三菱総研DCSは12月13日、純銅鋳物を得意とする鋳造メーカー中島合金とともに、純銅鋳造製造工程における、熟練者の暗黙知を学習させたAIの実業務への適用可否を検証する実証実験を開始すると発表した。
純銅鋳物はCAC100番台のJIS規格が定められており、品質を一定水準に揃える必要がある。一方、その製造工程には原材料の状態や環境条件など制御しきれない要素が存在しており、これら製造条件のばらつきが純銅鋳造の難しさの一因となっている。
中島合金は、製造工程の途中段階でばらつき具合を測定し、その値に応じて調整用添加剤を適切量投入することで製品の最終品質を均一化する熟練の技能を持つものの、同技能を若手が継承するには長い時間がかかるという課題があるという。
そこで、中島合金と三菱総研DCSがこの課題解決に着手したところ、AI技術を活用して「製造時のばらつき状態」と「添加剤の投入量」の関係を学習することで、熟練者の判断を再現できることが確認できたという。同実証実験では、このAIの判定精度向上に加えて、予測時間が実用に足るか、また製造の現場技術者が利用するシステムとして操作性に問題はないかなど、システム全体としての業務適用可否を検証する。
また三菱総研DCSは、「難しいAI操作を難しく感じさせない」を製品コンセプトに開発しているという。多くのデータ分析ソフトウェアが統計学や機械学習の深い知識を前提としており、製造の現場技術者が使うには操作の習得に時間がかかるなど導入のハードルが高いのが実情となっている。そこで、AIのオートチューニングアルゴリズムとUXデザインを駆使し、データサイエンスの知識がない現場技術者でも高いハードルを感じずに利用可能なデータ分析ツールとして開発しているそうだ。
期待される効果
- 熟練技能継承の実現:若手へ継承させることが難しい「調整具合の判断」を熟練者の頭脳から抽出し、若手でも活用可能なノウハウ資産へと昇華させる
- 熟練者活躍の場の拡大:熟練者が調整作業から解放されることで、別の製造作業の標準化などより難度の高い業務に集中することが可能になる
- 製造業の事業継続への貢献:熟練者が持つ技能は、中小製造企業が他社との差別化を生む重要なノウハウであり、競争力の源泉となっている。このノウハウを絶やすことなく次世代に引き継いでいくことは、製造企業にとって事業継続性の観点からも重要な課題といえる
中島合金は、2020年に創業100年を迎えた鋳造メーカー。合金鋳物・アルミニウム合金鋳物に加え、鋳造に高度な技術が必要とされる純銅鋳物を得意としている。同社100年の技術・知見と、大学・研究所との連携による最善の提案を特徴とするという。
三菱総研DCSは、銀行・クレジットカードなど金融関連業務で豊富な実績を有するほか、千葉情報センターを核としたトータルITソリューションを展開。「すべての製造企業にデータ分析のチカラを!」をビジョンに掲げ、近年はAI、RPA、データ分析、ロボティクスなどの新技術も取り入れ、顧客の業務革新やデジタル化を支援している。
画像クレジット:Francisco Fernandes on Unsplash
- Original:https://jp.techcrunch.com/2021/12/13/dcs-nakacast/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Takashi Higa
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