三菱総研DCS株式会社(以下、DCS)は、2020年に創業100年を迎えた鋳造メーカーの中島合金株式会社(以下、中島合金)と共に実証実験を開始しました。
今回の実証実験は、純銅鋳造製造工程において熟練者だけが把握している「暗黙知」をAIに代替させるというもの。学習させたAIの実業務への適用可否やシステムの使いやすさなどを検証します。
生産性向上が課題となっている製造業
2020年経済産業省企業活動基本調査によると、製造業は全産業の付加価値額の47%を占めています。日本を支える重要な産業である一方、コロナ禍や働き方改革の流れを踏まえた生産性向上が課題として挙げられているようです。
AI技術の利活用に注目は集まっているものの、多額の投資やデジタル人材の確保が必要となるため実際に利活用しているのは大手企業にとどまっているとのこと。DCSはこの状況を打開するべく「すべての製造企業にデータ分析のチカラを! 」をビジョンに掲げ、サービスを企画・検討しています。
熟練者のノウハウをAIに学習させる
純銅鋳物にはCAC100番台のJIS規格が定められており、品質を一定水準にそろえる必要があるといいます。
純銅鋳造の製造工程には、原材料自体の状態や、気温・湿度など制御できない条件が存在しており、これまでは製造条件のばらつきに対して、熟練技能者が調整用の添加剤を適切量投入することで製品の最終品質を均一化していました。
こうした熟練技能者が保有する「暗黙知」を若手が継承するには長い時間がかかるため、中島合金は課題意識を感じていたといいます。
そこで同社はDCSと共に、AIに「製造時のばらつき状態」と「添加剤の投入量」の関係を学習させたところ、熟練者の判断を再現することができたそう。
今回の実証実験では、このAIの判定精度を向上させるだけでなく、予測時間が実用的な水準に達しているか、製造の現場技術者が利用するシステムとして操作性に問題はないかなど、システム全体としての業務適用可否を検証します。
熟練者はより難度の高い仕事へ
この実証実験では、3つの効果が期待されています。
1つめは、継承させることが難しい「調整具合の判断」をAIに代替させ、若手が活用可能なノウハウ資産とすること。2つめは、若手が「調整具合の判断」ができるようになることで、熟練者がその業務から解放され、より難度の高い業務に集中できるようになること。3つめは、熟練者の技能を絶やすことなく次世代に引き継いでいくこと。
これらは製造業を営む企業にとって事業継続の観点からも重要な点。DCSは、本実証実験を通して若手の技能継承や事業継続性などに貢献するとともに、日本を支える中堅・中小製造企業のDXを推進していきたいとしています。
(文・Amuro)
- Original:https://techable.jp/archives/168865
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:amuro
Amazonベストセラー
Now loading...