スケールエフェクトを考えて調色した赤で機体を塗装!【達人のプラモ術<サボイア マルケッティ S.55>】

【達人のプラモ術】
DORA WINGS(ドラウイングス)
1/72 サボイア マルケッティ S.55 大西洋横断記録機
03/04

サボイア マルケッティS.55 製作の第3回。1927年、フランチェスコ・デ・ピネードとカルロ・デル・プレーテの操縦により、セネガルのダカールから大西洋を越えて南北アメリカ大陸の飛行を行った赤い塗装のサンタ・マリア号仕様で機体の塗装を進めていきます。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■大西洋横断に挑んだ赤き飛行艇

今回の塗装は、機体が赤く塗られた大西洋横断に挑戦したS.55です。先にも書いたように、1927年に大西洋を越えて南北アメリカ大陸への飛行を行なった機体なのですが、この飛行はリンドバークのスピリット・オブ・セントルイス号による大西洋単独横断飛行の数か月前でした。

今でこそ旅客機が普通に大西洋を超えていきますが、サンタ・マリア号はローマからカーボベルデを経て、大西洋を越え、ブエノス・アイレスに至る4カ月の大西洋横断飛行でした。

機体はその後、アメリカ・アリゾナ州のルーズベルト湖で火災を起こし失われています。海洋の横断飛行の場合、飛行艇ならば飛行中に何かトラブルが起きたとしても洋上に着水することができるというメリットがあります。ちなみに自衛隊の飛行艇(US-2)パイロットが知人にいるのですが、曰くS.55の機体構造では波高が1メートルあったら着水は無理だろうとのことでした(US-2は3メートルの波でも着水可能)。

リンドバークは陸上機での横断飛行でしたから途中降りて修理や休息をとることはできません。ちなみにパリに到着した際にリンドバークが最初に話した言葉が「ここはパリですか?」というのはよく知られているとことですが「トイレはどこですか?」という説もあり…いや話がそれました、洋上に着水しながらの飛行であってもS.55の大西洋横断飛行が命がけの冒険飛行だったことは間違いないです。

 

■機体各部の製作

さて、機体の塗装と組み立てですが、組み上げた主翼と双胴の艇体、後部の胴体フレーム、水平尾翼と垂直尾翼を組み合わせた部分に分けて進めていきます。特徴的すぎる機体構造ゆえ、機体全体を組み上げての塗装が難しいのと、組み上げてしまうと、後部フレームなどに強度がないため、マスキングなどが困難という理由から、それぞれを塗装してのち、組み上げます。

機体後部で尾翼を支えるフレームは、主翼と艇体の2カ所で固定されるのですが、こんな構造で大西洋横断できたんかいと不安になります。模型的にも明らかに強度がないので、接合部分は0.5ミリのしんちゅう線を埋め込んで補強しています。同様に3枚ある垂直尾翼の中央翼、水平尾翼のラダーも同じようにしんちゅう線で補強しないと強度が保てません。いや~手強いキットです(笑)。

▲胴体ブームはエッチングバーツをフレームの間にエッチングパーツはめ込んで製作

▲主翼上に取り付けるレジン製エンジンとエンジンマウントを仮組した状態。左右合わせのマウントは、角度決めが難しく、強度も出ないのが辛い

▲3枚ある水平尾翼の中央翼はまさに点付け! そのままでは取り付け不可能なので金属線を埋め込んで差し込めるようにした

▲水平尾翼のラダーも同様に金属線を埋め込んで強度を確保している

 

■機体の赤は調色で

機体の赤色ですが、これがなかなか悩ましい色です。実機は失われているし、ブラジル・サンパウロ州にあるTAM航空博物館に現存している機体は復元された機体ですから機体色が正確なものかどうかわかりません。

イタリアの跳ね馬フェラーリであればイタリアンレッドでしょう! となるのですが、同じメイド・イン・イタリアであっても、飛行機モデルに塗ってしまうと鮮やかなイタリアンレッドはミニカー的な仕上がりになってしまうんですね(特にS.55の機体は木製でパネルラインがほとんどないので、赤いカタマリに見えてしまう)。

そこで今回、機体に塗装した赤は調色(Mr.カラー108番キャラクターレッドをベースに68番モンザレッドと33番あずき色を調色して彩度を抑えた赤)。仕上げも半光沢として、さらに動翼等のラインに僅かに影を入れることで、ベタな単色塗装にならないようにメリハリを持たせて塗装をしています。

▲機体のパネルラインや動翼部分に淡く黒を塗装することで、機体色の赤を重ねた際に立体感のある影色の効果を得られる

▲機体色の赤は調色で自作したカラーを使用

▲鮮やかになりすぎないように、彩度を抑えた色調で1/72の飛行機モデルとしての雰囲気を重視して塗装している

▲機体色の赤の塗装が完了した各パーツ

 

■フロート裏側の色が分からない

艇体は側面に白ラインが入り、下側側面部分は黒に塗られています。また飛行艇のフロート(艇体)裏側部分は機体色と異なる塗装がされている場合が多いのですが、S.55の場合どうなっているのか分からなかったので、側面と同じ黒で塗装しています。

▲赤の塗装の乾燥後に艇体をマスキング

▲フロート部をセミグロスブラックで塗装、さらに側面の白ラインを入れていく

▲塗装が完了した艇体部分

▲しかし白のライン幅が太くなりすぎたので、再度マスキングして修正

▲塗装が完了した艇体にデカールを貼った状態

▲塗装が完了した艇体にデカールを貼った状態

 

■機体の組み立て

主翼と艇体、胴体、尾翼を組み合わせて飛行機のカタチに組み上げていきます。ブーム状の胴体なので、尾翼を主翼に対して正しい位置に固定するのにかなり苦労させられます。また接合部に金属線を埋め込んで補強しているとはいえ、特に尾翼まわりには強度がほとんどありません。実際、不注意から、組み立て中に尾翼が2回バラバラになりました(泣)。しかしここキレると完成しないので、頑張って組み上げていきます、エンジンは時間切れで塗装ができませんでした。

このあとエンジンの取り付けと尾翼とブーム、主翼には貼り線を取り付けていけば完成となります(貼り線に関しては次回詳しく解説)。

▲組み上げた胴体ブームと尾翼部部分

▲垂直尾翼は、補強用のステーがエッチングパーツで再現されているので瞬間接着剤で固定するのだが、位置決めのガイドもないので取り付けが難しい

▲組み上げた胴体ブームと尾翼を主翼に取り付ける

▲接着は2カ所の点付け。取り付け後の強度がほとんどないので、ここでもブーム側に金属線を埋め込み、しっかりと主翼と結合できるように手を入れている

▲組み上がった機体

▲苦労はさせられるがS.55の特異なスタイルがよく再現されている。調色した赤も良い雰囲気になったと思う

▲機体はあちこち補強はしているものの、ともかく壊れやすいので取り扱いには気を使う必要がある

*  *  *

というところで今回はここまで! 次回はS.55製作のキモ、機体各部に張り巡らされた貼り線を製作、完成を目指します。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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