【達人のプラモ術】
モンモデル
1/35 イスラエル陸軍 D9R装甲ブルドーザー
01/06
戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。
今回からは新シリーズ。かなりマニアックな車輌の製作に入ります。次回の製作候補を達人に挙げてもらった時に「そもそも、装甲ブルドーザーって何よ?」と思ってしまいましたが、“はたらくクルマ(?)”はやっぱりカッコいい! そして、そんなマニアックな車輌がキット化されているという世界のプラモデル業界っておもしろい! ということで、全6回となる大作の製作、スタートです!
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モンモデル
「1/35 イスラエル陸軍 D9R装甲ブルドーザー」(1万450円)
今回はAFV(Armored Fighting Vehicle)モデルを製作…。おぉ久々に戦車か!と思われるかもしれませんが、残念違います。
民生用のブルドーザーを改造。装甲された車体に悪路も走破できる履帯(キャタピラー※)を装備し、前面のドーザーで障害物を排除していく異色の軍用車両、イスラエル陸軍のD9R装甲ブルドーザーを製作します。使い込まれた軍用建機の質感をウェザリング塗装でリアルに再現していこうと思います
※「キャタピラー」は米国キャタピラー社(Caterpillar Inc.)の登録商標です
★達人流製作のポイント!★
①車体の組み立てはエッジのディテールを潰さぬように注意
②可動部分は突き出しピンの跡を丁重に処理する
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。
■D9R装甲ブルドーザーとは?
もともとはアメリカのCAT社が開発した民生用の大型ブルドーザーで、D9Rは2004年に作られた416馬力のディーゼルエンジンを搭載したモデルになります。
▲ベースとなっている民生用のD9ブルドーザー。車高が4メートル以上あり迫力満点。ドーザープレートだけで約8トンの重量がある
これを輸入したイスラエル陸軍が独自に改造。車体やエンジンなどに小火器の攻撃に耐えうる装甲を施し、キャビンは防弾ガラスに。さらに自衛用の7.62ミリ機関銃・発煙弾投射機・擲弾発射機が装備されています。
IDF(イスラエル国防軍)の工兵部隊で運用され、低強度紛争地帯で家屋を壊す、がれきの処理、塹壕を掘る、埋める、地雷の撤去といった作業で活躍。兵士からは「DOOBI」の愛称で呼ばれているそうです。アメリカ陸軍は、イラク戦争時にD9Rをイスラエルから逆輸入して使用しています。
■キット解説
▲パーツ数も多くボリューム満点。黒いパーツは組み立て式の可動履帯。作り応え満点のキット
キットは中国の模型メーカー、モンモデルが2013年に発売したものですが、人気があるので店頭ではすぐに品切れになってしまうようです。
▲バリエーションモデルとして発売中のスラットアーマー付きD9R
現在はRPG(携帯対戦車グレネードランチャー)から車体を守るスラットアーマー付きが追加されたタイプも発売されています。
スケールはAFV模型のスタンダードサイズの1/35で、ドーザーブレードの可動、ドア・ウィンドウは開閉を選択式、履帯は連結タイプ、デカールはイスラエル軍と米軍の2種が付属と、本格的なモデルとなっています。またインスト(説明書)には、英文ですがD9Rについて詳しいイラスト付きの解説が付属しています。
▲キットにはイラストの実車解説(英文)とカラーのー塗装ガイドも付属
■車体の製作
箱を開けるとパーツの多さに圧倒されます(箱自体もデカイ)が、頑張って組んでいきましょう。このD9Rも一般的なAFVモデルと同じように、ほとんど組み上げてから塗装するため、まずはサクサクとパーツを組み上げます。
まずは車体の製作から。複雑な形状の車体は12個のパーツで構成されており、基本的には板状のパーツを箱型に組んで行く感じです。パーツの精度が高いので隙間などもできずにカッチリと組めます。戦車のように低いシルエットではなく、背が高い箱型の車体は、AFVモデルとしては新鮮な感じですね。
▲12パーツで箱組みしていく車体。バラバラだが精度が高いのでカッチリと組み上げられる。組み立てには、パーツを合わせておいて接着できる流し込み接着剤がオススメ
パーツのディテールはシャープに再現されています。パーツの接着や研磨でモールドを削り潰さないように気を付けましょう。
それにしてもイスラエル陸軍は魔改造が大得意! その昔、戦後の引き揚げのために港町ハイファに集結していたイギリス軍から、M4シャーマンおよびクロムウェル巡航戦車計6輌を盗み出し、エンジンの換装、武装の強化といった改良を施して第1次中東戦争で使用していました。その後は世界中から戦車のスクラップを輸入(砲に穴が空けられるなどして、兵器として再利用できないようになっていた)して、それを強化再生。機甲部隊中核として使用していたんですよね。それだけに、今回の戦場で働く建機 D9Rブルドーザーの改良なども納得な感じです。
■リッパーの製作
次に、車体の後部に装備されているリッパーを製作します。
▲組み上げたリッパーを車体に組み付ける。手前のパーツは油圧配管
リッパーは、大きな石を引き裂いたり溝を掘ったりするのに使ったり、また車体をホールドするためにも使ったりする鋼鉄の爪です。これもまた戦車には見られない装備なので新鮮で、AFVモデルの奥の深さを感じさせてくれます。
▲リッパーを下げた状態
▲リッパーを上げた状態
組み上げたリッパーは車体に取り付けて、4本の油圧シリンダーで可動させられます。接合部分にポリキャップ等は使われていませんが、ガタもなくスムーズ。
それにしても、組み上がるとリッパーと油圧シリンダー周りが実にメカメカしくて堪りません、いやぁ建機プラモ最高です!
▲4本の油圧シリンダーを組み合わせて完成したリッパー周り。このメカメカしさは一般的なAFVモデルでは見られないもの。建機モデルならではの大きな魅力だ
■極小ナットを貼りつける!
鉄の爪リッパーを作動させる油圧シリンダーのディテール再現するため、極小のボルトを切り出して取り付けなければいけないのですが、これがまた大変。
ランナーにモールドされたボルトをデザインナイフで切り出し、シリンダーの基部に接着していくわけですが、ボルトは0.8ミリ程度のサイズしかないので、なかなか厳しい作業です(眼にキツイ…)。
切り出したボルトは、小さすぎてピンセットでも掴むのは無理。万が一飛ばしてしまったらまず見つかりません。そこでデザインナイフの先端で軽く突き刺して接着することをオススメします。
しかしこのボルト、油圧シリンダーと一体で成形できなかったのかなぁ…、なんてことは思っても口にしちゃいけません(笑)。
▲リッパーを作動させる油圧シリンダーは可動するので、内側のシャフトに接着剤がつかないように注意して組み立てる
▲組み立てた油圧シリンダーの基部に小型ボルトを取り付けると指示があるのだが…
▲ボルト(約0.8ミリ)はパーツのランナーにモールドされており、切り出す必要がある
▲ボルトはニッパーで切り出すと潰れてしまうので、新品の刃をつけたデザインナイフで切り出す
▲切り出したあともピンセットで掴むと飛んでしまう恐れがあるので、デザインナイフの刃先で軽く刺して接着するのがベスト
▲切り出した極小ボルトを7個貼った油圧シリンダー。確かにディテールの密度感がアップする
▲左がボルト(こちらは4個)を貼った状態。右はまだ貼っていないもの
▲組みあがったリッパーに、キラリと際立つ?油圧シリンダーのボルト
次回は防弾ガラスで囲まれたキャビン(運転席)を製作していきますお楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/425605/
- Source:&GP
- Author:&GP
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