブンでも使えるので、アウトドアだけでなく自宅での使用も可能。IHやオーブンを使えるのは鉄と同じですが、同じサイズの鉄板に比べて1/4の重さで薄く、扱いやすいという点では有利かもしれません。
ちなみに小プレートは直径180×厚さ12mmで約365g、大プレートは縦210×横297×厚さ13mmで約820g。大はほぼA4サイズなので、アジの開きも問題なく焼けます。
このグリルプレートは、アウトドア用品ならではの経年変化を楽しむアイテムとは対極に位置しますが、美味しく調理できて、しかも手入れが簡単なので、なんでも焼きたくなります。
実際、今回は、牛肉、豚肉、鶏肉、アジの開き、帆立貝、イカ、シイタケ、パプリカ、食パンとずっと焼いていました。
そして今回試して感じたのは、カーボングラファイトという素材の可能性。おいそれと手が出る価格ではありませんが、食材の味を引き出すという意味では、一度使ったら手放せません。今後カーボングラファイトを使った、さまざまな調理道具が出るのが楽しみです!
※2020年12月撮影
<文・写真/澤村尚徳(&GP)>
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/378780/
- Source:&GP
- Author:&GP
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