2021年5月、オリジナルともいうべき3ドアやコンバーチブル、そして利便性の高い5ドアのマイナーチェンジモデルを発表したMINI(ミニ)。
それらに先立って小変更を受けたのが、今回フォーカスするSUVバージョンのMINI「クロスオーバー」です。グローバルマーケットにおいて好調なセールスを記録するMINIの人気モデルは、果たしてどんな進化を遂げたのでしょうか?
■MINI人気を後押ししたバリエーション拡大
BMWが傘下に収めたMINIブランドの新モデル、いわゆる“ニューMINI”の初代を世に送り出したのは2001年のこと。デビュー当初は「こんなに大きなクルマなんてMINIじゃない」と揶揄する声も聞かれましたが、結果的に大ヒットを記録。着実にファンを増やし、今では日本で5本の指に入る人気の輸入車ブランドへと成長しました。
そんなニューMINIのヒットにつながったのは、なんといっても多彩なバリエーションでしょう。20年の歴史の中で、さまざまな派生モデルが登場しています。
2001年に誕生した初代はオリジナルの「3ドア」とオープン仕様の「コンバーチブル」だけでしたが、2006年デビューの2代目で一気に増殖。3ドアとコンバーチブルに加え、ワゴンの「クラブマン」、2シーターモデルの「クーペ」、クーペのオープン仕様「ロードスター」、3ドアのクーペSUV「ペースマン」、さらにはMINIブランド初のSUVとなるクロスオーバーも登場しました。
2014年にデビューした現行の3代目では、クーペ、ロードスター、ペースマンがカタログ落ちしたものの、利便性の高い「5ドア」が新たに追加されました。ここに挙げた各モデルは、いずれもMINIらしい愛くるしいルックスを備えており、同時に、ユーザー一人ひとりにマッチする多彩な個性をも身に着けていました。このことが、幅広い層にニューMINIが選ばれる大きな要因となったのです。
そんな多彩なラインナップの中でも、ニューMINIの人気を強力に後押ししているのがSUVのMINIクロスオーバーです。グローバルマーケットでの新車セールスにおいて、MINIブランド全体の約30%を占める売れ筋モデルであり、日本でも好調なセールスを記録する人気モデルへと成長しました。
■ルックスは人気モデルらしく正常進化
今回、そんなMINIクロスオーバーのマイナーチェンジモデルをドライブすることができました。最新型は内外装デザインの変更に加え、ヨーロッパの新しい排出ガス規制に対応したディーゼルエンジンや、より進化したシャーシを採用。全方位的に進化を遂げています。
試乗車は、ディーゼルエンジンを搭載するMINIクロスオーバーの中で最もハイパフォーマンスな「クーパーSD クロスオーバー ALL4」。新色であるセージグリーンメタリックをまとった個体です。
最新型はバンパーやラジエーターグリルといったフロント回りのデザインが刷新され、LEDヘッドランプも標準装備。
一方のリア回りは、コンビネーションランプが英国国旗であるユニオンジャックをモチーフとしたデザインに変更されたほか、バンパーがより力強く立体的な造形へと変更されています。とはいえ、全体的な変更点はごくわずか。人気モデルらしく正常進化が図られた印象です。
ちなみに、マットアルミ調のバンパーアクセントとアンダーガードは、「ALL4トリムパッケージ」に含まれるオプション。同パッケージを選ぶと、ボンネット上の黒いストライプなども選択可能です。
■レジャードライブで重宝するラゲッジスペース
運転席のドアを開けると、クーパーSD クロスオーバー ALL4に標準装備となるスポーツシートが目に飛び込んできます。サイドサポートの張り出しが大きく、ドライバーのカラダをしっかり支えてくれそうです。
また、ALL4トリムパッケージを選択した試乗車には、シートヒーター付き電動シートやレザー製のシート生地/トリム類が装備されていました。レザーは3色からセレクト可能ですが、試乗車のモルトブラウンはインテリアを華やかに演出してくれます。
そのほか試乗車には、フル液晶の“マルチディスプレイメーターパネル”が付いていましたが、これは、“Apple CarPlay”対応の“スマートフォンインテグレーション”やヘッドアップディスプレイなどを含む「デジタルパッケージプラス」に備わるもの。タブレットを思わせる液晶メーターパネルは、最新型のインテリアにおけるアクセントになっています。
ラゲッジスペースは、通常で450L、リアシートの背もたれを倒した状態で最大1390Lの容量を確保。さらにリアシートは、スライド/リクライニング機能が備わるほか、背もたれを4:2:4の割合で3分割に倒すことができるので、荷物に合わせて自在にアレンジすることができます。
十分な空間と優れた使い勝手を備えたラゲッジスペースは、キャンプやウインタースポーツといったレジャードライブで重宝しそうです。
■MINIらしくない乗り味は電制ダンパーの恩恵!?
最新型クロスオーバーに搭載されるディーゼルエンジンは、今回の改良で“ユーロ6d”と呼ばれるヨーロッパの最新排出ガス基準をクリアしたものへとアップデートされました。
排出ガスに“アドブルー”と呼ばれる尿素水を噴射し、化学反応による中和でNOxを浄化する“尿素SCR(選択触媒還元)システム”を搭載するなど、クリーン性能を高めたエンジンです。最高出力190馬力/4000回転、最大トルク40.8kgf-m/1750〜2500回転とスペックこそ従来モデルと同じですが、アクセルペダルを深く踏み込むとググッと前へ押し出してくれる強力な加速を披露してくれます。
特にドライブモードで「スポーツ」を選ぶとレスポンスが良化。1680kgとそれなりに重量級のMINIクロスオーバーを軽快に走らせてくれます。また、高速道路を走る時は、厚い低速トルクが効果を発揮。低い回転数のままスムーズかつ静粛性の高いクルージングをサポートしてくれます。
MINIのフットワークを表現する際、しばしば“ゴーカートフィーリング”というフレーズが使われますが、最新型クロスオーバーの走り味はちょっと印象が異なりました。
その一因は、試乗車が装着していた“アダプティブ・サスペンション”と呼ばれる電子制御式可変ショックアブソーバーにありそうです。これはドライブモードに合わせて減衰力を変更する仕組みですが、「ミッド」モードをセレクトすると、MINI特有の低速域で小刻みに跳ねる上下動がさほど感じられなくなり、いい意味で“らしくない”フラットな乗り味となります。そのため高速クルージング時などは、従来モデルに比べて快適さが増している印象です。
もちろん「スポーツ」モードを選択すると、路面の状況を細かくドライバーへと伝えてくるかのような、ゴーカートを想起させるMINIらしさを味わえます。とはいえそこは、SUVのクロスオーバー。3ドアや5ドア、コンバーチブルよりも重く、ロードクリアランスも十分にとられているためか、乗り心地は幾分しなやかで、軽快感と快適性が上手くバランスされている印象です。
MINIらしい愛くるしいルックスと質感の高いインテリアに、ロングクルージング時の快適性と軽快感を兼備した走り、そして、レジャードライブに重宝する使い勝手のいいラゲッジスペース。最新型のMINIクロスオーバーは、全方位的にスキのない1台になりました。
<SPECIFICATIONS>
☆クーパーSD クロスオーバー ALL4
ボディサイズ:L4315×W1820×H1595mm
車重:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:190馬力/4000回転
最大トルク:40.8kgf-m/1750~2500回転
価格:510万円
文/上村浩紀
上村浩紀|『&GP』『GoodsPress』の元編集長。雑誌やWebメディアのプロデュース、各種コンテンツの編集・執筆を担当。注目するテーマは、クルマやデジタルギアといったモノから、スポーツや教育現場の話題まで多岐に渡る。コンテンツ制作会社「アップ・ヴィレッジ」代表。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/402542/
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