薄い!だけど充実機能!レザーマンの名作マルチツール「WAVE+」の兄弟モデル「CURL」

【男前マルチツールの世界】

マルチツール。それは、手に収まるほどのコンパクトなボディにさまざまな道具を詰め込んだ“ハンドツール”。とかく専用ツールに比べ「間に合わせ」と思われがちですが、そこにはマルチツールだからこそ味わえる奥深い世界が存在します。

そんなマルチツールの男前な魅力を紹介する連載第28回は、LEATHERMAN「CURL(カール)」(1万4300円)。

マルチツールという言葉を生み出したアメリカンブランド LEATHERMAN(レザーマン)の新作です。

▲プレスされたステンレスの無垢ボディ。いかにもレザーマンといった王道のスタイル

 

■名作「WAVE」のスタイルを継承しつつコンパクトに

まず手に持ってほしい。

見た目は同社の名作「WAVE」とそっくりですが、「WAVE」の現行モデルである「WAVE+」よりも29g軽量で、メインツールの波型ナイフとノコギリがオミットされています。その分ハンドル部分は薄くなり、手にしたときのフィット感、重量感が絶妙です。重すぎず、厚すぎない名作のオーラを感じます。

長く愛された「WAVE」のスタイルを継承しているわけだから好印象なのは当然ですが、それを差し引いても「こういうモデルが欲しかった」とマルチツールファンを喜ばせる素質を持っています。今回は、「WAVE+」との比較も交えてその魅力を紹介します。

ステンレス製のボディに収められたツール数は15種類。折り畳んだ状態でスッポリと手の平に収まるサイズ感です。

鈍く銀色に輝くハンドルは、厚さ約15mm。「WAVE+」が18mmなので、握ったときのスリムさはかなり感じられます。

 

■各ツールの詳細

メインツール以外の収納されたハンドル内側にあるツールは一部異なりますが、概ね近い内容となっています。

異なる点は「WAVE+」にはメガネのネジ締めなどに使えるマイクロビットがあるのですが、「CURL」は錐(キリ)が採用されています。

▲「CURL」のハンドル外側のメインツールは、直刃ナイフとヤスリのみ

ハンドルを閉じた状態からナイフとヤスリを展開できます。ハンドルが薄いので、ナイフはワンハンドで展開しやすいと思います。

買ったばかりだと動きが若干硬いですが、使い込むほどに開きやすくなります。ツールが好きな人であれば共感してもらえると思いますが、そんな時に愛着を感じます。

▲上が交換可能なワイヤーカッターを装備した「WAVE+」。下が「CURL」

今回、比較対象として紹介する「WAVE+」とは、波型ナイフとノコギリが付いていないことが大きな違いとなります。また、プライヤー基部のワイヤーカッターが「CURL」は固定式になっていることなどが挙げられます。

「WAVE」の正当な後継者として登場した「WAVE+」以降、フルサイズモデルの高級モデルは、その多くがプライヤーのワイヤーカッター部が取り外し可能なものが増えました。

しかし今回発売された「CURL」は、レザーマンのラインナップの中でも中級以上の価格帯でありながら従来の固定式のワイヤーカッターが採用されています。その真意については測りかねる部分がありますが、ユーザー的な視点で考えると少し残念に思えます。材料費や輸送費の高騰などさまざまな要因があり、コストダウンしたのかもしれません。

▲1mm以下の鋼線であれば難なくカットできる

ただし、私の経験則的には、マルチツールのワイヤーカッターが専用品のように使えることはないので、その性能を理解した上で使用するのであれば、ワイヤーカッターが交換可能で無くてもさほどその魅力が落ちるものではないと思います。

▲切れ味鋭い直刃ナイフ

マルチに使える直刃ナイフはステンレス製。キャンプでの包丁からウッドクラフトまでこなせる万能ナイフは、レザーマンのフルサイズモデルに共通するものです。

もうひとつのメインツールであるヤスリは、片面が金属用、反対側が木工用。ヤスリ部は全長が約64mmあり、充分に実用に耐えられる長さ。切断面を整える用途として十分使える性能です。

フルサイズのドライバービットは、プラスとマイナスがあります。ちょっと緩んだネジを留めるのに便利。別売のビットキットも装着が可能です。

日常で役立つミニハサミ。衣服のホツレやあまり太くなければ紐でもカットが可能。ナイフよりも繊細な仕事に適したツールです。

ハサミを使用する際は、完全に展開する必要があります。展開後は、内側のバネ板が自動でハサミを開くので、親指だけで切り進められます。

独立して装備された幅広のマイナスドライバーは、ドライバーだけでなく、ペンキ缶の蓋を開けたり、隙間に差し込んで何かをこじったりすることにも使えます。地味ですが、何気に便利なツールです。

▲ルーラー(定規)この角度で見ると左がインチ、右がセンチ

ルーラーは正直あまり使わないものですが、一度だけ潮干狩りで取ったアサリの大きさを測るのに使ったことがあります(笑)。

プライヤーは先端部まで溝が設けられており、先端部を使っての細かなパーツの把持に適しています。

先端部の形状や仕様については、ユーザーのこだわりや目的用途が意外と出る部分です。傷を付けずにキレイに曲げたいのか、力を込めて曲げたいのか、それとも繊細に掴んで保持したいのか。自身が使うことを想像してもらえると良いかと思います。

プライヤーを展開して感じるのは、ハンドル部分の薄さです。たったふたつのツールがないだけで、薄く持ちやすさを感じます。プライヤーを頻繁に使うであろうユーザーには重要な特徴かと思います。

▲折り畳んだときの全長は約10cm

ハンドルには取り外し可能なクリップを備えています。軽量で嵩張らないサイズ感なので携帯性に優れます。ペンとノートと一緒にフィールドワークをお楽しみください。

▲ナイロンケースも付属。ケースにはベルトループも付いている

*  *  *

はたして「CURL」は「WAVE+」の廉価版なのか? 私はそうは思いません。なぜなら、そんなに価格差がないからです。仕上がりに関して言えば、価格なりの高級感あふれるものだし、機能に関しても極端に少ない訳ではありません。

手に馴染む薄さと充分な機能性。どこにでも連れ出せる頼れる相棒としての存在。それが「CURL」の真骨頂だと思います。

>> レザーマン

 

>> [連載]男前マルチツールの世界

<取材・文/GOL>

GOL|歯科技工士、ECディレクター、webライターまで幅広く活動しております。指先に伝わるハンドツールの質感や重さ、音などアナログな部分に惹かれて今に至ります。一番好きなのは懐中電灯。

 

 

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