新開発のプラグインハイブリッドを搭載!フェラーリの美しきオープンモデル「296GTS」をイタリアのアウトラーダで試乗した

イタリアのフェラーリが、2人乗りのスポーツカー「296GTS」を送り出しました。オープンで、新開発のV6エンジンで、プラグインハイブリッドで、と話題満載のモデルです。乗った印象は、もう、最高!

イタリアのアウトラーダで試乗してきたのでご紹介します!

■「250LM」からインスピレーションを受けたスタイリング

▲フロントは強いダウンフォースを生むため空力が煮詰められている

なぜ最高と私が感じたか。ひと言でいって、見かけを裏切らないスポーティなドライビングを堪能できるモデルだったからです。

スタイリングについてフェラーリは、250LMからインスピレーションを受けた、なんていっています。スポーツカー好きの心をざわざわと騒がせるには、ニクい仕掛けです。

250LMは、1963年に発表されたモデル。ミドエンジンを強調するように大きくふくらんだリアフェンダーと、そこに開けられた空気採り入れ孔が、強いインパクトを持っています。実際にレースでの活躍は限られていましたが、フェラーリ史上に残るデザインです。私も大好きなので、たしかに、296シリーズから似たようなインパクトを受けました。

ここで“296シリーズ”としたのは、先にクーペボディの296GTBが発表されているからです。そのオープン仕様がGTS。最後のアルファベットはスパイダーの意味です。時速45kmまでなら走行中でも14秒で開閉可能な電動格納式ハードトップをそなえています。

▲ガラスごしにエンジンが見える

■目指したのはクーペと遜色ない美しさのハードトップオープンモデル

▲キャビン背後のボディの厚みもうまく処理されて流麗に見える

 

▲トップをあげるとまさにクーペ

フェラーリは伝統的に、スポーツモデルでもクーペとスパイダーを作ってきました。北米と英国というフェラーリにとって重要な市場ではオープンモデルの人気が高いからです。

「当初から両方を作ることが織り込み済みだったので、仕上がりのレベルは高いと思います」。フェラーリのヘッドオブデザイン、フラビオ・マンツォーニ氏はそう解説してくれました。

ソフトトップのほうが格納も楽なのに、あえて難しいハードトップを選んだ理由を尋ねると、「クーペに対して遜色ない美しさを作りたかったから」と明快な答え。

▲トップの格納はうまく設計されている

ミドシップといって後車軸の前にエンジンを搭載するレイアウトですが、キャビンとエンジンルームの間の狭そうなスペースに、なんとも見事にハードトップが収まってしまいます。

■イタリア・トスカーナのアウトストラーダでの試乗インプレッション

▲今回の試乗の出発点だった地中海のリゾート、フォルテ・デイ・マルミにて

296GTSの発表は2022年4月。私がイタリアはトスカーナ地方で試乗したのは10月中旬でした。フェラーリが選んだ試乗コースは、アウトストラーダと呼ばれる高速道路と、アペニン山脈を越えるワインディングロード。はたして、296GTSの性能ぶりを堪能するのに、いい組み合わせです。

296GTSの心臓部は、新開発された2992ccV型6気筒。ターボチャージャーで過給されたうえに、電気モーターと組み合わされて、610kW@8000rpmの最高出力と740Nm@6250rpmの最大トルクを発揮。8段ツインクラッチ変速機を介して後輪駆動です。

ドライブモードがステアリングホイールに設けられたスイッチで選べるようになっています。電気モーターだけ、電気モーター優先のハイブリッド、なんてフェラーリには似合わない(?)モードが設けられています。

ハイブリッドモードがこのクルマのデフォルトといいます。電気モーターだけで25kmを走行、あるいは時速135kmで(そう長い時間でないけれど)走行も可能です。

▲キャビン背後では「エアロブリッジ」が左右のトノー(乗員背後のふくらみ)を結んでいる

実際にドライブすると、無音で走りだすのに少々驚かされます。先に登場したフェラーリSF90でも体験ずみのモーター走行ですが、スポーツカーのスタイルで無音というのには、まだまだ慣れないようです。

そのままアウトストラーダを無音で走行。バッテリーが規定量以下になると、エンジンが始動します。この瞬間がなんともキモチよい。実際このV6エンジンのことをフェラーリのエンジニアが「ピッコロ(ちっちゃな)V12」と呼んでいたというのにも納得できそうなフィールのよさ。

加えて「ホットチューブ」と名付けられた、サウンドレゾネーターを介しての快音。中低音中心の乾いた音がキャビンに入ってきて、うれしくなってしまいます。しかもこのエンジン、よく回ります。

気持ちよいバイブレーションとともに、ちょっと高めの回転を維持できるよう、ステアリングホイール背後に設置されたパドルでもってギアを選んで走ります。

ハンドリングはダイレクトで、よくいう“オンザレール”の感覚。ドライブしている私が思ったとおりに、実に気持ちよくクルマは走ってくれるのです。カーブでは、視線をやった方向に、間髪いれずにクルマが向きをさっと、というぐあい。フェラーリ万歳、といいたくなります。

▲風の巻き込みはとても少ない

一方、このクルマのもうひとつの魅力は、オープンボディです。ウインドシールドが長く、ドライバーの頭上に届くので、恩恵として風の巻き込みはほとんど気になりません。

これも温暖化の影響か、というぐらい異例に暖かいトスカーナの山のなかを、太陽の光を浴びて走ることができました。

▲オープンなのでインテリアも見せ場のひとつとばかり、美しく仕上げられている

【Specifications】
☆Ferrari 296GTS
全長×全幅×全高:4565x1958x1191mm
ホイールベース:2600mm
エンジン:2992cc V型6気筒ターボ+電気モーター(プラグインハイブリッド)
駆動:後輪駆動
出力:610kW@8000rpm
トルク:740Nm@6250rpm
変速機:8段F1DCT(ツインクラッチ)
最高速度:330kph
加速性能:0-100kph 2.9秒、0-200kph 7.6秒
フィオラノラップタイム:1'21"80
価格:4313万円

>> Ferrari 296GTS

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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