【iPadで始めるAV環境最強化計画】
3月18日、「iPad Air(第5世代)」が発売されました。iPadシリーズは、最上位にあたるiPad Pro、中間ラインのiPad Air、低価格ラインのiPadという構成ですが、「iPad Air(第5世代)」の10.9型モデルは、これまでこの連載で扱ってきた「11インチiPad Pro(第3世代)」と外見上も非常に良く似ていて、高速処理で名を馳せたアップルM1チップ搭載という点も同じです。
そこで、画質・音質を中心に
「10.9 インチiPad Air(第5世代)」※以下、iPad Air
「11インチiPad Pro(第3世代)」※以下、iPad Pro
「10.2インチiPad(第9世代)」※以下、iPad
という現行3モデルを試してみました。
ちなみにiPad Airの価格は、内蔵ストレージとWi-Fiモデル、セルラー版の仕様によって変動しますが、アップルストアの最小構成で7万4800円~です。
■画質差はわずかだけど音質差はアリ
まずは並べてみました。
▲左からiPad、iPad Air、iPad Pro
実機を見るとよくわかりますが、iPad AirとiPad Proははデザインから激似。iPad Airはカラバリ豊富で、今回はブルーを使って比較しているので見分けは付きやすいのですが、他の差分はiPad Airはカメラが2眼、iPad Proは1眼の差くらい。2機種とも外部接続端子がUSB-Cなので、兄弟モデルのようです。
▲上からiPad Pro、iPad Air、iPad。iPad ProとiPad Airは端子にUSB-Cを採用
厳密には、iPad ProはThunderbolt/USB 4対応USB-Cのためスペック上は少し上。iPadはカメラは1眼で端子はiPhoneと同じLightningです。
▲iPad Airは電源ボタンがTouch IDセンサーも兼ねている
iPad AirとiPadはセキュア認証のTouch IDを採用していて、個人的には便利だなと感じます。iPad Proは最新のiPhoneと同じ顔認証のFace IDなのですが、iPadだと手でカメラが隠れることが多いんですよね。
▲左からiPad、iPad Air、iPad Pro。速度はM1プロセッサ搭載のiPad AirとiPad Proがやはり快適
CPUはiPad AirとiPad ProがMacBookシリーズと同じM1プロセッサで高速処理が特徴。ブラウザ画面程度ならiPad Air、iPad Proの表示のヌルヌル感は完璧。それと比べるとA13プロセッサ搭載のiPadは若干表示が遅い。でも許容範囲内です。
そして気になるAV性能。まずはディスプレイ画質からチェックしていきます。
今回じっくり比べたのは、Apple TV+で配信されている最新作『窓際のスパイ』。4KかつDolbyVision配信と最高画質の条件が揃っています。
まずは画面サイズの小さいiPadから試聴…。実はこのモデルでも2160×1620ピクセル/264ppiのIPSパネルパネルなので十分キレイ。しかもiPadシリーズって、色はどのモデルも正確なんですよね。ただ、細かく見ると黒色が漆黒ではなく若干白く浮いています。
▲左からiPad、iPad Air、iPad Pro。黒の表示はiPad Air、iPad Proでほぼ同じ
そして最新のiPad AirとiPad Proを見比べてみると…、画面サイズ分の解像度差はあるものの264ppiで揃っていて、見え方としては想像以上に近い。色の正確さも、暗室で見た黒の締りも問題ナシ。スペック上はSDR輝度がiPad Airが最大500ニト、iPad Proが最大600ニト。ただ、並べて比べても気づくかどうかという程度の違いしかありません。
ちなみにiPad ProはProMotionという120Hz駆動ディスプレイを搭載していますが、映画やドラマは元のコマ数が最大60Hzなので意外と効果は出にくいんです。むしろ、UIやブラウザ操作の滑らかさにメリットを感じます。
続いて内蔵スピーカーの音質を検証してみます。Apple Musicの通常音源でYOASOBI『三原色』、そして空間オーディオ対応の音源としてエド・シーラン『Shivers』をメインに比較します。
▲内蔵スピーカーによる音質を比較
まずは通常音源から聴いてみます。iPadは音のパワーとクリアさは合格点だけど、スピーカー位置が縦向きにした時は画面下のみ。当然横向きにすると片側だけになります。これは残念…。空間オーディオも同じ傾向でした。
iPad Airは、音の躍動感、ライブ感もあって良い感じに高音質。左右にスピーカーがあるので違和感ナシ。空間オーディオの立体感や音の浮遊感も出ます。
最後はiPad Pro。4スピーカーのおかげか、音の肉厚さやパワーが段違い。空間オーディオでは音に包み込まれるような効果も出ます。
音質トップはiPad Proですが、個人的にはiPad Airも合格点。ただ、AirPodsシリーズなどBluetooth接続のイヤホン前提なら、スピーカー音質は気にしなくてもいいですよね。
そして気づいてしまったのですが、iPadは現行のiPhone/iPadシリーズで唯一、3.5ミリのイヤホンジャックが残っているんです! 有線イヤホンやヘッドセット使いたいならこれは絶大なメリット。
ちなみにiPad AirとiPad Proは、USB-C端子からの変換で、以前の記事でも検証したハイレゾ出力で有線イヤホンを利用可能です。この2モデルで聴き比べもしてみましたが、音質差はなさそうです。
* * *
最新の「10.9 インチiPad Air(第5世代)」、そして「11インチiPad Pro(第3世代)」「10.2インチiPad(第9世代)」と現行3モデルを比較してみると、画質・音質はやっぱりiPad Pro、iPad Air、iPadの順で優秀でした。
ただ、「10.9 インチiPad Air(第5世代)」と「11インチiPad Pro(第3世代)」の画質差はごく僅か。内蔵スピーカーの音質差はあるけど「10.9 インチiPad Air(第5世代)」でも満足できそうです。あと考えるべきは価格で、「10.9 インチiPad Air(第5世代)」のWi-Fi版で64GBが7万4800円ですが、次が256GBで9万2800円に跳ね上がるんです。「11インチiPad Pro(第3世代)」のWi-Fi版は128GBで9万4800円なので、必要な容量を考えつつ選ぶと良さそうです。
<取材・文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長
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