10月からauのローミングを順次終了している、楽天モバイル。終了するエリア、終了済みのエリアを合わせると、全体の7割に及ぶといい、自社回線への切り替えが進んでいることがうかがえます。エリア化が参入当初の計画より順調に進んでいることから、ローミングを早期に終了し、経営の重石になっていたローミング費用を圧縮して、早期にユーザー獲得のアクセルを踏むのが楽天モバイルの狙いです。
既存のキャリアであるauが、時間をかけて構築してきたエリアを利用できることに加え、参入直後から全国でサービスを提供可能になるのがローミングのメリットです。一方で、ローミングは無償ではありません。ユーザーが使えば使うほど、楽天モバイルからKDDIへの支払いが発生します。約款を見ると、その金額は1GBで500円程度。楽天モバイルの料金は、3GB超20GB以下で2178円のため、ユーザーが4GB程度使うとほぼ利益はローミング費用に消えてしまいます。
こうした事情から、楽天モバイルの料金プランには、ローミング時の例外が設けられていました。auローミング時の5GBがそれです。料金プラン的には、20GBを超えると3278円で使い放題になる同社の「UN-LIMIT VI」ですが、ローミングエリアでのみ通信していると、5GBプランと変わらなくなってしまうというわけです。5GBプランとして見ると、料金には優位性がなく、常にローミング接続になる地域に住んでいるユーザーが契約するメリットは少なかったと言えるでしょう。
ローミング頼みから脱却すべく、楽天モバイルはエリアの拡大を加速。楽天市場の出店社や楽天トラベルの加盟社、資本提携を結んだ日本郵政などをフル活用しつつ、工事会社との関係も見直し、エリア化のスピードを上げていきました。結果として、新規参入時に総務省に提出していた開設計画を前倒しする形で、9月には基地局数が3万を突破。20年4月時点では23.4%だった人口カバー率も、約1年半で94.3%にまで拡大しました。
楽天モバイルによると、ローミングから自社エリアへの切り替えにあたっては、対象となるユーザーに事前連絡をするなど、細心の注意を払っているといいます。また、切り替え後に圏外となり、楽天モバイル回線が使えなくなってしまった場合、MVNOのSIMカードを入れた端末を貸し出したり、超小型基地局を設置したりといった対策を講じています。
auローミングで使用していた周波数帯は、いわゆるプラチナバンドの800MHz帯。これに対し、楽天モバイルが持つ周波数帯は1.7GHz帯と高く、速度が出る半面、電波の広がり方は800MHz帯に見劣りします。ローミングを終了することで、数字には見えない“エリアの穴”ができてしまうおそれがあるというわけです。
そのため、思わぬ場所でつながらなくなったり、電波が弱くなったりする可能性があることは、否定できません。また、ビル内や地下街も楽天モバイルの弱点のひとつ。地権者との交渉にはどうしても時間がかかり、短期集中でエリアを広げるのが難しいからです。
ローミングの早期終了が吉と出るか、凶と出るかは、まだわかりませんが、少なくとも今後は、従来以上にきめ細やなエリア作りが求められるようになりそうです。
(文・石野純也)
- Original:https://techable.jp/archives/165311
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:amano
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